日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

今年忘れてはいけない“世紀の愚策”

2011-12-30 | その他あれこれ
今年1年間を振り返って、絶対に忘れてはいけない二度と繰り返してはいけない後世に語り継ぐべき出来事について、今一度書き記しておきたく思います(個人的な“今年の10大ニュース”的に考えれば第1位に相当する“事件”ということです)。

それはもちろん、当然今年最大の出来事であった3.11の東日本大震災関連です。年末の新聞、テレビでのニュース振り返りでは、被災地の悲惨な被害状況を思い出させる映像や福島原発一連の流れとその避難指定区域の皆さんの様子が繰り返し放映されています。しかし私は、それらと同様にあの「計画停電」も決して忘れてはいけない、後世に語り継ぎ同じ過ちを繰り返してはいけない世紀の愚策であると思っています。年末のメディアではあまり取り上げられてはいないようなのですが、この機会に今一度思いおこしなぜあのような愚かな策が講じられてしまったのか、メディアも国民に対してもっともっと問いかけて欲しいと思っています。

震災が発生した3月11日は金曜日でした。この日以降、福島原発被災による異常事態発生により、首都圏の電力事情は想定外の危機を迎えることになります。当時の管内閣は東京電力の発案を基本的には丸のみする形で(いろいろなやりとりはあったとは聞きますが)、日曜日の夜に産業界も“寝耳に水”の翌月曜日からの「計画停電」を発表します。電鉄各社をはじめ民間企業は翌日からの操業に関してパニック状態に陥りました。特にひどかったのはJR。月曜日には開き直りともとれる運休路線連発の運行間引きをおこない、私が住む北関東は在来線が全面運休するという事態に陥ったのです。

なぜ東電からの「計画停電」提案がなされた際に、国は産業界全体を巻き込んでの対応策を検討できなかったのか、世紀の愚策が誕生した背景には指導者の安易な独断による大いなる過ちがありました。事前に用意されていたであろう、政府の非常事態発生時におけるコンテンジェンシープランはどうのようなものであったのでしょうか。もしそれに沿った対応策をとったのだとすれば、いささか疑問であります。あの時の取るべき対応策に関しひとつのヒントは、昭和の終焉、昭和天皇崩御時の国家対応にあったのではないかと思っています。当時の入念に用意されたXデーシナリオは実によくできたものではなかったでしょうか。今回はもちろん当時のような準備期間はありませんでしたが、あの時と同様に「国民の休日」扱いを発動することによる時間稼ぎ策の下での、国と産業界の協議による議論された危機回避的な経済活動の縮小という措置は、とれたのではないかと思うのです。

金曜日の災害発生、土日を挟んでさらに3日程度を「休日」として、その間に産業界をまじえ大手企業を中心としてあらゆる協力を要請し、被災により激減した電力の使い道に関し不要不急の優先順位を下げた交通整理がしっかりできていれば結果は違っていたと思います。「計画停電」そのものが完全には回避できなかったにせよ、あのような混乱は避けられたのではないでしょうか。震災発生当日はともかくとしても、翌日以降にたびたび発生したパニック状況は明らかに人災でしたから。ちなみに、あの時期に盛んにブログにも書きましたが、一番の電力諸費不要不急は民放放送でした。「放送各局が使用する電力+受信側の試聴電力」を合わせたらかなりな消費電力の削減ができたハズです。災害発生翌日以降、同じような災害映像と公共広告機構のCMばかりを垂れ流していた民放に、電力消費ピーク時間帯の放送自粛をなぜ強制的に指示しなかったのか、です。

国民の支持のない弱い内閣はメディアを敵に回せばひとたまりもありません。あの当時の管内閣が後々自身が叩かれるリスクを恐れ、メディアに対して強い態度に出れなかったという事情は容易に想像のつくところでもあります。結局は支持もなく決断力も牽引力もない弱い指導者のもとに非常事態が発生し、国民は世紀の愚策に苦しめられることになったということは、長く記憶にとどめ後世に語り継ぐ必要があると思います。歴史は繰り返します。反省のないところに進歩はありません。東日本大震災は、自然災害に対する人間の「想定」に頼るリスクとともに、愚かな政権を選択することの国民生活レベルでの具体的リスクの存在も同時に教えてくれたと、語り継いでいきたいと思います。

“反面教師”金正日に学ぶ、二代目経営者の「心」

2011-12-20 | 経営
北朝鮮の金正日総書記の突然の死を受けて、メディアはこのニュースで持ちきりです。なにぶん情報の絶対量が少ない要警戒国の一大事ゆえ隣国としての我が国の不安は大きく、見通しを見誤らない正しい状況判断をするための「迅速かつ正確な情報」というものの重要性を改めて痛感させられます。私は国際情勢評論家ではないので、「正確な情報」を持ち合わせていない現状では北朝鮮に関して余計な推測をするのではなく、企業で言うなら“創業者”である父金日成から引継いだ二代目金正日のマネジメントについて、反面教師的に学ぶべき点について考えてみたいと思います。

