日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

大不況下の底支えに“オタク市場”向け商品開発?

2009-01-14 | マーケティング
JR東日本の「正月パス」って知ってます?仕事でお世話になっている知り合いのコテコテ“鉄ちゃん”からおもしろいお話を聞きましたので、「オタク」マーケットの話を少々。

「正月パス」とは、JR東日本が1995年より発売を開始した元日限定のフリーきっぷだそうで、JR東日本全線の新幹線・特急・急行・快速・普通列車の普通車自由席が1万2千円で元旦限定で乗り放題。しかも4回まで座席指定可というサービスぶり。JRから“鉄ちゃん”への感謝のしるしでしょうか。件の“鉄”氏曰く「ノリ鉄(電車に乗ることを主な楽しみとする鉄道オタクのことだそうです)には最高のお年玉です」。

2004年発売(2005年1月1日有効)の「正月パス」からは、フリーエリアがJR東日本全線に加えJR北海道中小国~函館間が加わったそうで、このおかげで毎年元旦には筋金入りの“鉄ちゃん”たちが、大挙函館に終結するそうです。団体行動は似合わないオタクの皆さんですから申し合わせではないようですが、どうやら函館まで行けるって言うのがミソみたいですね。2004年までは、行き先が人それぞれ思い思いであったものが、「函館OK」になったことで「どうせ行くなら海を越えて北海道でしょう」と皆同じく考えるとこになったようで、元旦は函館に“鉄ちゃん”集合と相成ったようです。

先の“鉄”氏によれば、函館終結組はだいたいが中高年“鉄”だそうで、一般的に“ノリ鉄”はこの年代がメインなんだとか。なるほど、子供時代は乗りたくとも限られた小遣いですから、“ノリ”はあきらめて写真撮ったり模型をながめたりがメインにならざるを得ませんからね。それが、40~50代になると余裕資金もそこそこできて、昔乗りたかった電車に次々乗る訳ですね。とは言っても函館まで電車で往復すれば軽く5万円以上はいくでしょうから、きっと「こんな機会はめったにない」と大集結になるんですね。交通機関超閑散の元旦に東京函館往復で一日中電車に乗りまくってくれる“オタクパワー”って、もしかして大不況の時代のものすごい商売源じゃないのでしょうかね。

これ他人事ではなくて、我々“音タク(音楽オタク)”も同じですね。中高生時代の昔はもっぱらFMエアチェックでの“聞き音(オン)”だったのが、中年になって昔の恨みとばかりに“買い音”やら“演り音(ヤリオン)”、さらには“見音”まで…。CDが売れない時代に紙ジャケシリーズの売切続出状態の爆発的売れ行きや、フェンダーやらギブソンやらの高級“ブランド”楽器の人気、さらには「ビルボード・ライブ」や「コットン・クラブ」のような“昔の名前”が出演する大人のライブハウスの盛況ぶりは、40~50代の“音タクパワー”に相違なしです。ちなみに私は、“買い音”“見音”に散財させられております。

こうしてみると、経済的理由から思い切ったのめり込みができなかった昔に恨みつらみのある、小遣いに多少余裕ができた中高年世代のオタク趣味は、けっこう不景気知らずな感じです。鉄道や音楽はかなりメジャーですが、あらゆる分野に様々なオタクや潜在的オタクは存在する訳です。各業界ともオタク向け商品戦略は、メインにはなり得ないものの大不況時代の底支えにはなるかもしれません。オタクの存在が見当たりにくい分野では、オタクの最も重要な基本構成要素である「コレクター心(ごころ)」を掻きたてるような商品開発で、新たなオタク・マーケットの創造を考えてみる価値もありそうな気がします。

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