日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

“ささやき女将”のリカバリー会見と今後の焦点

2008-01-28 | ニュース雑感
船場吉兆、件の“ささやき女将”。先般、ブログで苦言を呈しましたところ、社長就任会見をおこない、意外なほど上手なリカバリー・ショットを決めました。今度は、何がどう良かったのか、検証しつつ不祥事対応の参考にしてみましょう。

まず、私は前回ブログで、「民事再生法申請ならびに社長就任」の発表時に、新社長本人が会見に登場せず、弁護士任せにしたことを一番問題視しました。そして開かれた21日の会見。私の忠告通り、“ささやき女将”が会見場に登場しました。

今回の会見登場では、前回の大失態を受けて、なかなか勉強をしてきたなと思わせる部分が見受けられました。まず、服装、化粧。これは、努めて地味になりました。前回は普段のままの“女将化粧”とも言える、まあ女将の風格を匂わせるような水商売的つくりでした。今回はどこにでもいる70代の“働く老婦人”と言った感じで、これなら合格。やはり、反省の色を見せるには、普段がどうであっても「有事」を意識してるとの意思表示を、まず服装や化粧で表現することが肝要です。

次に会見の質疑応答。基本は、ごまかさない、嘘をつかない、黙らない。とにかく質問を真摯に受け止め答える事です。言い訳はしない。感情的にならない。努めておとなしく、反省の色をうかがわすべく物静かな語り口で(声が小さすぎるのはNG)…。顔の角度も大切です。特に背の小さい人は上向きに話をしがちですが、これは不遜に写る場合があるので要注意(あえてそう見えるアングルを狙って撮る場合もあります)!逆に、常に下を向きすぎるのは、何かを隠している印象になります。この点も含め、今回の受け答えはまずます合格でした。

特に、記者連中はわざと嫌な質問や、意地悪な質問、場合によっては故意に怒らせようという意図が見え見えの質問を浴びせてきます。絶対にこの挑発に乗ってはいけません。乗ろうものなら、その部分だけを取り出して「反省の色なし!」とか書かれるのがオチですから。

今回も、予想通り件の「ささやき会見」について質問が出されました。これにも女将は、「精巧なマイクで一語一語、聞き取れるということを存じませんでした」という、さらりとかわす上手な受け答えでした(質問をはぐらかすことのうまい回答例として、大物政治家先生や官僚トップなどの会見はかなり勉強になりますよ)。

さらに、会見では経営陣を抜きにして社員だけの質疑応答の時間も設けられました。もちろん、経営が人選したものであると分かっていても、経営陣が横で“ささやく”ことすらできない状況で社員の会見をさせるというのは、前回の“尻拭い”としては格好の設定であったと、なかなか感心させられました。

そして何より、会見後のマスコミあしらい。翌日の営業再開時も含め、女将はとにかく逃げることなく、避けることなく、少しでも多くのマスコミの取材に答えていました。これこそ、まさに不祥事対応マスコミ対策の極意です。とにかく、来るものは拒まず、正直に何でも答え対応することが一番の信用回復&イメージ・アップなのです。

これだけ“ささやき女将”として知名度が上がった人物ですから、高感度さえうまく持ってこれれば、こんなに良い広告塔はありません。営業再開後は、連日予約で一杯とか。女将が各部屋を回って必ずお詫びと来店御礼の挨拶をしているそうですから、きっと話の種に女将を見ようと訪れている客人も沢山いるのではないでしょうか。あれほどのダメージを被った会見をしてしまった割には、本当に上手なリカバリーができたと言えます。まさに、「失敗会見後のリカバリーはこうやれ!」と言いたくなるような、見事な復活劇だったと思います。

こんなに上手なリカバリーができた理由ですが、私は恐らく危機対応コンサルのアドバイスを受けたのに違いないと踏んでいます。まぁ、それはそれで別に攻められることではありません。ただ重要なことは、目先の対マスコミ対応リカバリー策は、ある意味カネで買うことができるかもしれませんが、本当の顧客信用はカネでは買えないということ。

船場吉兆が、今後本当に民事再生を活用して復活の道を歩んでいけるかどうかは、カネでは買えない魂の入った自己本位ではない経営マインドを本気で身につけていけるかどうか、すべてはそこにかかっていると思うのです。

<音楽夜話>史上最強の"駄作"2枚組

2008-01-27 | 洋楽
さらに続く2枚組シリーズです。

なかなか取り上げる機会のなかったエリック・クラプトン。今でこそ名盤とされるようになった「いとしのレイラ」です。超有名作品ですよね。では…

Q 次のキーワードをすべて使って、このアルバム作成の背景を説明しなさい。
「クリーム解散」  「デラニー&ボニー」  「ディラン&ザ・バンド」
「ルーツ・ロック」  「スワンプ・ロック」  「アメリカ南部指向」

A 解答例
「ディラン&ザ・バンド」の"ビッグ・ピンク"レコーディングを耳にしたクラプトンは、「クリーム解散」を決意、ブラインド・フェイスを結成します。しかし、英国人だけのバンドでは、「ルーツ・ロック」的なうねりは出しようもなく、次第にジョージ・ハリスンの紹介で同バンドの前座としてツアーに同行した南部出身の「デラニー&ボニー」にのめり込み、逆に彼らのツアーサポートを買って出ます。そして、その米国人バック・バンドをまんま引き抜いて結成したのが、デレク&ザ・ドミノスでした。このバンドは、「アメリカ南部指向」の「スワンプ・ロック」を全面に打ち出し、その路線でのデビュー作「いとしのレイラ」を制作したのです。

とまあ、Q&A方式でアルバム制作の背景を紹介をしてみました。

この時代、クラプトンの人気は絶大なものがありました。しかし、多くの支持はハードロックギタリスト、クリームのエリック・クラプトンに対する過剰な期待感であり、いわゆる南部指向のルーツ・ロック的展開を志して結成した彼の新バンドデレク&ザ・ドミノスに、多くのファンは落胆と批判の声をぶつけることになります。そして、タイトル曲こそ、そのギターリフのインパクトの強さから、彼を代表する名曲との評価を得つつも、米国南部指向のスワンプ・ロックとして作られたアルバムに対しては、いつしか「駄作」のレッテルが貼られることになったのでした。

21世紀の今、ようやくロックが生まれて約50年。90年代以降徐々にロックの成長過程が検証されるようになり、60年代末期~70年代におけるスワンプ・ロックの位置づけとその重要性が認識をされるようになりました。そして、発表から長い年月を経てようやくこのアルバム「いとしのレイラ」も、70年代ロック史を語るときに欠かすことのできない名作として認識をされるに至った訳です。めでたし、めでたし。

同じような運命をたどったアルバムとしては、ストーンズの「メインストリートのならず者」もあげられます。やはり、スワンプ指向の同アルバムは、発表当時「散漫」「しまらない」などの悪評を集めていました。しかし今となっては、彼らの最高傑作とする声も多く、やはりアーティストの本当にアーティスティックな部分の正しい価値判断は、時の流れが検証をしてくれるまで分からないことも間々あるのです。これぞ、アーティストのアーティストたる所以であると思います。

という訳で、史上最強の"駄作"とも言えそうなアルバム「いとしのレイラ」。このアルバムは、当時「レイド・バック」という言葉で形容された南部指向のスタイルやサウンドで、全編が統一感を持って作られている作品です。従ってむしろ、タイトル曲がこの中では、浮いて聞こえる感じさえします。「ハヴ・ユー・エバー・ラブド・ア・ウーマン」「ノー・バディ・ノウズ・ユー」「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」などのブルース曲における、デュアン・オールマンという南部仕込みのスライド・ギターの名手との競演が、一層この作品に深みを与えてくれてもいるのです。

個人的なベストトラックは、A②「ベルボトム・ブルース」でしょうか。クラプトンの単独作品で、彼のボーカルスタイルおよびその後の曲作りの基礎になったような作品であると言ってよいでしょう。彼が敬愛していたジミヘンのカバー曲D①「リトル・ウイング」も、アレンジがいかしていてかっこいいですね。もちろん、D④という実にさりげない位置に配置された、アルバムタイトル曲のインパクトは、40年近い年を経ても決して色褪せることのない輝きをもって聞き手に迫ってきます。

「いとしのレイラ」は、デレク&ザ・ドミノスというバンド名義でのアルバムです。しかしこのアルバムは、紛れもなく名ギタリスト、エリック・クラプトンが、スワンプ・ロックとの出会いにより、歌心に目覚め、その後の彼のアーティストとしての進路を決定づけた、彼にとっての最重要作品であると言える歴史的名盤なのです。

※Delaney and Bonnie with Eric Clapton 1969
ディラニー&ボニー&フレンズの珍しい映像。クラプトンが目指したスワンプはまさにこれでした。向かって左端がクラプトン、右端はデイブ・メイソンです。
http://jp.youtube.com/watch?v=ir2eAEhtXvE

※Derek and the Dominos - It's Too Late
デレク&ザ・ドミノスの貴重なTV出演ライブ
http://jp.youtube.com/watch?v=QbrKrp2aKVw&feature=related

<音楽夜話>ロックの歴史を変えた2枚組

2008-01-26 | 洋楽
まだ続く魅惑の2枚組シリーズ。

<音楽夜話>としては、お待たせしましたの感が強いボブ・ディランです。66年の歴史的名作「ブロンド・オン・ブロンド」。

ボブ・ディランという人は、実はビートルズやストーンズ以上の開拓者であり、私は音楽界随一のマーケッターであると思っています。アメリカにおける伝統的フォークからプロテスト・ソングの流れ、さらにはフォーク・ロックの流れを作ったのは彼でした。また60年代末期、ザ・バンドを擁しての「"地下室=ビッグ・ピンク"活動」で、ストーンズやクラプトンの70年代以降を大きく変えたルーツ・ロック・ブームのキッカケをつくったのも彼でした。

こういったディランの活動がなかったら、70年代以降のロックの流れは明らかに違う形になっていたはずなのです。

アルバムづくりという観点からも、ディランの一流マーケッター振りを示す話があります。例えば、アルバムというもの自体がまだ「ヒット曲と埋め草寄せ集めのお徳用盤」だった時代の63年、既に彼はアルバムとしての意義を明確に持たせた「フリー・ホイーリン」や「時代は変わる」といった作品を制作していました。

また、有名曲のカバーアルバムというアルバム・コンセプトは、彼の「セルフ・ポートレート」(70年)がそのハシリなのです。さらに、今ではビートルズの「アンソロジー・シリーズ」をはじめ、あらゆるアーティストが出している「発掘音源集」というアルバム・コンセプトも、彼の「バイオグラフ」(85年)および「ブートレッグ・シリーズ」(91年)が、その源流をつくったのです。

世捨て人のように思われがちなディランですが、実はこのように世捨てどころか、いろいろな形で先頭を切って時代を引っぱり続けてきたのです。

「ブロンド・オン・ブロンド」は66年当時にして、時代の最先端であるフォークロック・スタイルを完成させ、いち早く70年代以降のロックの流れを予見したアルバムであり、マーケッター=ディラン面目躍如と言える作品なのです。

しかも、レコード2枚組という"暴挙"。当時ポピュラー・ミュージックのアルバムが2枚組で出されるというのは思いもかけない事であり、衝撃の出来事でした。68年にビートルズが2枚組のホワイト・アルバムを出したのも、ディランに習ってのことに違いないのです。ビートルズにとってさえも、彼はまさに開拓者だったのです。

前々作「ブリング・イット・オールバック・ホーム」で芽生えたロック化の息吹が、前作「追憶のハイウェイ61」の「ライク・ア・ローリング・ストーン」でより衝撃的に演出され、さらにこの「ブロンド・オン・ブロンド」制作に至って、新生ディラン誕生を明確に印象づけたのでした。

「雨の日の女」「スナー・オア・レイター」「女の如く」「我が道を行く」「アイ・ウォント・ユー」「メンフィス・ブルース・アゲイン」など名曲揃いの全14曲。その後現在まで脈々と続くディランの音楽スタイルを、まさに形にしたと言える大名盤です。

