別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

黄昏時

2009-04-01 | こころ模様

  きのうも気温は上がらなかった。 小学校の桜は二分くらいでちらほら、 花見には物足りない。 夕方公園を通ると、 五分咲きの花が薄暗のせかいに白っぽく浮かんでいた。 

   桜みな うす紫となるころを 黄昏時となづけけらしな     吉井 勇 

  桜が最も美しくみえる黄昏どき …  円地文子の夕方もまた

   毎年の春 いつも美しいと思うのは 桜の花の咲きみちて 散り始めるころ 
  夕方、公園を横ぎって来る時だけであった。 
   
満開の桜の色は夕方の薄暗の中に 紅を失って微かな紫を帯びた白さに
  淀んでみえる… 

  昼間の泡のような色よりも 妖しく なまめいてくる。 

                -☆-

  いとこのおみやげは Sakura Tea と 桜ジャム。 蓋をあけると一面の山桜が脳裏に浮かんだ。 

   春霞 たなびく山のさくら花 うつろはむとや色かわりゆく    (古今)

 高尾へことしも行こう。 墓参りをかねて遅咲きの花を愛で、 必ず塩漬けを求める。 大きな花で 「とくべつ色がいい」 と喜ぶ友に届ける。 八重桜は色も香りも自然のままで、 土筆の佃煮のお礼にふさわしいと思う。

  季節感をたいせつにする彼女は、 衣裳まで徹底している。 いまごろは桜模様のワンピースで迎えるにちがいない。 墨染に、はらはらと花びらが舞う、 紅をわずかに残して かすかな紫をにおわせている。 和服を洋装になおして、 愉しげなひとりぐらしだ。

 

   ブロンズ像はエミリオ・グレコの「ゆあみ」   

 黄昏時の花は  鮮やかさもいっそう際だってくる。 真昼の光りや喧騒を逃れて、はっとさせる、  人生に似ている。

 
  メモ   夜明けの薄明のころ 顔もよく見えない。 彼は誰? 「かはたれどき」  夕暮れもまた 見分けがつかない 黄昏時 「誰そ彼時 タソガレドキ」   

   暁アカトキの かはたれ時に島蔭(シマカギ)を 漕ぎ去(ニ)し舟の たづき知らずも 
                                         万20/4384

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする