『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』斑猫独語(31)**<2007.9. Vol.48>

2007年09月04日 | 斑猫独語

澤山輝彦

<月が出た出た月が出た>

 私が住んでいる川西市大和では8月に入るとすぐ「ふるさと大和納涼盆踊り大会」と銘打った盆踊りがある。そこには地域の商店会や活動団体が夜店を出し、子供たちの多くは踊りに加わって楽しむというより、夜店での買い食いや買い物を楽しむのである。

 昔からの風習や伝統が無い所では、こうしたものが続いてそれはそれなりの伝統となって行くのだろう。地方にはテレビで紹介されたりする厳かなお盆本来の意味を持った盆踊りがある。私はそんな物を知らずに育ったから、盆踊りとはこんなものだと思っているし、そんな盆踊りには炭坑節は付き物で、ここの踊りにも炭坑節が入っているので全く文句は無い。日本から炭鉱が無くなって久しいが、盆踊りの炭鉱節が不滅なのは嬉しい。

 炭坑節は炭鉱で歌われていた。そんな歌だから、てっきり坑内で石炭を掘る炭鉱夫の歌だと思っていたが、これは掘り出された石炭を選別する選炭場での選炭婦の歌だったのである。そういえば確かにそうだ。歌詞には石炭を掘る採炭現場は出てこないし、選炭婦の歌ときけば納得のいく歌詞がある。石炭を掘る最前線では歌など歌っている余裕はなかったにちがいない。

 アメリカの歌で、日本でも流行し今では懐かしのメロディーになってしまったが、16トン、Sixteen Tonsがあった。覚えておられるお方もあるだろう。日本人が歌っていた歌詞の一部はこんなものであった。「ああ、おいらの商売炭鉱夫、年がら年中地の底で、石炭掘って泥まみれ、まったくやりきれないぜ、ああシクスティントンズ」これぞアメリカ版炭坑節である。ところがこんな訳の歌詞ではまだまだ気楽なものだった。英語の歌詞はすごいのだ。訳したものを見つけたので下に書く。あの頃覚えたうろ覚えの英語の歌詞の意味がはっきり分かる。

ところで 人間は泥で出来ているという人もある
だけど 貧乏人は筋肉と血で出来てる
筋肉と血 骨と皮
弱い頭と強い背中で
16トンの石炭積んで手にするのは何?
一日たてば借金がかさむ
セント・ピーターさま いけぬから呼ばないでくれ
おいらの魂は会社のものだ

 アメリカ版炭坑節はまさに地底で石炭を掘る炭鉱夫の歌である。セント・ピーターさまとは死ねばめんどうをみてくれる神様なのだから、呼ばれるということは死を意味する。給料の前借りで借金だらけの体は、自分のものではなく会社のものだという、これはきつい。日本の炭坑節では選炭婦が、さのよいよい、と言っていればよかったのだが、アメリカ版ではそれどころではない。16トンは採掘ノルマではなく、一日の運搬ノルマらしい。

 炭坑節が永遠なら炭鉱の歴史、そこでの働いた人々のことなども永遠に語り継がれなければならないと思うのだ。炭鉱で働いた女性からの聞き書き集「炭鉱花嫁」という本が出ている。人の生き方を教えてくれる本だ。三井三池炭鉱の閉山、大闘争なども歴史に埋もれさせてしまっていいのだろうか。語り継がねばならない。かく言う私は長い間、ボタ山のある風景に詩情を感じるなど、呑気なものであったのだ。

ちょっと一言

 今年の暑さはよくねばってくれましたが、10月中旬にもなれば、さすが秋らしくなってきました。そうなったらなったで、人とは勝手なもので、「今朝なんか寒いですな、長袖きてますねん」てな挨拶を交わしたりするのです。盆踊り、炭坑節のことなど、今、話題にするには時季はずれの気がしないでもありません。これは9月号が定時に発行されていればなんでもないことなのです。一寸ずれこみ状態が続いています。止まってしまうよりマシだ、などと居直りはしません。定時の発行をめざして、皆さんがんばりましょう。

写真は北部水源池連絡会に参加する北六甲台自治会の夏祭りです。

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