余談ですが、私がこのアルバムを大好きになったキッカケは、20年近く前、ジャーナリストで世界情勢評論家の田中宇(当時共同通信記者)※と飲んだ、京都四条界隈の元ベ平連のオヤジがやっている客のいないお店での出来事。真夜中に激論を戦わせる我々の話を聞きながら、オヤジが淡々とレコードの皿をひっくり返し続けたのがこのアルバムで、その時のえも言われぬトリップ感が忘れがたいのです…。

曲、演奏、歌声…、とにかく"ディランの塊"とも言うべき不思議な力を持った歴史的名盤です。なぜか真夜中が似合います。

※「田中宇の国際ニュース解説」 → http://tanakanews.com/

経営のトリセツ18 ~ 営業活動のカギを握る「1:5」と「5:25」

2008-01-25 | 経営
前回「80:20の法則」の話をしました。するとあるお取引先から、「稼ぎ頭の20の中の最重要スタッフが辞めてしまった時に、残ったスタッフの20%がまた売上の80%を稼ぐことになる理論は分かるが、全体の売上が落ちて利益まで低下してしまったんじゃ困る。全体の利益を落とさずに、新たな80:20に移行させる法則はないのか?」というクレーム(?)を受けました。

まぁ、本当は「残されたスタッフに危機感を与えて、叱咤激励&教育してください」と言いたいところですが、まぁそれじゃコンサルの用をなさないので、この場合の「80:20」を補完する比率法則を紹介しておきます。

まずは「1:5の法則」。
「ひとりが今までの5倍働け!」という話ではありません。一言で言えば「新規顧客の獲得および新規顧客向け販売にかかるコストは、既存顧客向け販売コストの5倍かかる」という法則です。すなわち、エースが抜けた時に焦って「あいつの抜けた分まで皆で稼がにゃいかん!とにかく全員で新規開拓だぁ~!」と言うのは、間違った指示になります。こんな場合の正しい指示は、「今は皆で、既存客を攻めて攻めまくれぇ~!」ということなのです。よくある過ちなので、注意が必要です。

「新規獲得なくして発展なし」は、もちろん大切なお話ですが、ピンチのときには「1:5の法則」を思い出して、まずは効率的な収益確保をめざすことが正解なのです。"新規攻め"は獲得までの費用対効果が悪いのですから、ピンチを乗り越えて落ち着いた段階でこそとるべき戦略と考えるのがいいと思います。

もうひとつ補完法則。それは「5:25の法則」です。
「顧客離れを5%改善していけば、利益は最低25%改善される」というものです。実際にあったお話で、既存顧客のフォローアップを怠ったために、1年間で40%も顧客を失った通販会社があるそうです。新規を獲得しているそばから既存顧客が離れていくのでは、コストばかりかかってザルで水をすくっているようなものです。いかににして既存顧客をつなぎとめて、リピートしてもらうかは、発展する会社とつぶれる会社の分かれ目になっていると言えるのです。

エースが抜けたときなどには、特にこのことを思い出してください。彼が担当していた先のフォローに要注力です。担当がいなくなったり代わったりしたタイミングでは、顧客フォローが悪くなり既存顧客を失うリスクに大きくさらされます。ほおっておくのと、しっかりフォローするのでは、顧客離れの度合いは大きく違うはずです。

すなわち、エースが抜けて利益が大きく落ちるケースが多いのは、彼が抜けて新規ビジネスの獲得ペースが落ちるからではなく、彼が担当していた既存客のフォローがなく既存顧客をみすみす失っているからなのです。

この2つの補完法則における考え方の共通点は、「既存顧客重視」ということです。アマゾンを代表とするネットビジネスの世界では、いち早くこの考え方を取り入れて、「新規顧客獲得偏重」型のセールス戦略ではなく、「対既存顧客セールス」、「ロイヤリティ向上」を重視したセールス戦略をとっています。

すなわち、「1:5の法則」や「5:25の法則」によって、既存顧客重視の姿勢を徹底しつつ、結果「80:20の法則」におけるロイヤリティの高い20%のパイを確実に増やしてしていき、最終的には稼ぎの80%の部分の拡大に帰着させる、という戦略になるわけです(ネットビジネスでは、稼ぎ頭でない80%の商品に着目する「ロングテールの法則」というものも、並列戦略として存在します)。

基本の考え方を「1:5」や「5:25」に置き、メインターゲットとしての照準を「80:20」の「20」にあてる。「BtoC」「BtoB」のリアルのビジネスでも、エースが抜けた等「有事」の時のみならず、「平時」でも十分に活用可能な営業の基本戦略であると言えるでしょう。

小学校クラス会と白金ブランドのお話

2008-01-24 | マーケティング
3日休みの予定が4日の休みになりました。
お休みをいただいている間に、私がブログで意見したことが2つ実現しました。

ひとつは、分かりにくい「年金特別便」の既発送分の再送付が決定したこと、今ひとつは、船場吉兆「ささやき女将」の就任会見の実施です。もちろん私の力というつもりはありませんが、意見したことが受け入れられることは、自分の意見が正論だった証なわけで、まあ嬉しいことではあります。次はNHKの分割民営化?

ブログを休んでいる間に、たまっていたネタが古くなったり、忘れてしまったり…。とりあえず場つなぎ的に、先週の土曜日のお話をします。

その日は、小学校のクラス会がありました。小学校のクラス会って珍しいでしょ。しかも昨年に続いて2回目。実はけっこうこれが楽しかったりして、前回出席者は皆クセになっているようです。子供時代の、まさに子供じみた友だち付き合いしかない関係でありながら、三十数年を経てなお何となく面影はしっかりあるので、それはそれで人見知りせずに話が盛り上がったりするんですね。しかも、今は昔を思い浮かべながら大人の会話なわけで…。微妙におかしいですよね。

中高のクラス会になると、けっこう大人に近いけど当時の未熟な人間関係の歪とかが出てきたりして、必ずしもハッピーな再会ばかりじゃない訳で…。あいつだけは許せねーとか、振ったとか振られたとか、けっこう尾を引いている人間関係とかあったりするじゃないですか。その点、小学校はハッピー一色ですから、確実におもしろいです。

小学校って近所の人が集まって通っていたから、今でも実家とかが残っていたり、兄弟が住んでいたりして、けっこう消息が分かるものみたいです。その気のある方には、ぜひ一度小学校のクラス会を企画されることをオススメします。

さて、我が校のクラス会ですが、2年連続開催かつ海外および地方在住や当日にぶつかった大学入試センター試験関連等の理由で出られなかった者が数名いる状況でありながら、全42人中21人出席と5割キープの高打率。ちょっと驚きです。

先ほどの小学校同窓会の楽しさもその理由のひとつではありますが、我が校にはもうひとつ集まりがよい理由があると思いました。
それは小学校ブランド、もっと言えば地域ブランドの問題です。申し遅れましたが、我が校の名前は「白金小学校」。そのあの"シロガネーゼ""プラチナ・ストリート"の東京都港区白金です。

もちろん港区立ですから当然公立小学校です。学校のある地域も、当時は「白金=ハイソ」なんていうイメージは全くなかったのですが、その後の人気急上昇に伴うタウン・ブランド化によって、代官山や自由ヶ丘とも並び評される一大おしゃれ地域になった訳です。

となると、卒業生の我々もなんとなく悪い気はしないわけで、自分たちとは無縁のところで確立されたブランドでありながら、ちょっと誇らしい気持になって、クラス会があるなら出てみようかな的な気持にさせられたりする訳です。

同窓会は、偏差値の高い学校ほど出席率が高いとか、同じ学校でも成績の良かったクラスほど出席率が高いとか、そんな実証データがあるのですが、これも一種のブランド効果であるとされています。自分の属性にあたるものに自信を持たせてくれるものがあると、そこに確かに所属していたことを自身で確認する意味で、集まりの出席率が高くなるという論理です。ブランド力のあるものを身に纏いたくなる、引き寄せられる心理という意味では、まさしくブランド効果なわけです。

小学校のクラス会の出席率をも高める白金ブランド。ブランド力のパワーってやはり侮れないと、改めて実感させられた出来事でもありました。

<音楽夜話>ストーンズ・ブランド

2008-01-19 | 洋楽
魅惑の2枚組シリーズです。
前回がビートルズ、となれば今回はごく自然にローリング・ストーンズを。72年の作品「メイン・ストリートのならず者」です。

ビートルズのホワイト・アルバムは、4人の個性の因数分解的作品として、美しくも解散に向けての確実な前進となった2枚組アルバムでした。一方のストーンズそれは、それまでの数作で試行錯誤を重ねながら、このアルバムに蓄積されたすべてをぶつけ、溢れんばかりのパワーをもって集約することで、確固たるストーンズ・スタイルを築き上げた作品なのです。

一言で言えば、片やビートルズは創作意欲の高まりをバンド活動に集約できなくなり、解散に向かわせた2枚組であるのに対して、こちらは、高まる創作意欲を見事にバンドという形でひとつにまとめあげた2枚組です。見方によっては、ビートルズの失敗(作品としては素晴らしいですが)を見てきたストーンズが、「同じテツは踏むまい」と反面教師にすることで生まれた傑作と言ってもいいかもしれません。

そう考える理由は、ストーンズはなぜビートルズと異なり、60年代の古きから現在に至るまで40年以上にわたり、バンドを継続させることができたか、に見出すことができます。すなわり、学習能力の高さと比類なきビジネス・マインドこそが、ストーンズを40年以上の長きにわたってストーンズたらしめて来たのだと言うことです。

ストーンズは、ギタリストでカリスマ音楽ディレクターの役割もあるキース・リチャーズと、ボーカルで音楽界最強のビジネス・パーソン、ミック・ジャガーのふたりがバンドを引っぱり続けてきました。特にミックの頭のよさと商才は天下一品です。71年のストーンズ・レーベル立ち上げとCI的ロゴマークたる「ベロマーク」制定に始まるブランド戦略は、ロックバンドとしては他では類を見ない素晴らしい展開であるといえます(ストーンズレーベル第一弾アルバムのデザイン担当が、NYポップアートの旗手アンディ・ウォホールであるというのも計算されつくした戦略でありました)。

ステージングから衣装、ジャケット、パンフ、グッズ、果てはメンバーの体型に至るまで、とにかくそのブランド管理の徹底ぶりは、大企業もビックリのレベルなのです。そして、そのブランドを支える根底にあるのが、彼らの「音」。その「ストーンズの音」が完成したのが、この2枚組「メイン・ストリートのならず者 」であったのです。

思えば、彼らがルーツ・ロックやスワンプ・ロックと出会い、ストーンズらしいサウンドをつくりはじめたのが、アルバム「ベガーズ・バンケット」でした。その後続く名盤「レット・イット・ブリード」「ステッキー・フィンガース」を経て、「メイン・ストリートのならず者」に至る過程こそが、21世紀の今につながる、長きストーンズ的ストーンズ・サウンドの出発点でもあるのです。

その意味で、「メイン・ストリートのならず者」は、その後40年近くに及ぶ「ストーンズの音」としての音のブランド化を成し遂げたアルバムなのです。このアルバムが、発表当時にはあまり評価をされずに、今になって名盤評価を得ているのは、まさに専門家もストーンズ・フリークも、過ぎてから歴史を振り返って見れば、ここをピークにストーンズの流れが大きく動いたことを認識できるからなのだと思います。

なんだか難しい話になってしまいましたね。
以下おまけ程度に収録曲の話です。A1「ロックス・オフ」は、その後長きにわたるまさにストーンズ・スタイルのカッコいいもの。2曲目のA2「リップ・ディス・ジョイント」では、パンクにも一目置かれるストーンズ・ロックの過激な一面をしっかり形にしています。B1「スウィート・バージニア」は、ストーンズ的カントリーの最高峰ですし、D3「シャイン・ザ・ライト」あたりはまさにその後言われる“ストーズ的”の典型として、えらくしみる訳です。

そしてこのアルバムで、絶対に忘れてならないのが、キースがリード・ボーカルをとるC1「ハッピー」。今でもステージで歌われるこの曲が入ったことは、すなわち“'70型ストーンズ”の特徴でもあります。それはまた、21世紀を向かえ今なお終わることのなく続くストーズのもうひとつの重要な形が、ここにしっかりと構築された証でもあります。

音、ジャケット・デザイン、ステージング、メンバーの言動…。すべてを包括して彼らが長年の活動の中でつくりあげた「ストーズ・ブランド」は、このアルバムの存在なくしては絶対に確立し得なかったと思われるのです。


★ロックス・オフ/ローリング・ストーンズ動画★
http://jp.youtube.com/watch?v=IyuGX64zRkc&feature=related

★シャイン・ザ・ライト/ローリング・ストーンズ動画★
http://jp.youtube.com/watch?v=hFpOLoX1NkM&feature=related

★スウィート・バージニア/ローリング・ストーンズ動画★
http://jp.youtube.com/watch?v=1W4uFfCO6KE&feature=related

★ハッピー/ローリング・ストーンズ動画★
http://jp.youtube.com/watch?v=CJ1oADGicXo&feature=related

またぞろ不祥事!救いようのないNHKの脳天気体質

2008-01-18 | ニュース雑感
「親方日の丸」の“ダメ”ガバナンスぶりを露呈する事件が、またも発生しました。

ダメ事件とは、「NHK職員によるインサイダー取引発覚」です。
昨年3月に、外食企業統合のニュースを放送前に社内情報端末で知ったNHK職員3人が、事前に株を購入して翌日売り抜けた、というものです。

3人は2人の記者とディレクターとのこと 。公正な報道を司るマスコミ、しかも公共放送の報道担当が起こしたこの事件は、お粗末というよりも呆れであり、襟を正すどころか、解体も含めた抜本的な改革の必要を切に感じさせる大事件であると言えます。


まず問題点その1。
06年7月に、日経新聞広告局職員によるインサイダー事件が発覚し、大変な騒ぎになり、マスコミ各社は本件を他山の石とし、インサイダー防止策を講じました。
しかしながらNHK社内には、情報を扱う機関でありながら今も「インサイダー規定」すらないといいます(あったのは注意喚起レベル)。すなわち、、他社に大事件が起きようが我関せずだったのです。規定すらない状態では、社員へのコンプライアンス教育など、全く行われていなかったことは想像に難くないところです。今の時代の常識と比してのコンプライアンス意識の薄さは、信じられない程低いレベルです。

問題点の2つ目。
今回のインサイダー情報は、発表前に端末から全国で約5千人が見れる状態にあったとのこと。NHKの社内の情報管理体制、いや機密情報に関する取り扱いについて、何も考えていなかったのではないか、ということです 。
この脳天気ぶりはなんでしょうか。これだけ世間一般に情報管理の厳正化が叫ばれている昨今、「企業には、一層厳正な情報管理が求められています」などと報道している張本人が、なんたる杜撰な状況にあったことか。NHKは、管理体制がしっかり構築できるまでは、情報管理に関する報道で意見する資格はありません。

3番目。
これが一番問題なのですが、今回の3人は共謀したものではない、ということ。すなわち、何のつながりもない3人が、同じインサイダー情報を耳にして同じ行動をとったということです。
これはどういうことか?要は社風、企業風土の問題ということです。すなわち、社内で得た機密情報で、インサイダー取引をしても構わないという風潮が社内に蔓延しているということです。しかも、その3人のうちひとりはディレクター=管理職ですから、もう救いようがありません。


NHKは、原因の究明と再発防止策を講じるとしていますが、全然お話になりません。
すべての根源は、「親方日の丸体質の甘え」「報道機関のおごり」に他ならないのです。以前「制作費流用事件」に端を発した聴取料不払い運動が起き、社内の抜本的体質改善を宣言したのではありませんでしたか?それが、まったく何の改善もされていなかったことに他なりません。恐らくこのままでは、早晩、再び不払い運動が起きることはまちがいないでしょう。

再三にわたり不祥事を繰り返すNHKの組織風土は、腐りきっています。報道の現場におけるインサイダーは、自社の責任を省みないと言う点では、食品業界で例えるなら、商品に毒物が入るリスクを知りながら見過ごしたも同じ。民間企業ならば、間違いなく企業破綻に追い込まれている大事件です。

今回の件に関して、世論はNHKの小手先の善後策発表で許してはいけません。他のマスコミ各紙、各局は、同業だからと批判の手を緩めることなく、社会の公器として、同社の「親方日の丸体質の甘え」「報道機関のおごり」からの脱却に向けた具体的対応を求め、厳しい糾弾 を続けていくべきであります。

同時にNHKのあり方を考える外部の同社改革に関する識者機関は、この機会に同社が「親方日の丸体質の甘え」「報道機関のおごり」体質からの脱却がはかれないと考えるなら、報道、制作部門の分離民営化を先導し(ユニバーサルサービス部分のような政策的に官のままが好ましいとされる部分を除き)、民間として生きることの厳しさを骨の髄までしみるほど実感させるべきであると思います。

「民事再生」船場吉兆を、“囁き女将”が救うには…

2008-01-16 | ニュース雑感
“囁き女将”の会見で、食品偽装問題に更なる悪イメージの上塗りをしてしまった船場吉兆。16日、民事再生の申請を大阪地裁におこなったと発表しました。

船場吉兆のコンプライアンス意識の欠如か引き起こした今回の問題は、まさに企業における経営者のコンプライアンスのあり方、ガバナンスのあり方に関する悪い見本としてこの上なく参考になるものでした。やってはいけないことをすべてやってくれた訳ですから。

まずは、経営が関与した偽装問題、続いては嘘の会見、従業員への責任転嫁、2回目会見にもかかわらぬ誠意のなさ、顧客を顧みない先代重視の発言、問題の渦中の人物の居直り…

今回のケースほどの反面教師は、今後もあまりお目にかかれないかもしれません。世の経営者の方々も、いつ何時どんな問題発生で、わが身にコンプライアンス違反の疑義をかけられマスコミの取材攻勢に相対することになるか分かりません。そんな時に、今回の船場吉兆の会見や対応、発言の数々を思い出していただき、何をしたらいけないのかを確認しつつ対応する役に立つと思われるほどです。

結局今回の「民事再生申請=破綻」に追い込まれた理由は、先にあげた対応のまずさが積み重なったことに尽きるのです。今の時代のコンプライアンスに対する世間の目の厳しさを改めて実感させられる出来事でもありました。

同じように食品偽装があった企業でも、問題発覚後の誠意ある対応と明確な反省の態度、再発防止への迅速な対応を示した「白い恋人」は、既に復活し品切れが起きるほどの人気になっていると聞きます。「復活」と「破綻」、天と地ほどもあるこの違いは、問題発覚後の経営としての対応の大切さを雄弁に物語っています。

同社の民事再生の申請は、件の“囁き女将”を経営者トップに据えた上での対応になるとのこと。“囁き会見”“うそ泣き”“先代重視発言”等で大変評判の悪い女将が、経営トップに残り再建をすすめると発表をしたことで、またもや再度世間の批判を免れ得ない状況に自らを追い込んでいるかのように思えます。

なによりも、同社の労働組合が、今回の人事を認めない発言を既にしてるようでもあり、社内から不協和音が聞かれるような状況では、再建計画がうまく進むはずがありません。まずは何よりも“囁き新社長”には、顧客、従業員に対する心からの誠意ある態度をしっかりと内外に示していただき、社内をまとめ世間の理解を得ることが最優先課題になると思われます。それができてはじめて、債権者等関係各方面からの協力も得られるのではないかと思います。

再建に際して、誰がトップを務めて旗振りをしていくのかは、その組織と再建関係者が決める問題であり、周囲や世間がとやかく言うことではないかもしれません。ただ、批判の中心人物が再建のトップを務める以上は、過去の会社のやり方及び批判をされている自己態度に関し反省の弁をキッチリ示し、生まれ変わったのだと言う事を明確にしたうえでスタートを切らなければ、間違いなく再建は頓挫することになってしまうでしょう。

本日の民事再生申請およびそれに伴う新体制発表の場に、新社長が臆して同席せず、「生まれ変わった態度と再建に向けた意気込み」が明確に表明されなかったことで、同社の再生プロジェクトの先行きには大きな不安感を抱かざるを得ない現状であると感じています。

ラストチャンスのタイムリミットは、確実に迫っていると思います。