気がつけば新年度も3日過ぎ、「厳しい時代だから採用になっただけでも有難いと思って、勉強は自力でね」とばかり研修もそこそこに現場に放り出されたフレッシャーズ諸君、諸嬢の顔をあちこちで見かけるようになりました。そうだよ、お客さんからのクレーム含みの要望を聞いて“自分には手に余るな”と思ったときに「マジっすか」と言わないようにね。物事がすごくうまくいったなと思ったときの「ヤバいっすね」もダメだよ。
さて、来週早々6日(月)~と放送開始迫った4月期昼帯ドラマ『エゴイスト ~egoist~』、公式サイトの結構も整って情報が出揃ったようです。
スタッフの中では脚本の小森名津さんが懐かしくも心強いですね。月河がこの枠に“居付く”きっかけになった01年の『女優・杏子』のメイン脚本が小森さんでした。今作は異母姉妹のアンビシャス葛藤劇の傍ら、『杏子』同様、芸能界、女優界のバックステージものの側面がありますが、あちらで主役の女優に扮したのはオンリーワン荻野目慶子さんでしたからね。それも今作で川島なお美さんが演じられる、記号としての“芸能界に君臨する大女優”といった立ち位置ではなかった。
…フィクションの話とは言え、“荻野目慶子さんが不倫もので人気しつつも寄る年波で落日女優”である芸能界と、“川島なお美さんが大女優として君臨する”芸能界とでは、世界地図で言えばスペインとフィリピンぐらい距離も時差も、気候風土差もあるような気がしますが。この枠では『真実一路』『愛のソレア』と一定の実績はある小森さんの筆力と、メインPとして制作をリードするのは本作が初めてと聞く東海テレビの気鋭・松本圭右さんのプロデュース能力に注目です。
新人スタイリストのヒロイン明里を演じる吉井怜さんは、アイドル出身で白血病を克服されたことで知られる、きっと頑張り屋さんなのでしょうね。2ヶ月クールに短縮されたとは言え、過密な昼帯の撮影スケジュールを元気で無事乗り切ってくれるといいですが。
吉井さんの闘病記『神様、何するの』が03年にドラマ化されたとき、“吉井怜”に扮した宮地真緒さんが、上昇志向の強い異母妹・香里役で、明里を踏み台に女優としてのし上がって行こうとする役なのもおもしろい縁ですね。
宮地さんがNHK朝ドラ『まんてん』のヒロイン出身だということは情報でしか知りませんでしたが、忘れられないのは再放送で観た『相棒 season4』(05年)“殺人生中継”のお天気おねえさん八木沼リカ役。ネタばれになりますが、何とあんなことを考えてあんなことを企て実行してしまうだけでなく、動機がああいうことだったという、そりゃ角田課長(山西惇さん)もショック受けますって。近年の朝ドラヒロイン女優の中では、朝ドラ卒業後の振り幅がいちばん広く、いちばん役を選ばずにチャレンジしているイメージがあります。
それにしても、公式で現在公開されている範囲でのあらすじ、実母と信じていた母が救急搬送されて、母子手帳を見た勝ち気な妹が“姉だけ実親がセレブ”と知り、「私のほうがセレブ娘」と偽る…というくだりは、もう、このブログで新作昼帯の情報を書くたび何度触れたかわからない、昭和40年代のわたなべまさこさんの長編漫画『ガラスの城』をまたぞろ思い出させますな。
ここまで頻出だと、オマージュだパクリだの世界ではなく、「作り話をこしらえることを生業にする人たちの深層心理の中に、プロトタイプとして作りつけになっている」としか思えない。
川島なお美さん扮する大女優玲子の、亡き元夫の連れ子で、父の没後も義母である玲子と同居を続け男女関係になっているという、嬉しくなっちゃうくらい昼ドラチックな設定の役で『特捜戦隊デカレンジャー』の林剛史さんの名前も見えます。
デカブルー=ホージーからもう5年ですか。戦隊は『デカレン』、ライダーは『剣(ブレイド)』の年だった04年当時、なんとなく今年のヒーローくんたちの中ではいちばん昼ドラ向きだなと、個人的に思ったのが林さんでした。
ヒロインがとにかく強烈磁場持ちで、男はカッコいいけど振り回されるだけという印象の強い昼帯ですが、演じる俳優さんがイケメンでカッコよければいいってだけのもんでもないから世の中あなどれないんですな。昼帯の濃密な磁界に身を置いて埋没しないためには、イケメンなりの“アク”が必要。アクと言って悪ければ、“自分なりの磁場”と言ってもいい。「お話もすごいし、ヒロインも強烈だけど、この男もちょっと独特だよね」「クセもんだよね」と思わせるだけの何かです。過去のこの昼帯枠で好評だった相手役、『愛ソレ』の半田健人さんや『美しい罠』の高杉瑞穂さん、『新・愛の嵐』の要潤さん、『白と黒』前半の佐藤智仁さん辺りにはそれがありました。
月河は夜のドラマに縁が薄いため、ホージー後の林さんは『アストロ球団』しか知らず、変身も特殊効果もない林さんをほとんど初めて観られるのが今作のひそかな楽しみのひとつです。シリアス重心の芝居をしていても、根に関西ノリのツッコミどころが透けて見えるのが彼の役者としての魅力で、そこらが開花できる、懐深い脚本になっているといいのですが、昼帯はどうしても女性キャラ厚遇になってしまいがちだからなぁ。
ヒーローついでに今日はもうひとつ。『仮面ライダーカブト』の天道役・水嶋ヒロさん、でかしたね。『三日月』の歌姫・絢香さんと結婚。おばあちゃんはどう言っていたのかな。
役柄がああいう、電波でオレ様だったこともあり、なんとなく当時のヒーロー俳優くんたちの中でも一線を画す雰囲気はありましたが、結婚もまさに♪ 光速のヴィジョン見逃すな の早ワザ。水嶋さんがゴールデンのイケメンもので完全に定位置を得た頃、あるサイトで“スイスはチューリヒ生まれの帰国子女、桐蔭学園で高校サッカー準決勝、慶應義塾大学在学中で、スカウトされてモデルデビュー”という彼の“モテ属性のショーケース”ぶりに「人として5回コールド勝ち」と評している世評ブログを読んだ記憶が(OCNの『今日のタメ語』だったと思います)。
そのデンでいけば今回は「コールド勝ちの後ロッカールームでのシャンパンファイト(ビールかけではない)を抜け出して、山の手のトラットリアでしっぽり祝賀晩餐会」みたいな感じですか。
いや、一部ではオメデタ婚?の情報もあるから、「抜け出す途中バナナの皮ですっ転んで、ヴィンテージワインで乾杯の間じゅうタンこぶさすってる」かな。記号的イケメン王子さまの役はやりにくくなるかもしれないけど、若くてカッコよく生活感のないパパキャラなんかも見たいですね。
おめでたい矢先に、そんなことは万々々々が一にも無いと信じたいですが、何年か後、もしバツが付いたりなんかしたら、ぜひ昼帯に………ってバツじゃなくバチ当たり過ぎだな自分。