鳥のこころは私のこころ… 無数のさぎを見守っていると、
そこではまったく白さぎとともにあり ともにたわむれ ともに呼吸し ともに喜び ともに生きている そんな思いでいっぱいなのです。
写真家・田中徳太郎さんは16年間も サギのこころを撮してきた。
渡り鳥のシラサギは4月の声をきくと 5~6千㎞も飛び続けて日本にやってくる。
ふるさとの森で第一夜、 ぐっすり眠るダイサギの群れは、木蓮の花のよう
疲れをやすめているのだろうか… 待ち望んで安堵する作者の やさしい眼差しがある。
写真部分 星の軌跡も幻想的、 拡大してご覧ください
シラサギと呼ばれるのは3種類で ダイサギ チュウサギ コサギ。 全身純白の羽毛。 他のは、 毛色が違ってスマートさもない、 アマサギ (頭部や首、背に橙黄色) ゴイサギ (頭や背が黒い。 醍醐天皇から5位の位を授かったという)
冬、田や森かげでみかける可憐なサギはコサギ、 漂鳥だ。
1 春風に毅然と飾り羽をなびかせ、 片脚で憩うダイサギ。 貴婦人のよう。
(ダイサギの夏羽は、背から みの(蓑)状の飾り羽が出る)

2 ダイサギが人間のひとりものに見えた (作者のことば)
ニューヨーク近代美術館コレクション
作品はやはり 実物に限るでしょうね。 スキャナーを駆使してみましたが、 おぼつかない技術では、作品の持つ崇高なイメージにほど遠くなってしまいました。 お許しください。
繊細な濃淡や立体感、 臨場感。 何より田中さんが 「素晴らしい、気高い」と思われた白さや 詩情が出ませんでした。 雰囲気だけでもお伝えしたいと思います。
台風に襲われ巣も吹き落とされ ヒナの群れが地上にうごめいていたり、 農薬に汚染された餌により美しいシラサギが死んでいく、 蛇が忍び寄る… 痛々しい姿もとらえていた。
シラサギの喜びも悲しみも 自分のことのように思えてならない
写真家は どんなにか苦しみ、 悲しんだことだろうか。
人間がつくる公害のために、 命を落とすサギたち、 人間さえ住みにくい時代になった。

3 竹の小枝に憩うダイサギ。 絶えず、くちばしで羽毛の粧いをしている。 きれい好き 4 眼光も鋭く 厳しくあたりを警戒する親鳥 足下のヒナ
白サギに向けるひたむきな愛と執念に感動します。 生誕100年のことし、 自然への警鐘をならしつづけ、 白鷺の美しさを伝えてくださった田中さんの偉業を こころから讃えたいと思いました。

資料 THE WHITE EGRET しらさぎ 田中徳太郎 講談社
白サギの詩 田中徳太郎 岩波書店
PHOTO SALON 白鷺 天空のファンタジア
田中徳太郎作品集 玄光社
シラサギの森 田中徳太郎 あかね書房
フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 <財>日本野鳥の会