日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

マクドナルドはなぜ加工肉リスクを負ったのか~AllAboutさん拙担当コーナー更新しました

2014-07-31 | 経営
AllAboutさん拙担当コーナー「組織マネジメントガイド」更新されました。日本マクドナルドはなぜ中国加工肉リスクを負うことになったのか。コストリーダーシップ戦略の限界という観点から分析しました。

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/445483/

加工肉事件の陰に大手企業文化あり?~J-CASTさん拙連載更新されました

2014-07-30 | 経営
J-CASTさん拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました。マクドナルドらを襲った中国製加工腐敗肉の一件に、ローカル飲食チェーンのオーナーが自社の苦い思い出を語ってくれました。そこからは今回の件とも相通じる大手外食文化のアキレス腱がうかがい知れます。

こちらからどうぞ。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/07/30211756.html

ベネッセ、マクドナルド両事件に見る原田泳幸的アメリカンスタイル経営の弊害

2014-07-24 | 経営
ベネッセの個人情報漏えい事件で時の人となっていた、原田泳幸同社会長兼社長。今度は古巣の日本マクドナルドで事件発生です。腐敗肉を混入させていたという中国の食肉工場から、チキンナゲット用の肉を仕入れていたことが明らかになりました。昨日今日取引を始めた相手ではなさそうですから、原田氏の時代からの付き合いではあるのでしょう。

食の安全が叫ばれて久しい昨今ではありますが、マクドナルドは子供たち向けのキャンペーンを積極的に展開してファミリー層の取り込みに注力していただけに、子供を持つ親たちを中心としてその注目度は特に高いようです。

結論から申し上げると、コストと安全リスクのトレードオフ関係に尽きる話であると言ってしまえる事件なのですが、安全性を危うくするようなコストダウン戦略は見直しを迫られること必至なのではないかと思うところです。

原田氏はアップルコンピュータの日本代表から日本マクドナルドへ転じた、いわば典型的アメリカンスタイルの経営者です。すなわち、コストダウンや価格戦略を重視する経営スタイルがその本質であります。

日本企業はバブル崩壊後のデフレ不況に移行する過程において、原田氏だけでなく日本企業の多くは、様々な面でアメリカ的な合理性、効率化などを重視した制度やオペレーション・システムを導入しました。しかしそれがうまくいったのかと言えば、一時的な組織浮上の助けにはなったものの、長期的には必ずしも日本人気質に合ったものとは言い難く、見直しを迫られた例も数多く確認することができます。

例えば人事制度において、90年代後半にトレンドとなったアメリカ的成果主義の導入は、年功制を代表とする日本的な情緒的人事制度を打破する合理的人事システムとして一時期もてはやされたものの、数年後にはそのままの運用ではやはり日本的な労働環境にはしっくりこない面もあると、多くの企業で見直しを迫られました。

製造現場においてもこの時期、人件費の安い発展途上国での製造、加工の流れは従来以上の進展を見せ、国内においては産業の空洞化が叫ばれもした訳なのです。しかし日本人消費者にとっての本当に重要な問題は、産業の空洞化以上にコストダウンや価格戦略を重視する経営スタイルが及ぼす安全性を含めた品質とのトレードオフであったはずなのですが、これまであまり注目されてきませんでした。

特に食の安全性欠如の問題は神経質な日本人気質にとっては許しがたいことでありながら、販売者が知名度の高い日本企業ある限りその陰に隠れて見えてこなかったという盲点があったのかもしれません。マクドナルドの価格戦略はある意味、そのブランド力によってコストダウン・リスクの存在を意識させないという一種の催眠戦術でもあったのです。

実際には、「安かろう悪かろう」は至極当たり前のこと。適正な範囲での無駄の排除はコストを下げるのですが、価格戦略重視を前面に掲げることによる行き過ぎたコストダウンは「悪かろう」を招きかねず、それが食に関わるものであるなら当然安全性を疑ってかかる必要があるということを、今回の一件は改めて我々の前に指し示してくれたのだと思います。

この問題一つをとって、原田泳幸的アメリカンスタイル経営の限界であるとまで言ってしまうのは暴論であるでしょうからそれは差し控えますが、ベネッセの一件でもそのアメリカンスタイルの経営姿勢にちょっと気になることがあったので触れておきます。

原田氏は情報漏えい事件の容疑者逮捕の報を受けた会見の席上で、当初はしないと言っていた被害者へのお詫びとして200億円の予算を計上して受講料減免やおわび品の配布をおこなうと発表しました。事件の全容解明、再発防止策も全くなされていない段階で、騒ぎが大きいと見るや、とにかく金銭的な対策で幕引きをはかりたいという意図がうかがえるかのようなこの施策発表。個人的には、やはり「何事もカネで解決する」という経営姿勢の表れではないのかと感じたものです。

「何事もカネで解決する」のが「100円マック」に代表される価格戦略一辺倒の日本マクドナルド時代の原田流アメリカンスタイル経営であり、そのコストダウンのツケが今回の腐敗肉加工工場からの仕入れをおこなわせてしまったのではなかったのか。そう考えると、新天地ベネッセにおいて果たしてその原田流がうまく機能するのか否か、会見での原田氏の対応を見る限りにおいては、不安な要素の方が圧倒的に多いように思えてならないのです。

最後に原田氏がベネッセのトップに就任した際に、コンサルタントの大前健一氏が彼を評したコメントを転載させていただきます。納得のコメントです。

「進研ゼミなどの教育事業や老人介護事業などを展開しているベネッセは、確固とした企業理念と人間的な温もりが必要な会社だ。それに対して原田氏は、コストダウンや価格戦略を重視するアメリカ型の経営者であり、日本マクドナルド創業者の藤田田氏が亡くなった時に社葬どこ ろか会社として偲ぶ会さえ営まなかった人物だ。そういう合理的思考の経営者がベネッセの適切な舵取りと変革を担うのは極めて難しいだろう」(大前健一氏談週刊ポスト2014年5月2日号)

名門山水破産。「オーディオ御三家」の分かれ道はどこにあったのか

2014-07-17 | 経営
名門オーディオメーカーの山水電気が破産手続開始決定を受けたと報じられました。山水はすでに2012年に民事再生申請をして実質破たん状態にありましたが、結局再建に向けたスポンサー企業が見つからにまま資金繰りに行き詰り事業の終局を迎えたということのようです。

山水と言えば昭和のオーディオ全盛時代には、トリオ、パイオニアと共にオーディオ御三家と呼ばれ絶好調のうちに東証一部上場を果たした戦後生まれの大躍進企業でありました。

その後オーディオブームの後退とデジタル化の波により、オーディオ業界は苦境に陥ります。しかし、トリオはケンウッドとして形を変えながらも生きながらえ、パイオニアは何度もの危機を主力事業の切り替えにより乗り切ってきました。その一方で、山水はあえなく沈没。御三家の明暗を分けたものは何であったのでしょうか。

山水におけるケチの付きはじめは、89年の業績悪化時に英ポリーペックインターナショナルの出資を受けその傘下に入ったことにありました。しかしポリーペックは翌年、突如倒産。経営者による株価操作や株主を無視した利己的な行動が明らかになったのです。

不透明なグループに取り込まれたイメージダウンは如何ともしがたく、91年次に同社に救い手を差し伸べたのは香港のセミテック。しかし同社も99年に倒産。さらに不幸は続き、同じ香港のザ・グランデ・ホールディングズが経営参画するも、11年にグランデは子会社の倒産をきっかけとしてまたもや破綻してしまいます。海外資本頼みによる不幸の連鎖はどこまでも山水を苦しめることになるのです。

一方トリオは、オーディオブームの失速と共にカーオーディオ分野に参入しつつ、大衆向けブランド、ケンウッドによるブランド戦略でなんとか生きながらえる道を模索。その後産業再生法適用を経て、ビクターとの資本統合によりJVCケンウッドとして再スタートし、現在もケンウッドブランドでのオーディオ機器を世に送り出しています。

パイオニアは、バブル崩壊以前にカーオーディオと映像分野に進出。この両分野事業が何度かの同社の経営危機を救ってきたのです。特に、カーオーディオ分野はシェアを伸ばし現在では同社の主力事業に成長しています。また、カーオーディオ分野および映像分野への進出は結果として、ホンダ、シャープ、NTTドコモなどからの資本調達を呼び起こし、パイオニアの事業再編による業績回復に大きな役割を果たしているとも言えるのです。

ちなみに、トリオ、パイオニアがいち早く食指を伸ばしたカーオーディオ業界は、車にとって代わる輸送機器が登場しない限り安定ニーズが見込め、かつ車の買い替えサイクルで需要が発生すると言うおいしい分野でした。山水もバルドのブランドで市場参入こそしたものの、オーディオ性能重視の高級ブランドは一部のマニア以外には受けられることなく、市場から撤退したのでした。

このように御三家の動きを対比してみると、破産の憂き目に会った山水は結局のところ、出だしの苦境時に戦略の再構築よりも実態の見えにくい海外資本に救いを求めたことに、すべての狂いの原点があったのではないかと思えてくるのです。

トリオもパイオニアも、同じような苦境を迎えていながら、その対応策としてまずは事業展開の見直しを最優先し、かつ事業実態があり実態が見える国内企業との業務提携、資本提携を優先して推し進めることで体制の立て直しをはかってきているのです。しかし山水は安易に、資金供給をしてくれる海外資本に救いの手を求め、結果“汚れた体”になることで国内企業からはそっぽを向かれ、民事再生適用後のスポンサーも現れなかったと言えるのではないでしょうか。

