日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

〈70年代の100枚〉№100~こうして70年代は終わりを告げた…

2009-12-31 | 洋楽
私がこの企画を考えた時、はじめに70年代の定義を決める必要があると考えました。単純に暦で70年1月から79年12月までを70年代とするのは、コンセプチュアルではないからです。なぜ音楽界にとって70年代が特別な時代であるのか、なぜこの企画を思いついたのかを明確にし、ロジカルにしっかりと定義づけをしなくては企画は成立しないと考えたからです。70年代を特別なモノにしたキーワードは、60年代のヒーロー、ビートルズでした。70年4月の解散宣言により70年代はビートルズの後釜探しと、再結成を横睨みする特別な時代になったのです。そのような背景の下、元ビートルズも入り混じって様々な音楽が世に登場しました。そして80年12月、ジョン・レノンの死をもってビートルズの再結成は永久に封印されました。70年代は終わりを告げたのです。企画のスタート時に書いたように、70年代の定義をビートルズ解散の70年4月からジョンが亡くなった80年12月とした段階で№100は必然的に決定していた訳です。

№100   「ダブル・ファンタジー/ジョン・レノン ヨーコ・オノ」

このアルバムの冒頭に入っている小さな鐘の音はジョンの発のソロアルバム「ジョンの魂」の冒頭の「マザー」のビッグベンの鐘の音と同類のものであると、生前ジョンは語っていました。しかしながらこのアルバムに、「ジョンの魂」のような贅肉をそぎ落とし、戦争に、アメリカに、そしてビートルズに闘いを挑んでいた頃のジョンの姿はありませんでした。そこにあるのは、平和と幸福と愛に満ちた歌の世界。ジョンははからずもこのアルバムで、70年代は終わったと宣言したのでした。でもこの愛と平和にあふれたアルバムは、確実にリリース直後の悲しい出来事とセットで記憶されることになってしまい、篠山紀信によるジャケットのモノクロ・カットさえ周到に用意された追悼写真のように思えてしまうのがこのうえなく悲しいのです。

このアルバム、リリース当初ジョンとヨーコの歌が交互に収められていることを腹立たしく思ったことをよく覚えています。なぜジョンの歌だけにしなかったのかとか、半分の価格でジョンの歌だけをレコードにして欲しいとか。でもそれは若気の至りであり、何度も何度も聞き返してみるとジョンの楽曲にとって交互に入るヨーコの曲は欠かせざるものであり、ヨーコの歌とジョンの歌が対になって彼らが意図したこのアルバムのコンセプチュアルな世界が完結するのです。ジョンの楽曲の素晴らしさは言うに及ばずですが、ヨーコの楽曲もジョンの手助けがあったとしても、過去のどの作品よりもノーマルで美しくジョンへの愛に満ちています(前衛芸術家のヨーコも、ジョンのファミリー回帰の影響かかなり丸くなっています)。B7「ハード・タイムス・アー・オーバー」あたりは、けっこうな名曲です。ただ歌い方が大学でオペラ歌唱を学んだせいであるのか、ジョン・レノンのアルバムにはそぐわない感じがするのが少々残念といえば残念です(B2「あなたのエンジェル」などはクィーンみたいで、この歌い方がバッチリの佳曲ですが)。

ジョンの作品7曲は今さら評する必要もないほど素晴らしい曲ばかりです。A1「スターティング・オーバー」は、曲はジョンとヨーコの再出発を祝した歌詞でありながら、曲調や歌い方は明らかにプレスリーやロイ・オービソンを意識して“ロッカー”ジョンの復活を高らかに宣言したのでしょう。B3「ウーマン」はこのアルバムのテーマを凝縮したヨーコへの素晴らしいラブ・ソングです。イントロ冒頭のジョンのつぶやき「For The Other Half Of The Sky(毛沢東語録の一節)」は、まさしくジョンとヨーコが二人でひとつを意味する「ダブル・ファンタジー」を別の言葉で言い換えたもの。ある意味アルバム中もっともAOR的とも言える新たなジョン・レノンを感じさせる曲でもありました。この曲の先にはどんな未来があったのでしょう。残念ながら、それは永遠に封印されてしまいました。

80年12月8日の夜、私は大学の寮で友人たちと酒を飲んでいました。突然寮の仲間が「ジョンが殺された…」と言って青ざめた顔で私の部屋に入ってきました。ラジオをつけると深夜放送はどこもみな「ジョン・レノン緊急追悼特集」を流していました。ひっきりなしに流れるジョンの歌、ビートルズの歌…。酒の酔いもあったのでしょう、頭をハンマーで叩かれたような衝撃で現実と空想の世界が入り混じったような不思議な感覚に陥りました。そして皆言葉少なになり、重苦しい時が流れていきました。ラジオからは「スターティング・オーバー」が…。二人の再起を祝った歌が、終焉の歌になってしまいました。「悲しい…」私は思いました。「70年代が終わったんだね…」、私はつぶやきました。


※これで<70年代の100枚>はめでたく完結です。無事年内に終了の運びとなりました。新年に最終調整を施した100枚の一覧掲載による「まとめ」で締めくくりたいと思います。長い間のご愛読ありがとうございました。また70年代洋楽モノの新企画を検討したいと思いますので、引き続きご愛読いただければ幸いです。

※本年のブログ更新はこれにてすべて終了です。来年もよろしくお願い申しあげます。皆さま、よいお年を。

今年の10大NEWS⑤~1位

2009-12-31 | ニュース雑感
★1位★「政権交代~真の二大政党制は確立されるのか?」

今年の10大NEWS第1位は、世間の10大NEWSと同じく政権交代をおいて他にないと思いました。長期一党支配(細川政権樹立による瞬間的な下野はありましたが)の自民党政権から民主党政権への政権交代は、日本の憲政における大きなターニング・ポイントでもあります。政権交代の一番の理由は自民党の体たらくにありました。企業の寿命が50年と言われるのと同じく、政党も結党以来長期間を経ることによる組織疲弊は必ず訪れる訳で、安部→福田→麻生と雪崩をうつように組織崩壊の危機に直面していながら“第二創業”的な抜本的改革に着手できずに政権を明け渡した同党。現状も依然として過去の延長線上でのぬるま湯状態に変わりなく、民主党の長期政権化の流れは避けられない情勢にあるのかもしれません。一方の民主党も、総選挙前は政権をとるのに必死の形相で「ばらまき公約」を大々的にぶち上げてはみたもののなかなか現実の壁は厚く、首相のリーダーシップの問題も含めこの年末には内閣支持率は急降下の様相を呈してきました。現時点で国民の多くは、「自民党があまりに情けないので、一度民主党にやらせてみたがどうもイマイチだな」という感じではないでしょうか。

民主党のだらしなさの原因は、野党第一党である自民党のだらしなさにもあるのです。毎度申し上げてきましたが、二大政党が足の引っ張り合いではなく政策的に「切磋琢磨」し相互けん制を働かせながら交代で政権を担当する形が本来は望ましい民主主義政党政治のあり方であり、その意味では自民党の抜本的改革(ポイントは派閥解消と若返り)による民主党政権への政策的な面からの牽制があってはじめて、今回の政権交代は意味があったと言えるのです。今まで長きにわたり政権を担っていた自民党であればこそ、従来の野党とは違う野党としての現政権への関わり方が出来るのではないかと言うことなのです。ただ現実にはそのような役割は全く機能しておらず、自民党は来年夏の参院選でさらなる大敗を重ねない事には、抜本的な改革には至れないほど組織が病んでいると言わざるを得ないと思います。いずれにしましても、今年は二大政党制スタートの第一歩を形式的にでも踏み出したと言う点では、意義深い年であったことは間違いありませんが、この第一歩が果たして次につながるか否かはむしろ現第二党の自民党の再生にこそかかっていると、私は思っています(自民党応援団という意味ではありません)。

先般も当ブログで取り上げた「坂の上の雲」に出てくる「一身独立して一国独立す」の言葉通り、日本が政治においても経済においても世界の先進国として主導的立場でであり続けていくためには、2大政党が「切磋琢磨」し「一身独立」することが不可欠な訳であります。今年を我が国の政治近代化の第一歩として明確に位置づけられるためにも、来年は2大政党の国民生活向上を第一に考えた政策論争による「切磋琢磨」に期待したいと思います。


最後に今年の私の1位をいろいろ
・ツール:ipod touch(カンペキ依存症です)
・本:組織は合理的に失敗する/菊澤研宗(経営者、管理者必読!)
・CD:ビートルズ・モノ・ボックス(ホワイト・アルバムのモノ・バージョンに感激!)
・映画:This Is It/マイケル・ジャクソン(感動です)
・ステージ:クリストファー・クロス(ビルボードでのアコースティクな大人のライブに予想外の感動!)
・食べ物:金目鯛刺し(毎年のことですが、あれば必ず注文します)
・店:熊谷「酒蔵はっかい」(昨年レベル・ダウンしましたが今年見事復活!「味」「店」「サービス」すべてよし!)
・人:忌野清志郎(涙、涙…)
・馬:オウケンブルースリ(「まさかまさかの末脚」も、ウォッカにあと一歩及ばず…)

今年の10大NEWS④~3位・2位

2009-12-30 | ニュース雑感
★3位★「忌野清志郎さん死去。葬儀に4万人以上が参列」
今年のゴールデン・ウィークまっただ中の5月2日、ロックシンガーの忌野清志郎さんが58歳の短い生涯を閉じられました。日本のロックを形作った第一人者であり、原発への抗議やその流れでの発売禁止への徹底対峙姿勢などを「ロックってそういうものだろう」と、音楽だけにとどまらない日本のロックのスタイルを作り上げたまさしく“キング・オブ・ロック”な存在でした。個人的には決して大ファンではなかったのですが、何かに掻き立てられるように5月9日青山斎場での葬儀(「青山ロックン・ロール・ショー」)に参列してきました。並んで並んで歩いて歩いて、想いを巡らせ、考えさせられ…約6時間。不思議なほどの充実感を与えてくれた貴重な体験でした。何か大きなものを確実に受け取って帰ってきました。音楽を愛し、平和を愛し、家族を愛した心根の優しい清志郎の魂は、我々音楽ファンの中でずっとずっと生き続けていくことでしょう。世間一般はともかく、私にとってはマイケルの死よりも遥かに大きな出来事でした。

★2位★「ユニクロ・H&M…歴史的大不況下に咲いたビジネス・トレンド」
昨年のリーマン・ショック以来の大不況下で消費者の財布のひもは硬くなる一方。大半の企業が消費の冷え込みにあえぐ中、不況下トレンドに乗って業績を伸ばしたり世間の話題を集めたりした企業や商売もいくつかみられました。不景気が後押しした代表格はユニクロでしょう。990円ジーンズの価格破壊的商品開発力は他の追随を許さないものでした。でも、ユニクロは単に安いだけで売上を伸ばした訳ではありません。品質の向上とブランド・イメージ向上に多くのコストを裂いてこそ、その飛躍的業績進展を成し得たのです。前回のデフレ不況期にユニクロと共に飛躍的に業績を伸ばしたシマムラが今年苦戦をしいられたことを考え合わせれば、いかにユニクロの戦略が優れたものであったか分かろうと言うものです。海外勢でも、安いのにデザイン性に優れていると若い女性たちから高い評価を集めたスウェーデンのH&Mも大きな話題を集めました。もうひとつ、形を変えた「値引き」でありながら“アイデア商法”的にブームになったデパート発の下取りキャンペーンも各社の売上進展に貢献しました。要するに、尋常でない硬さの消費者の財布のひもを緩めるには、単なる「安い」ではダメ。質やプラスαのお得感など、消費者心理を熟知した上での工夫やアイデアが必要とされるのがこの不況を勝ち抜く消費者ビジネスであるという訳です。「燃費がお得+エコ」のハイブリッド・カー人気もまさしくこの流れです。この辺が100円ショップが飛躍的に売上を伸ばした前回のデフレと、100円ショップが苦戦をしている今回のデフレの大きな違いであると思います。

今年の10大NEWS③~5位・4位

2009-12-29 | ニュース雑感
★5位★「オリンピック東京開催夢と散る」
2016年のオリンピック開催に名乗りを上げていた東京は、残念ながら落選。1964年以来52年ぶりのオリンピック開催はなりませんでした。今回のオリンピック誘致合戦は一般的に、「日本が苦手とするロビー活動の差」が出たと言われていますが、昨年の一次選考後の下馬評を全くひっくり返したこの結果は、むしろアメリカを中心とした世界運営の流れが昨年のリーマン・ショック以来大きく変わりつつあることの象徴であったように感じています。最終選考にに残ったリオデジャネイロ、マドリード、シカゴ、東京の4都市で、真っ先に落選したのがオバマ大統領自ら応援演説に乗り込んだUSAのシカゴで次が盟友JAPANの東京だったことと、そして最終的に開催地に選ばれたのがBRICsの「B」のリオデジャネイロだったことは無関係ではないと思うのです。21世紀最初の10年最後の年である2010年に向けて、GDP1位と2位の米国と日本は今後世界の自転軸が変わっていくであろうことをどのように認識し行動していくべきなのか、「落選」以上に大きな課題を与えられたのではないかと感じさせられました。

★4位★「新型インフルエンザ流行でマスメディア、企業が過剰反応」
今年の前半に大きな話題となったのが新型インフルエンザ感染の問題でした。新型インフルエンザそのものが大きな問題であったというよりも、マスメディアの過激すぎる報道とそれを受けた企業の過剰反応が一種の社会問題的パニックを引き起こしたことを我々は忘れてはなりません。「国内で初の感染者」という報道あたりまでは、まだ良かったものの、その後各地でポツリポツリ感染者が出るたびに、「感染した奴は極悪人」「この時期に海外に行くとは何事か」「感染者を出した企業は管理不行き届き」のような論調が相次ぎ、感染者を出した学校では校長が“涙の会見”をするなど異常な事態が相次ぎました。某銀行店舗ではスタッフ全員がマスク姿で店頭に出たり家族に感染者が出たら出勤禁止とか、「確実に死に至る病」でもないのに過敏すぎる対応がまかり通った原因はひとえにマスメディアの異常に危機感を煽る過激報道にありました。この冬の時期の方がよほど新型がはやっているにも関わらず、銀行行員の一斉マスク姿も家族発病による「自宅待機」も姿を消しました。企業には今となってはお笑いレベルの自分たちの過剰対応の原因究明を求めるとともに、マスメディアの過激報道姿勢には猛省を促したいと思います。

今年の10大NEWS②~7位・6位

2009-12-28 | ニュース雑感
お待たせいたしました。10大NEWS7位から引き続きカウント・ダウンです。

★7位★「iphone・ipodTouch~携帯音楽端末革命!個人的には“ipod依存症”に…」
モノ自体の登場は昨年でありながら、アプリケーションが爆発的広がりをみせた今年、本格的ブレイクをしたのがiphone・ipodTouchであったと思います。TVCMでも告知の通り、iphone・ipodTouchを魅力的にしているのはプラットフォームのオープンソース化が導いた約4万種類にも及ぶ豊富かつ安価なソフト開発による付加価値の向上に他なりません。「音楽ソフトは丸くなければ」と言っていた私でさえ遂にipodTouchを購入(iphoneは文字盤の使いにくさ等携帯電話としての使用感を勘案してパス)。音楽プレーヤーとしての使い勝手はもとより、メーラー、ビジネス・ユーティリティ、学習、雑学、ゲーム等々、ダウンロード・アプリケーションによる小型PC並みの機能性にすっかりはまりまくってしまい、今年1年完璧な「ipod依存症」に陥ってしまいました。元々は携帯音楽プレーヤーでありながら、アプリケーションによる多機能化を他社の力で実現し、ライバルの“元祖携帯音楽プレーヤー”SONYウォークマンを、全く異次元の領域での付加価値創造により完璧に引き離した感が強くあります。マーケティングの世界において、後世に語り継がれるであろうアップルの見事な戦略であったと思います。時代は「オープンソース化」の流れです。歴史的に企業秘密主義が根底で支配する日本の企業文化にとっては、衝撃的すぎるSONYの圧敗ぶりだったのではないでしょうか。

★6位★「マイケル・ジャクソン衝撃の突然死」
今年6月世界を駆け巡った、世界的スーパースター、マイケル・ジャクソンの突然の死のNEWSは世界中に大きな衝撃を与えました。7月からの「最後の英国ツアー」を目前に控えてのあまりにも唐突な死。NEWSを聞いたその時には、誰もが自分の耳を疑ったのではないでしょうか。この秋に公開された、ツアー・リハーサルを収めたドキュメンタリー・フィルム「ディス・イズ・イット」。当ブログでは時期を逸して紹介をできずにいましたが、まるでこの作品をこの形で残すために死を選んだのではないかとさえ思えるほどの素晴らしく感動的な作品に仕上がっていました。50歳という年齢を全く感じさせない今が全盛期ではないかとさえ思わせる高水準なパフォーマンスと、完璧を求める真のプロフェショナルな彼の姿。そして何よりも、チームとスタッフの夢の実現に腐心する彼の心やさしい人間味あふれる姿には、本当に胸を打たれる思いで一杯にさせられました。生前は多々のスキャンダルに巻き込まれ、悪者にもされ続けられてきた晩年の彼でしたが、彼の“真の素顔”がこんな形で人々の心を打ったことはあまりに切ないことであり、彼の死を一層悲しいものにしたように思います。スキャンダル時代に彼を奇異の目で眺めた一人として深い反省の念にかられ、個人的にも考えさせられることの多いスーパースターの死でありました。

〈70年代の100枚〉№99~一家に1枚!本当に偉大なベスト盤

2009-12-27 | 洋楽
さあ、№99です。最後の№100はこの企画を始めた時から決まっているのですが、№99に何を入れるべきか、№80を過ぎたあたりから入念に考えてきたつもりでしたがここにきてけっこう悩まされました。悩んだ末の落選組のアーティストは、スライ&ファミリー・ストーン、グレン・キャンベル、ケニー・ロジャーズ、オハイオ・プレイヤーズ、ブロンディ、シェール、デビー・ブーン、アンディ・ギブ、シック、レイナード・スキナード、アルバート・ハモンド、Tレックス…、落選理由はいろいろです。全米TOP40的には大ヒットしたものの日本では当時盛り上がりに欠けていた、逆に日本では売れていたものの全米TOP40的にはさほどでもなかった、70年代というより80年代的イメージが強かった、取り上げるべき適当なアルバムが見当たらなかった…等々です。そして最後に残ったのは70年代に最も売れたベスト盤でした。

№99   「グレイテスト・ヒッツ/エルトン・ジョン」

結局エルトンかい?と言われそうですが、70年代のアメリカにおける驚異的なセールスはもとより、ジョン・レノンの死が70年代の終わりを告げたとするのなら、そのジョンと最後のステージを共にしヨーコとのヨリを戻させハウス・ハズバンドへの道を進ませた彼こそ、やはり70年代を最も象徴するアーティストであると言えるとのではないでしょうか。既に本企画では、全米8週№1の2枚組超名作「グッバイ・イエロー・ブリックロード」と前人未到全米初登場1位の快挙を成し遂げた「キャプテン・ファンタスティック」の2枚を選出していますが、実はそんな彼にとって70年代に一番のセールスを記録したアルバムはこのベスト盤だった訳で、彼の70年代における足跡を今一度把握することの重要さは、他のどのアーティストのアルバムを取り上げることよりも重要であると考えました。

このアルバムは、74年のクリスマス・シーズン向けにリリースされ、実に10週にわたって№1を記録する大ヒットになっています。70~79年に数多くリリースされた各アーティストのベスト・アルバムで、№1を記録したのはわずか9アーティスト(ビートルズ、カーペンターズ、ビーチ・ボーイズ、ジョン・デンバー、シカゴ、イーグルス、CSN&Y、バーブラ・ストライザンド、とエルトンという錚々たるメンバー)で、その中で10週以上№1を続けたのは唯一エルトンだけなのです(これに続くのは5週連続のイーグルスとシカゴですから、ベスト盤での10週連続№1がいかにすごいことかよく分かると思います)。これは大変なことなのです。70年代に10週以上№1を記録したアルバムで見ても、単独アーティストでないサントラ盤を除くとわずか6枚。しかも新曲を1曲も含まずチャート上位を獲得するのが難しいベスト盤での快挙ですから、この時代におけるエルトンの人気のすさまじさが分かろうというものです。

中身は全10曲とCD時代の今では物足りないものですが、どれもこれも大ヒット曲ばかりの“ベスト・オブ・ベスト”となることで、その才能の素晴らしさを一層ひきたたせてもくれます。A1「ユア・ソング」にはじまって、A2「ダニエル」A4「グッバイ・イエロー・ブロックロード」A5「土曜の夜は僕の生きがい」B1「ロケット・マン」B2「ベニーとジェッツ」B3「僕の瞳に小さな太陽」B5「クロコダイル・ロック」…、珠玉のヒット・ナンバーが次々と登場する様は、70年代のヒットチャートそのものといった趣きであり、これほどに70年代を象徴するアルバムは他にないのではないかと思えるのです。

この後現在に至るまで、エルトンのベスト盤は数多くリリースされていますが、曲数は少ないもののこの密度に勝るアルバムはありません。70年代にアナログ盤でリリースされた他のアーティストのベスト盤と聞き比べてみても、これほどまでに「グレイテスト・ヒッツ=最も偉大なヒット曲集」の名にふさわしいアルバムは、他にないと思ってもいます。70年代を愛する音楽ファンなら、一家に1枚必ず持っておきたい作品であると断言できる素晴らしいアルバムです。

有馬記念(修正)

2009-12-26 | 競馬
いよいよ今年を締めくくるグランプリ有馬記念GⅠです。

今年は、秋の主役たる馬たちの相次ぐリタイヤで、やや小粒なメンバー構成となり実力拮抗の混戦状態となっています。“誰にでもチャンスありの”混戦を制するのは、果たしてどの馬でしょうか?

人気は牝馬3歳2冠の②ブエナビスタ。この馬、秋は3戦して勝ち鞍なし。連戦の疲れも気になるところで、強烈な末脚が期待できるかやや疑問な感じではあります。

最後は思い切った穴狙いで、③ミヤビランベリからいってみます。逃げても差してもOKの万能型で、今年GⅡをいずれも人気薄で2勝し、父オペラハウスの晩成血統がいよいよ“本格化”したとうかがわせます。しかも、例年このレースは、小回り荒れ馬場で内枠の先行馬断然有利。またもや人気薄であっと言わせる可能性大です。

相手は、春のグランプリ馬⑨ドリームジャーニー、3歳では安定度№1で父グラスワンダーがこのレースを2勝している⑭セイウンワンダー、鞍上ルメールで一発気配の超良血⑯フォゲッタブル、中山大得意で一昨年の勝ち馬⑦マツリダゴッホ、そして抑えで②ブエナビスタ。

③の単複と上記相手馬への馬連&ワイドで、穴馬勝負で今年の締めくくりとします。

最後はしっかり締めたいところですが…。

※買い目修正
最後は気分よく終わりたいので、上記6頭から②ブエナを除いた5頭のワイド・ボックス10点で当てにいくことにします。ブエナ来るなよ。

今年の10大NEWS①~10位・9位・8位

2009-12-25 | ニュース雑感
今年もボツボツ10大NEWSをはじめます。今日はまず、10位~8位を。

★10位★「エコカー・ブーム~我が家にもプリウスが…」
昨年あたりから、その燃費の良さに引っ張られ一部のエコ・マニア向けから一般ユーザーの関心を集め始めたエコカーですが、今年ホンダの低価格ハイブリッド・カー「インサイト」の投入を機に一気にホンダVSトヨタのエコカー戦争が勃発。トヨタも「プリウス」の大幅値下げに踏み切り、不況下にあって納車10カ月以上待ちと言う一大エコカー・ブームの到来となりました。個人NEWSとしては、今年3月ちょうどマイカー買い替え時期を迎えた我が家にもプリウスくんがやってまいりましたが、なんと値下げ前購入で約50万円も高い買い物に…。しかも、購入直後2度にわたってドアを傷つけられるという災難にも遭遇して、本当についていないマイカー買い替えになってしまいました。でも、燃費は最高!走行は静かで快適です。今後はエコカー以外は考えられないというほど、気に入っております。

★9位★「揺れに揺れ迷走を続ける郵政三事業」
今年初めの自民党政権の末期に、鳩山邦夫氏が火をつけた西川日本郵政社長更迭騒動。発端は、オリックス宮内=旧住友銀行西川の“関西系仲良しライン”での「簡保の宿売却疑惑」の責任を取らせようというものでした。SMAP草くんの“全裸逮捕騒ぎ”でも見せた邦夫氏のエキセントリックな物言いは国民の支持を得るには程遠く、一度は西川氏のクビはなんとか繋がりました。しかし、民主党への政権交代で社会主義者国民新党亀井静香大臣は個人的恨みに基づく独断的ゴリ押で、「西川辞任」→「日本郵政首脳陣の官僚OBへのすげ替え」→「3事業一体での実質国営化への出戻り」といった時代逆行の流れをやってのけたのでした。小泉政権下でのあの「郵政選挙」は何だったのでしょう?国営化への逆戻りは国営郵政の緩慢経営による国民負担発生と巨大組織による民業の圧迫再発懸念、さらには郵貯資金を大量の赤字国債引受先に利用することでの日本国債の信用力低下による信用破たんの懸念が渦巻くことになります。このあたりの議論は全くし尽くされておらず、国民的レベルでの再議論が待たれるところです。

★8位★「ビートルズ・リマスターで再ブーム~超目玉“モノ・ボックス”登場!」
今年春に突如予告され、9月遂に登場したビートルズのリマスター・アルバムは、日本のみならず世界中に最も新しいビートルズ・ブームを巻き起こしました。個人的には「いらねえ、いらねえ、そんなもん」と言っていたのに結局買ってしまった限定盤「ビートルズ・モノ・ボックス」。「ホワイト・アルバム」までは実はジョージ・マーチンが手掛けていたのは、すべてモノ・ミックスだったという衝撃の事実…。そして初めてデジタル・モノで聞く“ジョージ・マーチンが意図したミックス・バランス”。「リマスター?“60年代”を今聞くのに音が良ければいいってもんじゃないよ」との当初の言い分はどこへやら、そのたび新鮮味を持って我々に迫ってくるビートルズには結局勝てないのです。「やはり、ビートルズはスゴい!」を実感した09年でした。おススメは断然モノ・ボックス!まだの方、今からでもぜひ買って聞いてください。

〈70年代の100枚〉No.98~70年代を象徴する“ワン・パターン芸”

2009-12-23 | 洋楽
いよいよこのシリーズも残すところ3枚。なんとか取り上げたかったアーティストの一人を、苦肉の策で76年リリースのベスト盤で取り上げることにします。

No.98    「グレイテスト・ヒッツ/ギルバート・オサリバン」

ギルバート・オサリバンと言えば大ヒット曲A1「アローン・アゲイン」。彼の名を知らない人でも、この曲は聞いたことがあるのではないかと思うほどに耳馴染みの良い印象的なナンバーです。この曲は、72年に全米で6週連続No.1になり、一躍彼の名を全米に、いや世界中に知らしめたのでした。70年代を通して、全米シングル・チャートで6週以上連続でNo.1を記録した曲は、わずかに9曲。それらは、「明日に架ける橋(サイモン&ガーファンクル)」「喜びの世界(スリー・ドッグ・ナイト)」「恋のナイト・フィーバー(ビージーズ)」など、どれも本当に有名な大ヒット曲ばかりです。となればやはり取り上げたい。しかもこの人、けっこうヒット曲がある訳で…。と言う訳でベスト盤での登場です。

ギルバート・オサリバンはこの曲の印象が強すぎて、今ではややもすると“一発屋”的に思われているフシもありそうですが、実はアメリカでは続くA2「クレア」は2位、さらに73年のB1「ゲット・ダウン」も7位を記録しており、本国英国ほどではないにしろ72年から73年にかけてトップテン・ヒットを連発していたのです(他にもB6「アウト・オブ・ザ・クエスチョン」17位、B5「ウー・ベイビー」25位のスマッシュ・ヒットあり)。さらに日本では根強い人気に後押しされ、A6「ホワイ・オー・ホワイ」や「ハピネス」「愛のジェット便」などと言った曲もけっこう売れていたと記憶しています(彼のHPにある日本のラジオ・チャート順位では、それぞれ最高位6、8、6位と記載されています)。

彼は、アルバムとシングルを別物として制作していたフシがあり、「アローン・アゲイン」はシングルのみのリリースでした(日本では、特別にセカンド・アルバム「バック・トゥ・フロント」に収録)。その後の「ホワイ・オー・ホワイ」「ハピネス」「愛のジェット便」も同様シングルのみ。でも一方のアルバムが決してコンセプチュアルな作りであった訳でもないので、アルバム単位ではなかなか語り継がれるようなアーティストにはなりにくく、また「アローン・アゲイン」があまりに大ヒットしたことも災いしてか、結果“一発屋”的印象に受け取られているように思われます。

75年までのヒットを網羅した本作はCDは現在廃盤ですが、90年代以降かなり多種類のベスト盤が出ていますので、彼の代表曲は容易に入手できる環境にあります。ベスト盤で上記の彼の作品を聞いていただくと、彼のメロディ・メイカーとしての並みはずれた才能がよく分かると思います。ただ惜しむらくは、単調なリズムパターンを生み出しているキーボードの“手癖”的なワン・パターンと独特の歌い回しが、どの曲も似たような印象を与えてしまうので、その点がちょっと残念な感じも…(例えバラードでっも、この人が歌うとなぜかポップになります)。そこが、ヒット・チャート的には早々に飽きられ、エルトン・ジョンやビリー・ジョエルになり損ねてその後ヒットとは無縁のアーティストになった所以であるのかもしれません。裏を返せば、いつもいつの日も変わることがないので、オールド・ファンが安心してどの作品も聞くことが出来るとは言えるのでしょうが…。

昨年、ビルボード・ライブ東京にやってきた生の彼を久しぶりに見ましたが、風貌もさることながら70年代と全く変わらぬ演奏と歌い回しに、個人的には本当に懐かしい想いに浸らせてもらいました。最近では、昔の楽曲をジャズ風にアレンジしたりアコーステック・セットに模様替えしたりして、アダルトな雰囲気で売る70年代シンガー・ソングライター系アーティストが多い中、ある意味まんま70年代当時を再現してくれる数少ないアーティストかもしれません。ベリー・スペシャル・ワン・パターン(VSOP)も、続ければ新たな価値が生まれてくるって感じですね。このスタイル、ビジネス的にも応用が利く話かもしれないとちょっと思いましたが、いかがでしょう。

経営のトリセツ76~「一身独立して一国独立す」

2009-12-21 | 経営
今年から3年にわたるNHKの年末特別大河ドラマ「坂の上の雲」、登場人物たちの生きざまはリーダーシップの在り様と言う観点から、現代の企業経営にも役に立つなかなかの面白さです。

中でも主人公の秋山兄弟の兄好古が物語の主人公である弟真之に言って聞かせる座右の銘、「一身独立して一国独立す」。この言葉は、福沢諭吉が「学問ノススメ」の中で説いている言葉でありますが、「明治維新段階でのちっぽけな日本国を、世界中の誰もが認める立派な国に作り上げるためには、国民の一人ひとりが勉強し仲間たちと切磋琢磨し一人前になることが必要である」と、語っているのであります。

翻って組織における発展は、その構成員一人ひとりが「勉学」にいそしみ「切磋琢磨」しあうことが何よりも大切であると置きかえることができるでしょう。中でも人の上に立って物事を推し進める管理者がまず、率先して行動を起こし「一身独立」を実現することがひいては担当者一人ひとりの意識を変えるきっかけとなり、最終的に会社全体がレベルアップして、世間から認められる立派な存在になることを可能にすると思うのです。

では、管理者が身につけるべき「勉学」とは何でしょう。それは経営に関する基本的な「知識」と管理者としての「意識」に他なりません。少なくとも、自社の財務内容がどうなっているのか、という基本的「知識」を身につけた上で、企業を発展に導く上での課題点はどこにあってそれを乗り越えるためにどうするべきなのか、それらに当事者として取り組み自己の立場や管理スパンにおいて今何をなすべきかを常に見失うことなく行動することが求められるのです。

そしてもうひとつ福沢諭吉→「坂の上の雲」が教える「一身独立」に向けた重要なポイントは「切磋琢磨」し合うこと。企業における管理者同士が常に競い合い、「切磋琢磨」し合うことで、お互いがより一層磨かれ結果として企業のレベルが一段と高まっていく訳です。社内にまともな「議論」もない、フェアな「競争意識」もない、ただ傷をなめ合って愚痴を言い合うような管理者たちの集まりであったなら、そんな企業に発展は永久に望めないのです。

従い経営トップはそのトップとしての責任において、個々の管理者の「知識」と「意識」のレベルアップに腐心するとともに、管理者同士が互いに「切磋琢磨」できる風土づくりをしなくてはいけないということになるのです。