日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「反則すれすれ」は企業消滅への第一歩~J‐CASTさん拙連載更新されました

2014-05-28 | 経営
J-CASTさん拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました。私の周囲では「反則すれすれで戦う」社長が後を絶たないのですが、早晩悲しい結果が待っています。業績不振→反則すれすれ行為→反則あたり前ブラック化→会社消滅。もしそんな流れにあるのなら、一社でも多くを引き戻してあげたいと思うことしきりです。

こちらからどうぞ。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/05/28205939.html

ポーターの基本戦略で紐解くサムスンVSシャープの戦い~AllAbout拙担当コーナー更新されました

2014-05-25 | 経営
AllAboutさん拙担当コーナー「組織マネジメント・ガイド」更新されました。組織の競争戦略におけるMポーター博士提唱の基本モデルを使って、激しい競争を繰り広げている家電業界におけるサムスン、シャープの戦いを解説いたしました。

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/442986/

ソニーは一刻も早くテレビを捨て、金融業として再生を目指すべきと思う件

2014-05-23 | 経営
ソニーは昨日、今年度の企業経営方針説明会を開きました。三度にわたる業績の下方修正と大幅な赤字。出口の見えないリストラ策での場つなぎ。絵空事が続くエレキ部門黒字化計画。アベノミクス効果による好決算に湧く我が国の大企業群をよそに、ソニーの現状は過去の栄光を捨て思い切った大手術なくして根本的再生は不可能であると思わされるものであると、認識を新たにさせられる内容でした。
◆日経新聞 http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASFL220RN_22052014000000

昨日の説明会に関し報道された方針内容を見るに、同社の現状を鑑みれば、その中身はまだまだ中途半端なものであると感じさせられます。基本は、エンタメ、金融部門を成長の核に位置づけ、エレキ部門の今年度黒字化をめざすという指針。この程度の物言いは、エンタメ、金融部門の収益に頼っている現状を考えれば至極当たり前のものであり、これまで何年も言い続けながらリストラの瞬間風速的黒字を除いて実現されない「テレビ事業の再建、エレキ部門の黒字化」に、これと言った策もなく今期赤字予想を臆面もなくしながら、4Kテレビの奇跡を待って未だ見切りをつけられないあきらめの悪さに、「先行き今だ見えず」を感じざるを得ないのです。

井出時代以降の苦境に陥ってからのソニーに何を見るかと言えば、文系的な手法でイメージ戦略を繰り返し身の丈をはるかに超えた背伸びを続け「世界のソニー」を標榜したことが、結局はかえって町工場時代を引きずる中小企業体質が抜けていないことを露呈させ、その代表的現象である経営の私物化が今も続いているということに尽きるのです。文系経営者による技術系企業の私物化が三代続いたことで、「技術のソニー」はもはや再建が難しいほどにまでガタガタに崩されてしまいました。結果残ったものは、エンタメと金融が支える文科系企業への変貌であったわけです。

技術的な詳しいことは専門の方々にお譲りしますが、4Kテレビが本当にエレキ部門再建の切り札になるのでしょうか。いや、もっと言えば、4Kテレビは家電市場で近い将来本当に消費者に求められる商品なのでしょうか。過去の栄光にすがって、苦し紛れに4Kテレビを軸に据えた再建計画を立てているのなら、もはや期限を切って見切りをつけるべき段階に来ているのではないかと思うのです。

すなわち、「今年度、テレビ事業の黒字化が出来ないなら撤退する」という、日産リバイバルプラン時にゴーン氏が見せたコミットメント経営、すなわちまずは組織の執念を結集させダメな時には見切りをつけるというあるべきトップの決断力こそが今のソニーに欠けているではないかと。あるいは、本気で「技術のソニー」を蘇らせようとするのなら、エレキ部門を先導できる専門家にトップの座を譲ることも必要ではないかと思うのです。結局、今回の説明会でもトップの本気度が感じられない最大の理由は、そんなところにあるのです。