山水の社名の由来は創業の精神「山のごとき不動の理念と水の如き潜在の力」だそうですが、同社が求めたものは「山のごとき不動のオーディオメーカーの名声と、水のごとき豊富見えた海外からの資金供給」だったようです。オーディオ御三家の古今物語をみるに、経営危機の状況下におけるマネジメントにこそ、資金調達ありきでない柔軟な発想に基づく長期展望が重要であると改めて思い知らされる思いです。

問題はベネッセよりもジャストシステムにあり、と思われる件

2014-07-11 | 経営
ベネッセコーポレーションから顧客情報760万件が流失した一件、利用者の立場からはベネッセの情報管理はどうなっているのかという怒りの言葉が出るのは当然であり、ベネッセは被害者でありながらもこの点から責めを負うべき立場にあるのは論を待たないところです。

しかしこの事件の概要を知るにつけ、私がもっとも大きな問題ありと感じているのは、被害者であるベネッセよりもむしろその漏えい情報を購入してDMを打っていたジャストシステムの方です。ジャストシステムは、「スマイルゼミの拡販DMに利用する小中学生のリストが欲しい」と武蔵野市の名簿業者に依頼しこの漏えい情報230万件を入手し、実際にDMを実施します。そのことがベネッセの利用者の不審を買い、今回の事件発覚の大きなきっかけになったと言います。

ジャストシステムと言えば、ワープロソフト「一太郎」やかな漢字変換ソフト「ATOK」で知られる東証1部上場企業です。「一太郎」は90年代に一世を風靡したものの、その後はマイクロソフトの「Word」に押される形で苦境に陥り、キーエンスの傘下に入ることで近年は教育分野に事業を広げ業績は急回復していました。その教育分野で特に目覚ましい伸びをみせていたのが、小学生向けタブレット通信教育システム「スマイルゼミ」であり、今回の漏えい個人情報もこの商品の拡販に利用されたのです。

もちろん、法的には「違法に流失した個人情報とは知らずに購入した」のであるなら、ジャストシステム側に違法性はないことにはなりますし、同社はそのようにHP上で公言してもいます。しかし、230万件もの大量の小中学生情報が名簿業者から提示された際に、「この情報に違法性はないのか」と思うのは企業としての常識的な判断であり、少なくとも名簿情報の出所についての合法性の確認をとった上で購入を決めるのは当然のこと。一部上場企業が、もしもそんなコンプライアンス意識もなく行動していたとしたら呆れる他ありません。

もちろん、個人的にはジャストシステムは違法性のある名簿情報と分かった上で購入していたと思っています。もっと言えば、ベネッセの利用者の顧客情報であるという情報を得ていたからこそ、この230万件もの名簿情報を多額のコストを払ってでも購入したのではないかという確信犯ですらないのかと思えています。だいたいが、仮に合法的なやり方であったとしても、個人情報保護法下で名簿業者から大量の個人情報を購入してそれを元にDMをうつなどというのは上場企業のあるべき経営モラルから見ていかがなものか、と思えてしまうのですが、いかがでしょう。

いずれにしましても、ジャストシステムは早急に記者会見を開いて、疑惑に対してそのいきさつの詳細等を明らかにする説明責任があると考えます。仮に本当に情報の出所について知らなかったとしても、ライバル企業の個人情報御使ってDMを実施していたことは曲げようのない事実であり、HP上でひと言のお詫びもなく「うちへの疑惑はお門違い」的なコメントだけで済まそうと言うのは、危機管理広報としても完全に間違った判断であると断言できます。

ジャストシステムは、株価が昨日ストップ安を付けたと言う市場の反応を重く受け止めて、この一件は真摯な対応をとらなければ企業の存続すら危うくする事態であると一刻も早く気がつくべきでしょう。

ミッションを忘れた企業はブラックのはじまり~JーCASTさん拙連載更新されました

2014-07-10 | 経営
JーCASTさん拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました。ビジョンレス企業はまず、それに先立つ自社のミッションの明確化と共有の重要性を再確認して欲しいと思います。数字ばかりで人を縛ったりや自分勝手な金もうけに走る企業は、たいていミッションが置き去りにされているのです。

こちらからどうぞ。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/07/09209871.html

日本サッカー協会が監督選びより前にすべきこと~AllAboutさん拙担当コーナー更新されました

2014-07-09 | 経営
AllAboutさん、拙担当コーナー「組織マネジメントガイド」更新されました。後任監督選びの前にすべきことがあると、最近一部で言われる日本サッカー協会。この点を、組織マネジメントの観点からも検証してみました。

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/444677/