私は新聞のコラム欄が好きなので毎日読んでいます。
コラムには政治、経済や伝統、文化、涙腺が緩むような感動する記事が短い文章の中に書かれています。
東日本大震災から1年を前にした3月10日の“よみうり寸評”に、「今日を大切に生きよ」と教えてくれる、涙を誘うようなコラムが載っていたのでご紹介します。
コラムの内容は次の通りです。(読売新聞より)
1年前の10日、静岡で働く武山郁夫さんは、長女紗希(さき)さんの18歳の誕生日を祝うため、宮城県石巻市の実家に電話をかけた。
(父)「今度会ったらお小遣いあげるからね」
(娘)「お父さん単身生活だから、無理しなくていいよ」
これが最後の会話になろうとは知る由もない。
沙希さんも、妻も母親も津波にのまれた。
「男の俺が・・・守ってやれなかった・・・すまない」と武山さんは3人に泣いて謝り続けた。
古里を遠く離れ、家計を支えた大黒柱を誰が責められようか。明日との隔たりを、これほどまでに大きく苦く思える今日はない。
千利休の孫で茶人の宗旦(そうたん)は命のはかなさを歌に詠んでいます。
「今日今日と 言いてその日を 暮らしぬる 明日のいのちは とにもかくにも」
明日の命も不確かな世だから悔いなく生きよ、と説く。
裏千家の茶室「今日庵」の由来の一つとされる。
父は紗希さんの「19歳の誕生会」を開く。 娘にしてやれることをするだけ。悔いなきように。
死児(しじ)の齢(よわい)を数える親の心根が切ない今日である。
東日本大震災は一瞬にして家族の愛、地域の絆をずたずたに引き裂きました。
被災者の皆さんが受けた心の傷や、被災地のコミュニティが震災前の状態に戻ることは不可能と思いますが、新たな家族愛、地域の絆を築きながら、今日一日を大事にし、明日へ向かって力強く歩み続け、一日も早く傷ついた心が癒されることをお祈り申し上げます。