ソニーが実質出井院政から抜け出せない文系経営者による経営私物化の下で経営を続けていくのであれば、残された道は金融業への転換でしょう。すべての優秀な人材を金融業に振り分け、日本の金融業界に一石を投じるような全く新しい金融企業を作り上げる、それくらいの気概を持ってソニーの第二創業に着手する。銀行&保険業、にこれまでに蓄積された同社のIT技術を絡め、すべての経営資源をそこに集中させるなら金融本来のストックビジネスの土台の上に新たなフロービジネスを次々構築して金融の常識を打ち破るような全く新しいソニーが生まれるのではないかと思うのです。金融界の技術革新はまだまだ利便性向上や効率性重視にとどまっており、本当の意味での技術革新はこれからなのですから。

なぜエンタメでなく金融なのかと言えば、エンタメはどこまでいっても結局はソフトが勝負を決める世界で、自社の力量云々以上に社運はソフトの作り手に頼らざるを得ない“あなた任せ事業”であり、ソニー本来の企業精神を活かし切るには決してふさわしい部門であるとは思えないからなのです。金融は違います。根底はストックビジネスではありますが、蓄積された技術力を新たな形で活かしストックの積み上げと新たなフロー収益の創造は、まさしく「技術のソニー」復権にふさわしいフィールドであると思うのです。

コアコンピタンスを最大限に活かす事業ドメインの選定は、企業戦略を考える上で基本中の基本であるはずです。説明会報道における現状のソニーの苦境と技術的無策ぶりを見るに、テレビ事業の時限性ある見切り対応とエレキ部門の縮小ならびにそれを受けた明確な金融業事業ドメイン化へのシフトを、真剣に検討することも必要な状況にあると切に感じされられた次第です。

人手不足でも目先の人員確保を焦るな!~拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました

2014-05-21 | 経営
J-CASTさん拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました。
景気回復局面で、「人出流出→職場ブラック化→さらなる人手不足」の悪循環が叫ばれる飲食業界。目先の穴埋めに奔走するのはかえって逆効果という、ある社長の成功談に裏打ちされた興味深いお話です。

こちらからどうぞ。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/05/21205230.html

ポール全公演中止に思う、ネット・オークション規制の必要性

2014-05-20 | ニュース雑感
今入ったニュース。ポール・マッカートニーの全来日公演が、本人の体調不良により中止になったそうです。理由がアーティストの健康上の問題では、チケットを購入して公演を楽しみにしていた皆さまにはお気の毒としか言いようがないのですが、さらに泣くに泣けないのはネット・オークションなどでプレミア・チケットを買った人たちでしょう。

買った人がお気の毒か否かは別議論に譲るところですが、大損になることは間違いなし。ちょっと前にヤフオクを覗いていた感じでは、国立競技場のアリーナ前方席17,500円のS席が普通に50,000円以上で取引されていました。仮に落札価格50,000円として、中止の場合の払い戻しは当然定価ですから1枚あたり32,500円の損失となります。ペアで購入していたなら65,000円の損失です。有価証券じゃなから塩漬けしても紙切れになるだけですしね。当事者が気の毒か否かではなくこういうことがまかり通る現実は、ネット・オークションでのプレミア・チケット売買そのものに問題があるような気がして参ります。

現実はこうです。プレミア・チケットを売るダフ屋からチケットを購入するのは違法で、ネット・オークションでプレミア・チケットを買っても違法ではありません。ダフ屋からチケット購入は暴力団への資金供給になるので、暴対法違反になるのでこれは完全アウト。ネット・オークションはどうかと言うと、相手が一般人であるなら買う側が法令違反に問われる心配は一切ありません。しかし、実は売る側には法令違反の懸念が存在しているのです。

どういうことかと言うと、販売枚数や個数に限りのある商品を転売目的で購入することは違法であるという考え方です。法律的には独禁法違反的な考え方が根底を支えているのでしょうが、極端な例をあげれば、チケット配給会社が一旦すべてのチケットを関連の会社に販売してその会社が一定のプレミアを乗せてチケットを販売するなら、定価は有名無実化して善意の第三者であるチケット購入者は不当に高いチケットを買わされることになるので、それはいかんと。

この「販売枚数や個数に限りのある商品を転売目的で購入する行為」は具体的には条例違反で、国立競技場のチケットの場合、東京都の迷惑防止条例がそれにあたるようです。そんなわけで、個人であろうとも転売目的でチケットを購入する行為は高く売ろうが売るまいが、その時点で違法になり御用なわけなのです。実際に、ネット・オークションにおいて明らかな転売目的でのチケット販売と思われる個人や団体は、頻繁に摘発されてもいるそうです。ご存じない方、転売目的で複数のチケットを購入して手が後ろに回らないようご注意ください。

この条例を踏まえて、ネット・オークションのチケット販売は本来何のために利用されるべきなのかと考えてみると、純粋に「自分が見に行くつもりで買ったけれども、所用で行けなくなった」という人向けの救済の場としての利用に限定されるのが本筋ということになるのではないでしょうか。であるなら、定価以上の価格でチケットを買ってもらおうというのは、そもそもおかしい訳でして、「買い手がつけば御の字、定価で買ってもらうなんて奇跡」ぐらいの考えで利用するのが本来のネット・オークションにおける個人チケット売買のあるべき姿勢なのではないでしょうか。結論としては、ネット・オークションでの定価を超える金額でのチケット売買は合理的な理由が存在せず不要。悪弊を考慮すれば禁止すべき、ということになるのです。

当然この措置は、迷惑防止条例違反を起こさせないとうことが名目上の目的にはなりますが、ネット・オークションでの定価を超える金額でのチケット売買の禁止には、利用者にとって付随的にもっと大きなメリットがあると考えます。それはチケット高騰化の波を抑えるという効果です。昨今、外タレを中心とした公演チケットはデフレかつ円高だった時代も含めて高騰の一途をたどっています。例えばイーグルスは04年S席9,800円が11年は12,000円、ポール・マッカートニーは02年のS席チケット代14,000円が17,500円と、軒並み20~25%アップなのです。

チケット高騰の理由は何か。ネット・オークションでのプレミア・チケットの落札額高騰が呼び屋さんのチケット価格設定に影響を与えていることは間違いありません。すなわち、人気アーティストのチケットに関しては、個人の“投資家”が転売目的で人気チケットを購入することにより大量のプレミア・チケットがネット・オークション上に発生することになり、それが最終的には他の人気アーティストのチケット定価設定に影響を及ぼしているのです。この悪循環を断つには、ネット・オークションにおけるの定価を超える金額でのチケット売買の禁止以外にありません。

ネット・オークションにおける定価を超える金額でのチケット売買の禁止は、本来の健全なチケット流通と価格設定を守る上からは、誰も困る人がいないどころかむしろそうあるべき流れであるのです。ネット・オークション管理会社は早急にルール変更をすべきであると、今回のポール・マッカートニーの公演中止騒動から考えさせられた次第です。

メガバンク最高益?東電破綻処理は「今でしょ!」

2014-05-16 | ニュース雑感
1~3月のGDPが年率5.9%増、トヨタは6期ぶりの最高益、3メガバンクもそろって最高益更新、と景気の良い話が連日報じられています。その一方で、先の見えない福島第一原発処理と原発再稼働の可否問題。漫画「美味しんぼ」の一件を見るにつけても、景気回復報道を援軍に原発問題の見通しづけをお座なりにしたまま集団的自衛権問題に躍起になる首相の姿には、疑問符を感じざるを得ません。

私は当ブログで過去に何度も申し上げてきていますが、福島第一原発処理と原発再稼働の可否問題の道筋だては我が国における政治的最優先課題であり、この問題の道筋だてには我が国の長期的なエネルギー政策の策定が何よりも必要であると考えています。そしてそのためにまず何をなすべきかと考えるなら、東京電力の破綻処理によるゼロベース思考化が不可欠なのです。

今敢えてまた申し上げます。政府は一刻も早く東京電力を即刻破綻処理し、長期エネルギー政策の基本をゼロベースから立ち上げ、原発のあり様をどのようにしていくのかをまず明確化するべきであると。原発被災地を巡る様々な問題は、長期エネルギー政策不在の出口が見えない閉そく感に由来しているといっても過言ではないのです。まずは先を見通すための基本となる考え方が存在しなければ、国のどんな言い訳や慰めも空虚なモノに聞こえてしまうのです。

