日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「ドコモ一人負けの背景に“電電公社体質”」記事に思うこと

2014-11-28 | 経営
ちょっと前の記事ですが、気になっていながら書きそびれていたものがあるので、月内に取り上げておきます。NTTドコモ(以下ドコモ)が15年3月期の連結営業利益見通しを発表。前年比23%減の6800億円と過去15年で最も低い水準になり、大手通信キャリア3社中でも最低に位置することが確実となったという、確か11月1日(WEBは31日付)の日経新聞の記事です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO79175530R01C14A1TJ2000/

昨年同時期に、他社2社に後れをとっていたiPhoneの取り扱いをスタートし一気の巻き返しをはかったハズの同社が、なぜこれほどまでに苦戦をしいられているのか。その理由をこの記事では「電電公社体質」にあると帰結していました。

「電電公社体質」に関して記事中に詳しい説明はなく、要は官僚体質ということをいいたかったのでしょう。その根拠と思しき事象はいくつか取り上げられてはいますが、具体手的な根拠の提示はありませんでした。私が思ったのは、読んだ人はなぜ「電電公社体質」がドコモ苦戦の理由であるのか、何をもって「電電公社体質」と断じているのか、果たして理解できたのだろうかと。そこで、この記事に関する私なりの解釈を一応書いておくことにします。

ドコモは、ソフトバンク・モバイル(以下ソフトバンク)が携帯事業に参入した06年時点で55%の圧倒的な業界シェアをほこっていたものが、現在は45%。トップシェアこそ守ってはいるものの、8年で10ポイントというシェアダウンは、ある意味驚異的なシェアの減らし方であったとも言えるでしょう。この間、ドコモが減らしたシェアを逆にまんま増やしたのがソフトバンクです。その原動力は08年に単独取り扱いをスタートさせたiPhoneでした。ソフトバンクは日本で特に人気が高いiPhoneを協力な武器として、他キャリア、特にドコモからの乗り換え客を続々奪っていったのでした。

ドコモにとって、iPhone取り扱いスタートの遅れは大きな足かせになりました。そして決定的だったのは、11年にソフトバンクから遅れること3年、auもiPhoneの取り扱いをスタートさせドコモだけがiPhone非取り扱い通信キャリアとなってしまったことでした。これ以降、ドコモのスマホユーザーは草刈り場状態となり、一層のシェア減らしへと向かったのです。ドコモがiPhoneの取り扱いを開始したのは、auからさらに遅れること2年の13年秋の事でした。ドコモはなぜ、ソフトバンクから5年、auからも2年の遅れを取ったのか。それは、取り扱いを巡る諸条件で、販売シェア、製品仕様等の面で一向に譲ることのないアップル・コンピュータに対して、どこまでも自社の条件を貫いたからだと言われています。

日経新聞が言う「電電公社体質」は、まずはなによりこれを指し示しているのかなと。iPhone導入をめぐるドコモの姿勢には、自社の姿勢を簡単には曲げない融通のきかない企業体質が見て取れる。これこそが記事にある「環境変化に機敏に対応できない」体質を体現してているという理解で間違いないでしょう。

記事ではiPhone取り扱い開始前のドコモの「ツートップ戦略」にも言及しています。昨年夏、ソフトバンク、auからのiPhoneの攻勢に苦しむドコモが苦肉の策とも言える販売戦略を打ち出します。特定の2機種に絞って価格優遇をするという「ツートップ戦略」。しかしこの戦略、結果的には一層乗り換えを促進しますますドコモは苦しい立場に追い込まれることになったのです。この戦略が失敗した理由は、民間の新聞社系調査機関によるアンケート調査に見ることができます。ツートップ戦略を「悪い」とする人は「良い」とする人を上回っており、その理由として「自分が買いたい機種が安く買えない」と言う意見が多数を占めたのです。

「ツートップ戦略」は、ユーザーのニーズはさて置いて、自社が売りたい機種を「イチオシ」として安くする戦略。日経新聞が言いたいのは、ここにもドコモの自己中心的な企業風土が見えるということかなと。「電電公社体質」はここにも見て取れるということなのでしょう。

記事はさらにiPhone取り扱い開始後の新料金体系を戦略ミスとして取り上げ、追い打ちを掛けます。通話の定額制を軸とした新プランは、スマホの無料通話利用者対策と、ヘビーユーザーの通話料実質引き下げによる他キャリアへの流失防止が目的であったはずが、一層収益環境を悪化させユーザーの流出を招いたと。au、ソフトバンクも同様のプランで追随しましたが、ドコモの戦略上一番の違いは、旧料金プランの新規受け付けを中止したこと。ヘビーユーザーの通話料収入が減る一方で、ライトユーザーはかえって月額通信料が高くなるケースもあり、他社への流出および他社からの乗り換え阻害要因になっていると指摘しています。

これもまたドコモの組織風土に原因があると言う理由で取り上げたのでしょう。つまり、ドコモ・ユーザーの平均月間通話料が約1200円である中で、使い放題とは言え定額2700円への切り替えで収益底上げをはかろうと言うのは、やはり顧客本位ではなく企業本位と言わざるを得ないということ。新聞記事として行き過ぎたドコモ批判を恐れたのか言葉足らずですが、対比として定額制に追随したソフトバンク、auは共に旧プランを残しつつの定額制導入(ソフトバンクは旧プラン受付は期限付きながら、ニーズを勘案して現在延長中)との記載もあり、言いたいことは十分理解できます。

日経新聞がドコモを「電電公社体質」と断言する理由は、マーケティング用語にある送り手本位のプロダクトアウトと受け手本位のマーケットインという考え方がその根拠にあるように思われます。世間一般は、高度成長期終焉以降、プロダクトアウトからマーケットインへと対消費者姿勢を変えてきたのですが、iPhone戦略、ツートップ戦略、通話定額制新プラン、どれをとってみてもドコモの組織風土に厳然として流れるプロダクトアウト臭を感じずにはいられない、すなわち旧態然とした官僚的企業姿勢=「電電公社体質」そのものなのだと。記事としてはこれに加えて、経費は削減どころか増えていると余計な尾ひまで付けて報じられた。それが私なりの解釈です

実はこの記事には、続きがありました。1週間後の日経新聞に、ドコモ佐藤CFOの“言い訳インタビュー”記事が掲載されているのです。「業績は今年が底」「新料金体系は間違っていない」「経費削減は積極的にすすめている」、等々。この記事が掲載された真の経緯は知る由もありませんが、日経新聞がドコモ側から、今時何十年も前の国営前身企業を引き合いに出して「電電公社体質」とは何事かと、なにがしかの抗議を受けたであろうことは想像に難くありません。

埋め合わせ記事の掲載を要求したのか、日経側から申し出たのか、それは分かりませんがタイミング内容共にあまりに不自然な掲載で、ハッキリ言ってカッコ悪いですこの記事。日経新聞の「電電公社体質」という表現が良いか否かは別としても、先に私なりの解釈を書かせていただいたように、ドコモが顧客本位とはおよそ言い難い、官僚的で自己中心姿勢ととられても致し方ないやり方を続けてきたことは厳然たる事実であると思います。

携帯電話利用者の立場から第三者的に見て報道の事実を認めざるを得ない中で、このCFOの“言い訳インタビュー”は企業広報を長く経験した目から見れば、カッコ悪さの極みじゃないかと個人的には思うのです。あくまで、掲載の経緯は分かりませんが。まあそれはどうでもよくて、日本を代表する大企業が社会公器である新聞に書かれた以上、「世間的にそう思われても仕方のない認識があるのだ」と素直に認め、ならば経営姿勢や対顧客態度で改善を示して行こうじゃないか、記事を自社に対する叱咤激励として受け止めるぐらい鷹揚な姿勢が欲しいものです。こういう埋め合わせ記事が出ることそのものが、いまだ「電電公社体質」は認めざるを得ない事実ですと言っているような気がして、実に残念です。

「仕掛ける力」と「仕組む力」~J-CASTさん拙連載更新されました

2014-11-26 | 経営
J-CASTさん拙連載「社長のお悩み相談室」更新されました。中小企業経営者がたいてい持っている「仕掛ける力」。持っていないと会社を自分サイズより大きくできない「仕組む力」。前者は会社存続に必須、後者は会社発展に必須です。

こちらからどうぞ。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/11/26221779.html

家電業界に見るプロダクトアウトとマーケットインの変遷~AllAboutさん拙担当コーナー更新されました

2014-11-25 | 経営
AllAboutさん拙担当コーナー「組織マネジメントガイド」更新されました。企業姿勢にも影響を与えるマーケティング思想プロダクトアウトとマーケットインについて、ソニーを中心とした家電業界の変遷を例にとって解説します。

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/449127/

安倍首相は、投票率が史上最低を更新したら速やかに退陣すべきと思う件

2014-11-20 | ニュース雑感
今日は一有権者として書かせていただきます。安倍首相が衆院の解散を宣言しました。消費税の再増税を1年半延期して景気条項は削除する、解散はアベノミクスの是非を国民に問いたい、与党で衆院の過半数確保が勝敗ラインである、負けた場合は首相を辞任すると。

随分と自分勝手な論理で勝手な判断を並べたものだと思いました。何があるかも分からない経済状況を無視して2年半先の景気を勘案しないとは全くのナンセンスですし、さらにアベノミクスの是非を問い与党で衆院の過半数確保が勝敗ラインであるって、アベノミクスを基準にして野党と勝負すると言っているわけで、なんともしっくりこないわけです。

アベノミクスの是非を問うと言われてその勝敗を与野党の獲得議席数で勝敗を決めるとなれば、アベノミクスに反対と思う人は野党に投票しないといけなくなるじゃないですか。しかし、理論的にも政策的にも与党にまともに対抗できる野党が現在存在していないのですから、野党に入れたくても入れようがないということになるわけです。

言ってみれば、グーとチョキしか出せない相手とジャンケン勝負をするようなものですから、普通に戦えばまず負けない戦であるわけで。インチキじゃんけんで勝ったからと言って、それをもって信任されましたっていうのは論理的に筋が通らない話なのではないかと思うのです。

国民が現時点で今回の解散総選挙に求めている勝敗基準は、アベノミクスの是非ではないハズです。むしろ、現政権の私利、党利優先の政権擁護の観点から、あまりに唐突なタイミングで解散総選挙をおこなう総理大臣に対し、特定秘密保護法案や集団的自衛権の法解釈等々これまでの幾多の勝手運営を象徴するこの解散総選挙が本当に必要なのかという基準で、信任の有無を判断して欲しいと求めているのではないかと思うのです。

だとすれば、信任の有無は与野党の議席数ではかるべきモノではないでしょう。はかるべきものは、安倍首相のやり方にどれだけ国民がシラケているかいないか、その観点で考えるなら投票率こそが安倍総理の一連の勝手行動の信任を諮る最大の基準となるのではないかと思うのです。安倍首相の勝手には腹をすえかねているものの、そうかと言って一票を投じるに値する野党もない。しからば今回は棄権する以外にないか、そんなことを思うシラケた気分の有権者も多いのではないでしょうか。

ちなみに前回2年前の総選挙は、与野党の争点不明確が原因と言われ戦後最低の投票率59.32%を記録しました。今回さらにこれを下回るなら今回が史上最低。昭和の時代には、衆院選の投票率が65%を下回ったことは一度もなかったのです。今の国民のシラケ具合から見るに、私は55%を切るのではないか、いや下手をすると5割を割り込むのではないかという危機感すら覚えています。
★衆院議院選挙投票率推移
http://www.city.kyoto.jp/senkyo/shitteru_senkyo/img/img-01_01.gif

そのぐらい今の安倍政権の勝手ぶりにはシラケムードが漂っているとは思うのです。これは政権を担う総理の責任において大問題です。国政の代議士を選ぶ選挙で投票率が約5割。半数近くの国民が棄権するというのはハッキリ言って異常事態なのですから。そんな選挙を2回も続けていい筈がありません。任期満了で時期を選べない選挙であるならいざ知らず、突然私利私欲の観点から勝手な選挙をおこなうことで、国民の政治に対する関心を一層失わせてしまっているのなら、それこそ政権の責任は重大であると思うのです。

今回の選挙で投票率が史上最低を更新するなら、安倍総理にこそその責任のすべてはあるのです。過去の選挙史において2回続けて投票率が60%を下回ったことは今だかつてありません。私は投票率が今回も60%を割り込んだなら、いや史上最低投票率を更新したならば安倍総理は速やかに国民の政治的関心をシラケさせた責任をとって辞任すべきであると思います。

国民の参政権に関する権利放棄者の数で、政権の良否を判断するのはどうなのかという意見もあるでしょう。しかし、総選挙の投票率が2回続けて史上最低を更新すると言うのは、明らかに現政権の運営に問題ありなのです。突然の解散を国民がどう受け止めているのか、その答えがシラケを証明するものであるなら、特定秘密保護法案や集団的自衛権の憲法解釈をはじめとする総理の民意を無視した勝手政権運営、そして今回の一方的衆院解散を命じ時間とコストの無駄を生じさせたことへのノーの意思表示であると受け止め、速やかに責任を取るべきであると思うのです。

私は、今回総理の選挙公約に最低投票率判断の項目を加えることを、またメディアもその論点で選挙結果を評することを、一有権者として強く望みます。

大義なき解散に感じる組織論的「危険な私物化」

2014-11-13 | ニュース雑感
組織運営において目的と手段に整合性が取れていないなら、手段が間違っているか、あるいは目的がウソのものであるか、でしかないでしょう。

衆議院の解散が突如真実味を帯びて報じられるようになり、あれよあれよと言う間に、既成事実であるかのように世間に喧伝され、12月2日公示、14日投票だなんだという話がごくごく普通の流れであるかのような錯覚に全国民が陥れられようとしています。消費税の再増税が1年半延期されることになりそうだと、それがなぜ衆院解散→総選挙にならなくてはいけないのか。私には理解不能です。

落ち着いて考えましょう。消費税の再増税の目的は何だったのか。財政再建ですよね。それが延期されたとしても、あくまで延期。取りやめならば国民の信を問うと言う流れで納得です。しかし延期は、財政再建という目的が破棄されたことにはならないはずです。目的が不変である中で、なぜ国民の信を問う必要があるのか。目的達成のための手段として衆議院解散はどうみても不必要と思いのです。ちなみに、衆院選を実施すれば800億円からの財政支出になります。

消費税再増税延期決定に際して財政再建を掲げた政権の国民の信を問うことを大義としている現政権ですが、世論にそのような声がないとするなら、現時点を切り出した場合それは単なる国費の無駄遣いです。無駄遣いは言うまでもなく、政再建という目的から最も遠い行動であるということになるのです。

組織は時として、大きな目的の下でおこなわれる行動でありながら、おかしな手段をとることがあります。目的に向けた当初の計画変更という大義の下に、本来の目的からすればそぐわない手段がとられることがあるのです。組織の私物化はそういった目的と手段の不整合という事実から発覚するものであり、目的と手段の不整合が感じられたならば即座にそれを阻止することが、組織運営の私物化に対する自浄作用となるのです。

今回の解散騒動に至る道筋を見るに、再増税の先送りしながらも財政再建姿勢の堅持することが必要、と目的解釈するならば、衆院解散総選挙はこの目的とはなんら整合性が感じられないではないですか。すわわち、衆院解散総選挙は目的遂行のためと見せかけた私物化に他ならない訳なのです。言いかえれば私的目的遂行へのすり替えを、今まさにしようとしている、ということで間違いないのではないでしょうか。

具体的な私的目的は何なのでしょうか。増税先送りで、先送り反対勢力に対する言い訳づくり、その最たるものは財務省と自民党内の反対勢力でしょうか。だとしたら、そんな首相あるいは現政権の私的利益のために、800億円もの税金を使って選挙をするのは大変おかしな事なのではないかと思うわけなのです。

組織運営おいて、周囲が実権者による組織私物化に気がついたら、組織内部の者がそれを指摘し私物化を未然に防ぐ等の力が働いてはじめて、組織に自浄作用があると確認できるのです。今回はどうか。最も身近な立場で自浄役を務めるべきは、政権与党連合内にいる公明党です。公明党の山口代表は自民党の私物化の動きを見るや、「党内に総選挙に向けた体制整備を指示した」と全くの自浄作用ゼロ。自民党と一緒になって私物化を推進し、財政再建よりも少しでも長く政権与党内にいたい、自己の利益追求をしているかの如くです。ハッキリ言って論外です。

ならば同じ国会内で自浄作用を働かせるべき野党はどうか。代表は筆頭野党である民主党の海江田代表。「総選挙をするなら、正面から受けて立つ」と。こちらは、ハッキリ言ってアホかと。野党が「ここで衆院解散総選挙?財政再建策の進展が中断するのこの段階で、無駄金を使った私利目的の選挙は不要」と、本来なら与党の私物化を批判し解散総選挙を阻止するべき立場からモノを言うべきところが、私物化容認ですから。呆れる以外にありません。他の野党もみな推して知るべし。基本は自民圧勝の前回から、若干でも議席が回復できるならと、解散歓迎ムードすら感じられ我々国民には違和感アリアリなのです。

政治の事は専門外ですし、詳しいことはよく分かりません。ただ、組織運営における目的と手段の不整合から察知される権力者の私物化の流れで考えるなら、今回の唐突すぎる解散総選挙騒ぎには、明らかな違和感とよからぬ私物化の臭いがプンプンと漂っていると感じるわけなのです。国民の意を無視した法案を次々と通していく現政権が、遂に選挙まで私物化の手段に利用する様には、この国の行く末にかつてないほど危険な香りを感じずにはいられません。

「横浜BK-東日本BK経営統合」報道に感じる護送船団文化の幻影

2014-11-06 | ニュース雑感
地銀トップの横浜銀行と関東圏を地盤とする第二地銀東日本銀行の、持ち株会社方式による経営統合が日経新聞のスクープで報じられました。一応古巣がらみの話なので、この報道の読み方についての個人的な見解を書いておきます。

まずこの報道を聞いて、金融界を多少なりとも知る人は若干の違和感を覚えたのではないでしょうか。まず、当事者両行の統合メリットがイマイチ見えない点。それと、現時点では正式発表ではないこの報道を受けての両行の対応が妙に落ち着きはらっていること。

「発表はしていないけど、事実ですよ」と言っているのですが、まるで写真誌に熱愛場面を撮られたアイドルが「仲の良いお友達の一人です」と交際を否定するのではなく、「お付き合いさせていただいております。ファンに皆様には温かく見守っていただければと思います」と交際を認めた、みたいな感じです。
横浜銀行
http://www.boy.co.jp/news/oshirase/__icsFiles/afieldfile/2014/11/04/141104.pdf
東日本銀行
http://www.higashi-nipponbank.co.jp/pdf/news_release/20141104_release_02.pdf

M&Aがらみのリークと言うのは、たいてい誰かにリークメリットがあるからされるものです。しかも、M&Aというのは通常超トップシークレットでことが進められ、トップとその周辺のごく少数のみで動くケースがほとんど。それがリークされるというのは、当事者に事前公表メリットがあるか統合話を小耳にはさんだ統合反対派関係者の統合つぶし目的であります。

特に後者は伝統のある企業に多く、リーク報道を受けてOBなんかが騒ごうものなら、事態の収拾はほとんど不可能になるのです。最近の例では、キリンとサントリーの経営統合に関するフライイング報道が思い出されます。スクープが出るや否や途端にガタガタ大騒ぎになって、結局ほどなく統合話は白紙になってしまったのは記憶に新しいところです。

では今回の情報リークの目的は何か。このリークは誰がしたのか、言いかえれば誰にメリットがあるのか、が気になるところです。両行の対応の落ち着きぶりと、正式発表もないまま判を押したような対応の同一性を見るに、リークそのものが当事者にメリットがある状況ではなく、反対派が存在するような状況でもなさそう。となると、メリットのある第三者のリークである可能性が大と言うことになります。

金融庁ですね。金融庁は景気が浮揚を続けている間に、地方人口の減少で経営が苦しくなるであろう地銀の再編を急ぎたいわけで、横浜、東日本の統合は願ってもない打ち上げ花火になるわけです。実は10月1日に、関東圏では東京都民銀行と八千代銀行が系絵統合し東京YTフィナンシャルグループを設立したのですが、この原稿を読んでいる大半の人がその事実すら知らないという線香花火程度のニュースに終わってしまっています。ならば、都民、八千代統合のほとぼりが冷めないこのタイミングで、なんとか地銀統合の流れを世間にそして関係者に強く印象付けしたい、そういう当局の思惑が容易に見て取れるのです。

地銀トップの横浜が、救済目的ではなく近隣地銀との統合に動いたとなれば、金融庁の全国各地の地銀に対する統合に向けた暗黙の圧力は強くなりますし、当局から必要以上ににらまれたくない地銀経営者としては、単独生き残りにこだわりすぎて後々貧乏クジを引くことになりたくない、という思惑を働かすことにもつながり、一気に地銀再編に突き進むという青写真が描けても来るわけなのです。

すなわち、今回の横浜、東日本の統合話自体の仕掛人そのものが金融庁なのではないかということになるわけです。新聞報道にあるように、横浜銀行の寺沢頭取、東日本銀行の石井頭取、共に金融庁の前身である旧大蔵省OBです。以前なら、横浜銀行の頭取は事務次官経験者がその席についていたのですが、寺沢頭取は石井頭取と同じく局長職で官職を終えた身。自身の出身母体である当局の現トップから命が下れば従わざるを得ないのが官僚の世界の掟でもあるわで、当局が自己の手駒として動かしやすい横浜と東日本のトップに命を下して、地銀再編ののろし役を申しつけたと考えるのが正答なのではないでしょうか(なぜ、横浜銀行の現頭取が五代続いた事務次官経験者から格下げになったのかという疑問も、今回の件で解けた気分です)。