父金日成の死は94年。48年の建国からすでに40年以上の年月がたち、独裁的社会主義は限界を迎えつつありました。折しも、89年中国における天安門事件の勃発とベルリンの壁崩壊、そして91年のソ連崩壊・・・。社会主義国家には新たな風が吹き荒れ、体制の変革が求められた時代でありました。そんな中で突然の“創業者”からの経営バトンタッチ。金正日政権は言ってみれば環境激変の荒波において経営を引き継ぎ、発足直後から非常に難しいかじ取りを迫られた、いわばリーマンショック以降に社長の座を引き継いだオーナー企業トップと似た境遇にあったと言えるでしょう。

金正日はこの難局をどう対処したか。彼にあった選択肢は「改革」か「保守」かの二択であったと思います。「改革」として考えられるのは、中国のような対外開放策。しかし、中国との決定的な違いは「独裁者一族」の存在です。一族の既得権益が存在する北朝鮮において、対外開放をおこなうことは情報の大量流入による「既得権益の喪失」を意味すると考えたのでしょう、彼は環境激変への対応策として「改革」とは真逆の「保守」に動きました。すなわち、既得権益を投じる覚悟で「改革」に着手するのではなく、内部的締めつけ強化による一層の恐怖政治の徹底をおこなったのです。結果はどうであったのか、既得権益を堅持し丸々と肥えた金正日、金正恩親子と、慢性的な飢えにより疲弊する北朝鮮国民という、あまりに対照的かつ悲劇的な構図を描き出したのです。

この北朝鮮情勢を他人ごとのように眺めているオーナー企業のトップにも、無意識のうちに同じようなことをしている人たちが多数存在していると思います。環境変化の危機に直面し表面的には「改革」という名の統制強化をおこないつつも、内心では創業一族の既得権益を優先して資産を減らす新たな「投資」はせずに「保守」を堅く貫いている。すなわち危機が到来するや、まず従業員の給与体系に手を加え一層の尻叩きをしつつ一族役員の処遇はある程度守り、その方針に従わない者は切り捨てる。そして気持ちのどこかでは、「なるべく資産を維持し、本当におかしくなったらそれ食いつぶさないうちに早めに会社をたたんで、一族で山分けをすればいい」などと、最悪のケースをも想定してもいる。

オーナー企業はたいていの場合独裁経営ではありますが、危機に直面すればするほど「社員の生活を第一に考えているか」「オーナー家の既得権を手放す覚悟で、危機に相対しているか」が重要な部分になるのです。これができない経営者は、厳しい言い方をするようですが、ある意味で金正日総書記と同じなのかもしれません。創業者にはこのタイプは比較的少なく、私が知る限り金正日と同じく二代目以降にこのタイプが非常に多い。創業者にこのタイプが少ない理由は、彼らには共に苦労をして会社をここまで築きあげてきた従業員に対する「感謝」の念があり、それが自身や一族の「既得権益」を賭けてでも会社を守る「社員愛」へと形を変えることも可能だからなのでしょう。

本当の帝王学とはこのような部分にこそあるのですが、それをしっかりと次代に引き継いでいる経営者は意外に少ないのです。ですから、トップの座を親から引き継いだ二代目には「感謝」がなく、代わりに物事を損得勘定のみで判断する「冷徹」さを持ち合わせてしまうケースも多い。その「冷徹」さが危機に直面し「既得権益堅持」を実感した時に従業員の悲劇は起き、現在の北朝鮮国民にあるのと同じ構図が二代目以降に経営権が移行したオーナー系中小企業では容易に起こりうる、そんな印象が強くしています。北朝鮮は「脱北」を許さず、独裁抑圧政権下に国民を縛り付け体制維持を続けていますが、企業ではオーナー一族の「既得権堅持」と社員への冷遇が続けば、大量退社等により必ずや崩壊の道をたどる、会社をつぶすマネジメントなのです。

最後にもうひとつ、補足的に反面教師として金正日から学ぶマネジメントをあげれば、その交際範囲の狭さがあります。彼は自分の考え方をある程度支持してもらえる中国、ロシアといったごく限られた国以外との経常的なコミュニケーションを断ってきました。それは言ってみれば、多様な価値観に基づく思考の拒否であり、自身の思考に与える変革のチャンスを自ら断ってしまってもいたのです。企業経営者に置き替えて言うなら、同業者や自社の取引先(売込先)以外との経常的なコミュニケーションを持たない経営者も同じような境遇にあると言えるでしょう。異なる視点を持つ人たちと幅広く意見交換をすることは、自己の組織運営の過ちに気付かせてくれる大きなチャンスでもあるのです。それを断つことは、“独断の罠”にはまり経営者としての誤った判断に導かれる原因にもなるのです。

金正日の死によって今また大きく北朝鮮情勢がクローズアップされる中、オーナー企業経営者は自身の不況対策の舵取りが実は北朝鮮的になってはいないか、トップとしての社会的責任の観点から今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。二代目、三代目経営者は特にご注意を。

ドコモの「開物」不足に振り回された日曜日

2011-12-13 | その他あれこれ
日曜日は本当にまいりました。

朝11時頃でしょうか、仕事部屋に置きっぱなしの携帯を取りにいくと、「着信アリ」だったので折り返し電話を入れようとしたものの、「しばらくお待ち願います」の表示が・・・。「変だなぁ?」と思いながら何度トライしても全然つながらず、同じような反応の繰り返しです。とっさに思い浮かんだのは、あの3.11の地震発生直後の携帯状況。新年になる瞬間とかでも、電波が異常に混雑をするとそういうことがあるとは聞いていましたが、はて「今日は何の日?」。特に普通の日曜日であり、世間一般でとりわけ携帯回線が混雑するようなイベントがあるとは聞いてはいません。

となると疑うのは携帯の故障ですが、最後に使用したのが前日の夜、しかも朝携帯の着信があったのですから、それも考えにくいと・・・。PCを立ち上げ、NTTドコモのサイトへ。「通信異常が発生しているに違いない」、そう思った訳です。しかし最新の通信異常のお知らせは8月の情報、現時点での発生等は何の記載もなし。グーグルのニュースページで、「ドコモ 通信異常」でニュース検索するも最新ニュースはひっかからずでした。その間も何度か発信を試みましたが、全くダメ。そうなると、不思議に思いつつも本格的に携帯の故障を疑わざるを得なくなる訳です。そこで、固定電話からドコモの問い合わせ番号にTEL。通信障害の有無確認をしつつ故障箇所の特定を、という考えでした。

しかし!「オペレータにおつなぎいたします」まではいくものの、「ただいま大変混みあっております。おかけ直ししただくか、しばらくそのままお待ちください」のメッセージが繰り返されるばかりです。これではお話になりません。仕方なく電話を切ったものの、そうこうするうち昼はとうに過ぎ、念のため再度確認したドコモのホームページでは相変わらず何のお知らせもなし。私は「どうやら携帯が壊れたようだ」と納得のいかない納得のさせ方で、この問題から頭を切り替えて仕事に出ることにしたのでした。

結局、ドコモの通信異常があったことを知ったのはすっかり暗くなった夕刻のことでした。うちのスタッフからの連絡で知らされました。携帯故障は仕事に差し障るので、予定を変更して出掛けた足でドコモショップに故障相談に行こうと思っていたので、「今頃そりゃないだろ!」と呆れさせられました。いずれにせよ、今回のドコモの情報対応の遅さはひどくないですか。後から調べてみても、通信異常の発生は午前10時台、一方ネット上最速と思しき2ちゃんでドコモ公表情報が流れ始めたのは16時前のようです。ドコモは一体何時に障害発生の事実公表をしたのかですが、この2ちゃん掲載時間の直前ぐらいでしょうか?だとすればあまりに遅すぎます。

以上、長々と日曜日の私の携帯通信異常に振り回された経緯を書きましたが、私一人の行動を見てもドコモの事実公表の遅れによって、大きな無駄をさせられているのがお分かりいただけるかと思います。問い合わせ電話が殺到するぐらいの予想はできるハズですから、最低限昼段階で電話受付時の待たせる間に「障害発生」を知らせるテープを流せばいい。それをするだけでも結果は随分違ったと思います。iモードにしたって、普段要らないドコモ情報を送りつけてくるメッセージRで障害発生連絡だってできるはずなのに復旧後を含めて一切なし。この程度の事は、利用者の立場でサービスを考えるなら、すぐに思いつく対応であるハズなのですが・・・。

これでは公共のインフラを担う企業として失格です。20年以上前に、私が銀行のプレス担当をしていた時代でも、休日のオンライン障害発生時には30分以内には主要メディアに事実連絡をしていたのですから。NTTドコモは、とにかく「開物」精神が足りないのではないか、と思います。だとすればまだまだ組織は至って官僚的である、と言っていいでしょう。「開物」とは、すべてを包み隠さず見せる事です。悪い事実であればあるほど早く「開物」しなければ利用者の支持が得られる訳がありません。原因が分からなければ分からないで、「調査中」と言う事実を公表すればいい。公表が遅れれば遅れるほど、「何か隠しているのではないか」とあらぬ疑念を抱かせるだけなのです。

多くの利用者を抱える公共的色合いの濃い企業であればある程、「復旧対応への着手」と「障害発生のお知らせ」は同時におこなわなければいけないのです。悪いことをなるべく隠したい、できれば早期に復旧させて何事もなかったかのように振る舞いたい、もし少しでもNTTドコモがそう考えて日曜日の事実公表を遅らせたのならそれは大変な間違いです。NTTドコモは業界シェアNo.1の巨大企業ではありますが、今回のように官僚的な姿勢でのサービス提供を見る限りにおいて、スマホ大戦争の携帯電話市場における同社のジリ貧状態はi-Phone取扱の有無ばかりが理由ではないと思わされました。