なぜ今このタイミングで東電の破綻処理なのかと言えば、冒頭に記した日本の主要産業の業績回復が数字の上で明確化されてきているからです。特に主要大手企業やメガバンクは、東京電力の大株主あるいは取引先銀行であり、これまで政府との政治的癒着関係に支えられて東電問題の株主責任および貸し手責任を免れてきているのです。言い方を変えれば、政府と大企業、メガバンクとの癒着関係があったが故に、東電は破綻処理を免れ我が国の長期エネルギー政策のゼロベースからの再構築はなされずに、原発問題は既得権の闇の中で放置されて来たのです。

メガバンクが東電の株主責任、貸し手責任を負うことなく過去最高益を計上しているなどと言うのは、電気料金値上げの形で利用者負担を強いられている者の一人として、絶対に許しがたいことであります。その最高益は企業利益としてステークホルダーで山分けするのでなく、東電破綻処理資金として貸金の損金処理に使われるべきではないのかと。私は元金融機関勤務の立場からも、原発問題が何ひとつ解決を見せぬ現状を尻目に貸し手責任を免れたメガバンクが史上最高益を貪っているという事実を、本当にいたたまれない気持ちで受け止めています。

東電の破たん処理は問題なくできます。この問題が取り上げられるたびに多くの有識者の皆さんが言っているように、飛行機を従来通り飛ばしながら再生処理を実現した日航方式で破たん処理をおこなえばよいのです。電気は止まることはありません。一部で懸念される被災者の保護は、破たん処理とセットで保護立法をおこない、破たん再生スキームの中で国が引き受けることで問題なくすすめることができます。何よりメリットは、約4.5兆円ある銀行債務が破綻処理されることで、政府出資の1兆円と差し引きしても3.5兆円は国民負担および利用者負担が軽減されるのです。今こそ金融機関に貸し手責任を全うさせ、景気浮揚による過去最高益を国民のために使うべきではないのでしょうか。円安メリットで利益をかさ上げした東電大株主企業もまた同じです。破綻処理による株主責任全うで、アベノバブル利益は国民に還元すべきなのです。

現在の料金値上げ頼みの利用者負担による東電延命策で、一番の被害を被っているのは中小零細企業です。景気回復の実感が大企業にとどまり、製造を中心とした中小企業に景況回復感が浸透しない大きな理由の一つに電力コストの高止まり問題があるのです。つまり、東電破綻処理による電力の一層の自由化、低価格化は中小企業を元気づける最大の武器にもなるのです。アベノミクスの成長戦略の成功に向けては、我が国経済の根底を支える中小企業の活性化が不可欠です。東電の破綻処理はアベノミクス推進の観点からも、重要なカギを握っているのです。

原発問題、景気問題にからむすべての元凶は東京電力が今の形のままで、経営責任、株主責任、貸し手責任を負わせることなく生きながらえていることにあります。東電は破綻処理により企業文化を根本から変え例えば分割再生することで、今までのような大企業優先ではなく一般利用者にもメリットを供与できる流れが形成できるでしょう。そして新たな電力供給体制のあり様を含めて、長期的な国のエネルギー政策を早期に構築し原発処理の呪縛から国民経済を解き放つべき時に来ているのではないでしょうか。

まずは東電破綻処理。皆さん、原発問題は実はここが1丁目1番地であること、東電問題の責任をとらずにのうのうと利益を貪っている連中が山ほどいることを忘れてはなりません。アベノバブル効果が続いている今の間に、一刻も早い決断に向け世論の盛り上がりに期待します。

感謝の気持ちを持たない社長がブラックと呼ばれる~拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました

2014-05-14 | 経営
J-CASTさん拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました。以前取り上げた魔法の言葉を持つ未亡人社長の続編。「感謝の気持ちを持たない社長がブラックと呼ばれる」は、納得です。

こちらからどうぞ。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/05/14204473.html

中畑監督と理研に共通の“やってはいけない”

2014-05-13 | 経営
先週の話ですが、プロ野球DeNA中村紀洋選手がコーチに自己の職務環境に関する希望を伝えた件で、中畑監督から「懲罰的な部分はある」とのコメント付きで一方的に登録抹消処分を受けるという事件があったようです。

もちろんこの事件、「自分が打席に入った時にサインを出さないで欲しい」という至って自分勝手な要望を出した中村選手側に非があることは確実ですが、問題は処分に至る流れです。中村選手はコーチに相談→コーチは監督に報告→監督が登録抹消を指示というステップでの処分決定において、処分決定の判断を下した中畑監督はなぜ決定前に中村選手と直接話をしなかったのか、という疑問が頭をもたげます。

コーチの伝達には当然コーチの主観が入るでしょうし、人づてに要望を聞くことは当事者の真意を十分にくみ取りきれていない可能性も否定できません。大企業等で各部門長に権限移譲がなされている状況であるのならともかく、プロ野球球団管理における選手の現場人事権は監督が握っているはずです。ならば、現場責任者として降格処分の決定をおこなう前に、まずは監督自身が本人からの直接の事情聴取をするのが筋だと思うのです。なぜ、直接コミュニケーションをとらないのか。中小企業の経営者にもよく見られる事例ですが、組織管理おけるこの手のやり方は百害あって一利なしです。

同じような話がもうひとつ先週ありました。当ブログでも何度も取り上げているSTAP細胞に関する理研の対応です。理研は先週、改ざん疑惑についての最終結論として小保方さんの異議申し立てを退け、「再調査せず」という姿勢を公表しました。これもどうなのか。結論そのものに対する疑問ではありません。異議申し立てをして反論会見まで開いているのですから、再度当の本人を呼んで理研の小保方さんに関する人事権者と調査委員会が膝を詰めて言い分をしっかりと聞き、常識的には再調査しないのならしないで本人にその根拠を明確に提示し論理的な筋道の立ったやり方で納得させるという努力はあってしかるべきなのではないかと思えるのです。

既に小保方さんが理研を訴えていると言うのなら、今回のような直接のコミュニケーションをとらないやり方も致し方ないということになりますが、弁護士こそ入ってはいるものの訴訟云々はまだマスコミの憶測に過ぎない段階です。弁護士を入れなくてはならないほどに、理研側のコミュニケーション拒否姿勢が強硬であり取り付くシマがないのだと、私には映ります。もちろん、これは小保方さん擁護ではなくあくまで組織管理と組織コミュニケーションのあり方の観点から申し上げております。

では、上記2つの事象において共通の、コミュニケーション欠如下における一方的な結論付けはなぜ起きたのか。管理意識の決定的欠如と言う結論が正論ですが、一つ考えられるのは、前者における中畑監督、後者における理研と言う会社組織が、それぞれ中村選手、小保方さんを辞めさせたいという明確な意図をもってあえて掟破りのコミュニケーション欠如のやり方を取ったのではないかという推論です。ただこの場合でも、辞めさせたいなら辞めさせたいと、ハッキリ本人に伝えるべきではあるわけです。

コミュニケーション不足に納得がいかないから、中村選手はFBでブー垂れて問題が大きくなりチームの印象が悪くなるわけで、理研は理研でコミュニケーション不足で一方的なことをやるから、訴訟とかそういう余計な厄介事が舞い込む局面に立たされそうな訳です。つまりは、どう考えてもコミュニケーション不足は揉め事を大ごとにするだけで一利なしであるというのが、この2つの件から共通して管理の立場にある者が学ぶべき事であると思います。

赤福「お家騒動」と経営の良い私物化、悪い私物化

2014-05-07 | 経営
GWをはさんでブログをしばらくさぼっておりましたが再開します。GW前に、個人的に気になるニュースがありました。伊勢の老舗和菓子店「赤福」でお家騒動があったと。なんでも、二代目社長でありで実の父である実質オーナーが、息子の三代目社長を解任し自らの妻を後任に据えたというのです。穏やかじゃありませんね。

