『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』尼宝線における二酸化窒素濃度と交通量の関係**<2007.7. Vol.47>

2007年07月02日 | 神崎敏則

尼宝線における二酸化窒素濃度と交通量の関係

みちと環境の会 神崎敏則

 本誌45号に『夜間の二酸化窒素濃度は昼間の9割』と題して、夜間の濃度が予想以上に高いこと、その原因として、①夜間でもトラック等の通行量が多いこと、②逆転層の発生という気象条件によること、の二点が推測されると報告しました。その後尼崎市公害対策課から、時間単位の交通量データをご提供いただきました。公害対策課に篤く御礼申し上げます。そのデータをもとに夜間の二酸化窒素が高濃度であることを今回改めて検討しました。

52日のうち15日が夜間の方が高濃度

 今回時間単位の交通量のデータをご提供いただいたのは、表一①に示す52日分です。このうち15日は夜間の時間帯(1時~6時、19時~24時)の方が昼間の時間帯(7時~18時)よりも二酸化窒素は高濃度でした(太字で表示)。夜間が高濃度の理は28.8%にのばります。

 また夜間の二酸化窒素濃度の総平均は0.0329ppm、昼間は0.0371ppmで、昼間と比較して夜間の濃度は88.7%になります。夜間がこれほど高濃度になる原因を突きとめるために、まず時間帯別の交通量をグラフ化しました。

夜間の交通量は昼間の約5割

 グラフ①によれば、一日のうち午前4時がもっとも交通量が減少しています。そこから一気に上昇し、午前9時に交通量のピークを迎え、20時までの連続12時間1200台/hを維持しています。

 このデータで特徴的なことは、日曜日の午前中を除き、平日と土曜日曜の昼間の交通量にほとんど差がないことです。土日の休みの日でも平日と同じくらいに交通量が多いのです。尼宝線沿道の住民にとって、土日でも排ガスが軽減しないのは過酷ではないでしょうか。

 もう二点の特徴は、総平均すると、昼間の交通量15,624台に対して、夜間は7,713台と約5割にとどまっていることです。裏付けとなるデータは入手していませんが、夜間の交通量が昼間の約5割という数字は、他の県道と比較して多いと推測しています。

夜間の二酸化窒素が高濃度の日でも交通量に変化はない

 グラフ②では、昼間の方が二酸化窒素が高濃度の日と夜間の方が高濃度の日とを比較しました。昼間が高濃度の日は37日ありましたので、それらを平均し、同じく夜間が高濃度の日15日分を平均して、グラフに示しました。そしてグラフ③では、同じ37日と15日に振り分けて交通量の違いが顕れるかどうかを確認しました。

 結果は一目瞭然です。昼間が高濃度の日と夜間が高濃度の日とでは、交通量に違いは認められませんでした。このことから、夜間の方が昼間よりも二酸化窒素濃度が高い日が約3割も発生すること、交通量とは無関係であると推測されます。ただし、この交通量データでは、トラックなどの大型車と普通車との割合が無視されていますので、完璧に無関係であると断言できません。

夜間の二酸化窒素が高いのは逆転層の発生が原因

 交通量は昼間の5割なのに、二酸化窒素濃度は夜間の方が高い日が3割もあるのは、やはり、逆転層が形成されたことによると推測されます。

 一般には、大気は地表面付近が最も温度が高く、上昇気流で100m上昇するごとに0.65℃温度が下がります。ところが、夜間の放射冷却により地表面付近の空気が最も冷たくなり、その上層部に比較的温かい空気の層ができると、地表面付近の空気層の中だけで対流が繰り返される現象がうまれます。極端なたとえですが、火にかけている鍋にフタをかぶせると、蒸気が鍋の中で充満してしまう状態のようなものです。逆転層がフタの役割を果たして、排ガスの濃度が高くなるのです。

 尼宝線では、夜間の二酸化窒素濃度が高いという深刻な問題も解決しなければなりません。

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