先月の下旬、グループで蔵王の山ふところにたたずむ落人伝説が残る2つの古い集落を訪ねた。訪ねた、というよりは視察したと申した方が適切かもしれない。
というのも、決して物見遊山のような見物ツァーではなく、20年程前にドキュメンタリー映画の巨匠の小川伸介氏の作品『ニッポン国古屋敷』で有名になり、以後しばらくちょっとした観光地ともなったこの2つの山村集落が今や廃村状態になつているのをを見つめて、今後のことを考えるためでもあったからである。
その2つの集落とは、一つは手前の「古屋敷」であり、もう一つは宮城県境寄りの「萱平」(かやだいら)である。
この2つの集落は2kmほど離れているが、まずは隣村である。
ところが、古屋敷は平家の落人が、そして萱平が源氏(源頼政)の落人が開いたのが始まりと伝えられている。(古屋敷も源頼政が開いたとの説もある。)
ふつう「落人」と聞けば、平家というのが定番となっているが、源氏とていつも平氏との戦いに勝利してばかりいたとは限らない。
とりわけ、平家追討の旗揚げの際には源頼政が率いる軍は敗北しており、生き延びた将兵の中は遠国に逃れた者があったとしても不思議がない。
それにしても、平氏と源氏の落人伝説が残る集落が2kmほど離れているとはいえ、隣り合わせというのは珍しい。
ともかくも、このシリーズの第1回の写真はわずか4年の間に屋根の茅がすっかりはがれ落ちている衝撃的な写真であるが、詳細は次回で説明したい。
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