経営内容が悪いわけでもないのに、地銀トップ行がいつまでも当局からトップをいただいているのは不思議なことだと若い頃は思ったものですが、当局OBがトップを務めているという事実は同時に金融行政の一翼を陰の部分で担ってもいることでもあるのです。90年代後半の金融危機以降、金融行政は管理の時代から各銀行自己責任の時代に移ったと言われているのですが、結局護送船団方式の時代から脈脈と続く当局の管理文化は何も変わっていないと痛感させられるわけで、個人的には地銀再編とは別の意味でニュースバリューのある報道でありました。

女性の登用は、まず官庁が率先垂範すべきと思う件

2014-11-04 | ニュース雑感
女性登用に関する数値目標の設定・公表を民間企業と国や地方自治体に義務づける女性活躍推進法案が31日、衆院本会議で審議入りしました。

政府はこの法案を、アベノミクス成長戦略の看板政策である「女性の活躍推進」を具体化する重要法案と位置づけており、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%に引きあげる事を盛り込んでもいます。これを具体的におしすすめるため、この法案をその起爆剤としたい考えのようなのですが、個人的にはどうも民間への押し付け的印象が強く、現実味を感じにくいとでも言うのでしょうか。どことなく空虚な感じがしているのです。

私が思うに、国が法案を推し進めながらも国自体の意気込みが感じられないと言う印象が、空虚さを演出しているのではないのかと思うわけです。何といっても、民間以上に女性の登用が進んでいないのが国家公務員だったりするわけでして。国家公務員の管理職(課長職以上)に占める女性の割合は、平成25年度データで実に3%でしかないのです。
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h26/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-01-06.html

省庁別のデータは、平成24年度分が最新のようですが、財務省1.7%、経産省1.6%、国交省に至ってはなんと1.0%。主要官庁ほど登用率が低いと言う結果になっているように思えてならないところです。総職員数に占める女性職員は17.5%もいるわけですから、もう少し何とかならないのかという気分にならざるを得ない数字ではあります。

スイスの研究機関「世界経済フォーラム」が28日に発表した「国際男女格差レポート2014」においても、日本は142カ国中104位と低水準で、主要7カ国中では最下位という体たらくであるわけです。欧米に比べて女性登用が遅れている大きな原因と思しきが、我が国の官僚組織に古くから厳然と根付いている「男尊女卑」の風潮こそにあり、それが民間にも悪影響を及ぼしていると考えるのはあながち間違いではないでしょう。

“お上”が率先して女性の登用をしてこなかったからこそ、主要民間企業もまた“上へならえ”となってしまったわけでして、ここで国を挙げて女性登用に大きく舵を切るのならば、民間と国が同時並行ではなくまずは国が率先して登用率をあげ民間をリードして行く必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。民間に根拠のない目標数字を掲げさせたところで、数字合わせに終始するのは目に見えるようじゃないですか。

とりあえず20年に30%という根拠レスな目標を掲げる前に、3年後を一区切りとして省庁全体で女性活躍プロジェクトを大々的に展開し、結果女性の採用が何%までに上昇し女性の管理職が何%になるのか、まずは手本を示してもらいましょうというのがいいように思っています。

官僚の皆さんはアタマの良い方々ですから、政治が本気となれば数字合わせをしてもお話にならないので、どうしたら女性登用が進むのか彼らも本気で考えて行動をとるのではないでしょうか。そうなれば、結果として官僚組織に根強く残る男尊女卑の考え方が少しでも和らぐのではないかと。で、その実績を持って民間に対して「官庁の女性登用率を手本にしましょう」と迫るなら、官民共に本気モードでの取り組みができるのではないかと思うのです。

政府が長期戦略の目玉としているものに対して、官の率先垂範がなければ民間も本気で取り組むことは期待薄です。結局数合わせに終始して本当の意味での女性登用は進まないのではないかと懸念するわけです。政府が本気取り組む気があるのなら、まずは国自らがその姿勢において範を示す、女性活躍戦略の成否はそこにかかっているのではないかと切に思う次第です。

初心者向けマネジメント本紹介~AllAboutさん拙担当コーナー更新されました

2014-11-04 | 経営
AllAboutさん拙担当コーナー「組織マネジメントガイド」更新されました。編集部からの、「AllAboutらしい、マネジメントを学ぶ際の初心者向け名著紹介」をやって欲しいとのご要望にお応えしました。とりあえず、超有名本5冊の紹介です。今更感満載ですが、本来のガイドページ的情報と言うことで。

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/448455/