『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**「イランからの葉書」**≪2024年春季号 Vol.119≫

2024年06月13日 | 単独記事

「イランからの葉書」

藤本千恵子

 4月15日、ポストから2~3通の葉書を受取り、「あぁ~、DMばかり……」と思った瞬間、キラリと光るものがあった。「ん?」とよく見ると、貼られた3枚の切手の右端が光っている。切手の真ん中には紫のスミレのような蕾とミントのような緑の葉に鮮やかな蝶がとまっている。その美しさにホッと心が和らいだ。さらによく見てみると図柄の下には鳩のような鳥が切り込まれており、手の混んだ切手に驚いた。老眼の目でやっと見えたのは「Iran」の文字だ。

 その葉書の正体は広島の絨毯屋さんが1年に1度、買い付けに行くイランから投函したものだった。4月14日の上川外務大臣の談話には「現地時間の4月13日夜から14日未明にかけて、イランはイスラエルに対して、ドローンやミサイル等を使用した攻撃を行いました。」とある。

 心配になって絨毯屋さんに電話すると、店主が「いえいえ、大丈夫ですよ。私共がこの葉書を出したのはちょうど1ヵ月前です。それに、戦争は国のトップがしていることで、遊牧民はもちろんのこと、下々の者は普段の生活をしています。」と言う。「それに、戦争とは関係なく、イランに着いたら必ず現地の人がついての行動となります。空港と絨毯の倉庫の往復しかしません。」とのことである。切手も購入から投函まで、現地の「いつも決まった男の子」に頼むそうだ。「日本人がイランへ入国すること」と「戦争」について、端的に話してくれたように思う。「これが現実なのか……」とつくづく思う。

 絵葉書の表はザクロス山脈で、カシュガイ族の遊牧民がにっこり笑いながら、子羊の皮袋を棒に吊るして、ヨーグルトとチーズを作っている。彼女が着る民族衣装は、土の茶色の世界に暮らすからと、鮮やかな緑や紫やピンクなどの色が使われるという。四季のある日本の、京都でよく見かける着物とは正反対の色彩である。

 また、彼女らが織る絨毯の文様の中で、ザクロは「豊穣・子孫繁栄」、四角は「窓・井戸」、櫛は「結婚・生命の誕生」、羊は「財産」、鳥は「悪事喰いの鳥」を表す。

日本がすでに失ったものばかりだ。

 文様に戦後の日本が目指してきたものが間違いだったと言われ、切手に豊かさとは何ですか?と問われた気がしてならない。

【投稿日 2024.4.27.】

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