非上場企業なので、表に出ている情報は極めて少ないのですが、日経新聞のページから知り得る報道レベルの情報を見てみます。

=以下引用=
老舗和菓子「赤福」を製造販売する赤福(三重県伊勢市)の浜田典保社長(51)が23日付で代表権のない会長となり、母親の浜田勝子代表取締役 (77)が新社長に就任していたことが24日明らかになった。関係者によると、元社長で父親の益嗣(ますたね)氏(76)と典保氏の間で経営方針を巡って 対立があり、事実上の解任となったという。
同社は23日に臨時株主総会を開き、その後の取締役会で社長交代を決めた。赤福は1707年に創業した非上場企業。2007年10月、消費期限の偽装などが発覚し、食品衛生法違反で約3カ月間、営業禁止処分を受けた。
赤福の発行済み株式は浜田一族が大株主の浜田総業が84%を保有。残りは益嗣氏と典保氏が二分している。典保氏は2代目社長の益嗣氏から05年に社長を譲り受け、偽装問題発覚後、コンプライアンス(法令順守)を徹底し、作り置きできない生産ラインを導入する など社内改革を進めた。業績は回復し、08年9月期に64億円だった売上高は13年9月期には92億円まで増えていた。
益嗣氏は07年の偽装問題発覚後、会長を辞任していた。関係者によると、家業型の経営から近代的な経営転換を進める典保氏との間で対立が深まっていたという。
(日経新聞HP4月24日付)http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ24010_U4A420C1EB2000/

要するに会社経営を巡る親子喧嘩なわけです。こういった騒動は、世のオーナー企業共通の課題解決に向けたヒントとして十分なケーススタディとなるもので、なにより正確な詳細を知りたいところであります。とりあえず現時点で分かる範囲の、この一件から考えうるオーナー企業経営のヒントを探ってみましょう。

なぜ親子対立は起きたのか、です。
報道文面からは、「家業型の経営から近代的な経営転換を進める」ご子息のやり方が気に入らなかったということのようです。この記述をまずは単純に解釈すると、ご子息の経営の近代化によってオーナーの既得権が取り上げられることを嫌った先代であり父であるお年寄りのわがままが噴出したのだろうというものです。もしそうなら、赤福の製造日改ざん事件での大きなダメージからV字回復を果たしたご子息の手腕には定評のあるところであり、これにより急激に求心力を失いつつあった先代が、さらに突き進まんとする経営近代化でオーナーとしての既得権までも奪われかねないとの危機感から出た「悪あがき」とも言えそうです。これは、言ってみればオーナー悪者説です。

では次に逆の解釈、社長悪者説を考えてみます。
製造日改ざん事件により会長職を辞したオーナーの後を受け、社長は実質的な経営権を手中にし、イメージアップを狙って経営の近代化をすすめます。その中で、デパートなどへの積極的な出店を手始めに、さらなるビジネス拡大、例えば赤福ブランドと大手菓子メーカーとのタイアップによる大衆向け商品の企画や、全国のショッピングモールへの販売網の爆発的な拡大などの想定の下、株式公開による資金調達を計画。しかしながら、一方で堅実経営の老舗銘菓「赤福」のイメージは損なわれることになり、お得意先、地元支持者や従業員から行き過ぎた近代化、巨大資本的事業展開に事業リスクの急増と老舗崩壊の危機感を訴える声が噴出し、先代を旗頭に担ぎあげてのクーデター決行に至った、というシナリオです。

どちらのシナリオが今回の事実に近しいのかは現時点では全く分かりませんが、経験から申し上げれば、オーナー企業における今回のような“世代戻り”のお家騒動は、大抵のこの2パターンのどちらかなのです。いずれのケースもオーナー一族の誤った私物化経営がイザコザの原因であることには違いありません。前者は先代による企業私物化欲の弊害ですが、一見私物化と無縁に見える後者も実は未熟経営者による指揮権私物化による弊害であると言うことが出来るのです。

オーナー企業には多かれ少なかれ私物化が存在するのは当たり前であり、必ずしもそのことが非難には当たらないということもまた真理なのです。すなわち、オーナー一族による上手な私物化はオーナー企業の生命線でもあり、バランスを踏まえない行き過ぎた私物化やタイミングを心得ない私物化は、オーナー企業の命取りにもなり得るのです。

赤福においても、後者であるなら悪い私物化を良い私物化で打ち消すケーススタディとなり得ますが、前者であるなら良い私物化を悪い私物化が駆逐する悪しき事例となってしまうでしょう。今回果たしてどちらのケースであるのか、とりあえず続報を待ちたいと思います。