G8サミット雑感
代表世話人 大橋 昭
今年6月ドイツ・ハイリゲンダムで開催されたG8サミット(先進主要8ヵ国首脳会議)はこれまでのサミットから大きな様変わりを見せた。
その背景にはこれまでサミットでの主要課題であった「9.11テロ」対策中心から、深刻化して行く地球環境問題(温暖化対策)が、もはや避けて通ることが出来ないという認識が支配したことが大きい。
一昨年アメリカ南部を襲ったハリケーンの猛威やゴア元副大統領製作の記録映画「不都合な真実」が与えた様々な影響は、先進国もここに来て「経済と環境の両立」という難問に真正面から取り組まざるをえない状況に追い込まれた。
G8サミット直前に米国ブッシュ大統領は昨秋の中間選挙敗北後の支持率低下を挽回せんものと、全米向けラジオ演説を行った。その中身はイラク戦争で傷ついた人達への謝罪や、長年にわたる温室ガス排出に反対してきた姿勢への反省もなく、代わりに米国は社会の貧困を救い世界中の「混乱と苦痛を緩和する」努力を強調するに至ってはその傲慢さは絶品だ。皮肉なことにG8サミットの会場周辺では反グローバル運動、エイズや貧困撲滅運動活動家の大規模なデモが展開された。また、米国のイラク戦争への抗議デモ、ガソリンに代わるバイオ燃料ブームヘの転換で、原料の穀物の高騰はこれらの穀物を主食とする人々の苦しみへの反発には全くの沈黙だ。
安倍首相も国内の支持率低下を意識しつつ、この会議に向け温暖化をもたらす温室効果ガスの排出を世界全体で2050年までに現在の半分に減らす長期目標を掲げはしたものの、肝心の日本の現実を見たとき、既に決められた京都議定書の削減目標すら未達の現状への対策は棚上げで、国内の排出ガスは増加の一方である。産業界は目先だけの掛け声で、本音では環境問題よりも、国際経済競争の覇者たらんと史上最高の利潤拡大路線に余念がない。
G8サミットでは何とか地球温暖化ガスの削減が緊急かつ焦眉のテーマとして一致をみたが、参加各国の世界景気の先行き不安や産業界の思惑の絡みの中で、とりわけ中国、インドなど自国経済発展の停滞を懸念したことなどが重なり、多くの期待をよそに画期的な温暖化ガスの削減の合意には至らなかった。
G8サミットの首脳が本気で21世紀の地球温暖化問題に取り組むのであれば、各国の膨大な軍事費を地球環境保全に振り替え、脱原発、脱石油社会を目指し各国は太陽光、風力、地熱など天然エネルギー開発への転換と、「環境税」の創設政策の具体化にむけなければならない。我々の生き方も問われていることを強く求めたG8サミットであった。