日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

安倍首相の情けない答弁に思う

2015-07-13 | 経営
組織におけるリーダーシップの話を少しします。

リーダーに求められる決断力とは、正しい判断に基づいたあるべき決断をすみやかに下し、あるべき方向に導くことに他なりません。間違っても、あるべき方向とは異なる方向での誤った判断を、あるべき判断どおりにできない理由を前面に立てて、誤った判断のまま押し通してしまうのは、リーダーの資質において失格であると言わざるを得ないのです。

そしてもうひとつ、現状の誤った方向が仮に過去に他人が下した判断に起因するものであったとしても、それを受けてかじ取り役を任されたリーダーの立場からは、私にその方向を正す責任はないとするのは、リーダーにあるまじき無責任な行動と言わざるを得ないでしょう。

申し上げているのは、安倍首相の新国立競技場案見直しを求められての答弁についてです。首相の回答は、「事務方に問い合わせたところ、この案をやめて新たに国際コンペを行ってデザインを決めることをやっていては、2019年のラクビー・ワールドカップに間に合わないし、2020年の東京オリンピックにも間に合わない可能性が高いという報告を受けた」との返答。現状の世論を見る限り、国民の限りなく大多数が「計画の見直しが必要」と感じている新国立競技場に関して、この答弁はいかがなものかと思われます。

さらには、「国際コンペをやると約束し、監修権等をザハさんに与えると決まったのが2012年11月、我々が政権につく前のことだ。事実として述べると、民主党政権時代に、ザハ案でいくということが決まり、オリンピックを誘致することが決まった」と、この誤った事態を民主党政権に押し付けて、我々には責任がないとでも言いたげな姿勢を示したことは、あまりに国民をバカにしているのではないかと思えもするのです(この質問をしたのが、民主党所属で総理の“天敵”辻元清美議員であったという特殊事情はあるにせよ、です)。

特に第一点、誤った方向にある事態を正すのに、「時間的に無理」という論理を押し通すのは、あるべきリーダーの行動として完全に失格でしょう。事務方はどこまでいっても事務方であり、事務的に間に合う間に合わないを言っているにすぎません。リーダーが事務に流されてどうするのか、ということです。明らかに誤った方向に進んでいるものは、「どうしたら正せるのか」「やれる限りやる」を前提として即刻検討に移さなくてはいけない、そんなことはリーダーシップの基本中の基本じゃないでしょうか。

仮に今ある方向を正さない、誤っていないと言うのならば、その論拠を明確に提示しなくてはいけません。2520億円と言うシドニー、アテネ、北京、ロンドン4大会のメインスタジアム建設費を足してもおつりがくると言う、巨額計画を押し通すことの正当性を国民に提示すべきなのです。「他人が決めたことだから、僕には関係ないよ」は理由になりませんし、それは完全なリーダー職放棄です。

問題のキールアーチをやめるとか、ラグビーワールドカップの新国立利用をあきらめ現行案を白紙に戻すとか、コンペ時に最終選考に残った案を代替採用するとか、方法はいくつもあると思うのですが。とにかく今の首相の態度は、文科省がからんでいる国家プロジェクトに対して、全くリーダーシップが発揮されていないとしか言いようがないと思うわけです。

リーダーにとっての絶対にやってはいけないが、この安倍首相の言動にあります。できない理由を盾にあるべき改革を拒むこと。以前のリーダーの決定を理由に責任回避しその決定に基づく誤った方向を正そうとしないこと。一国の首相の言動として、あまりに恥ずかしい限りではないでしょうか。マネジメントを生業とする立場から、情けなく思った次第でありました。

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2 コメント

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Unknown (JJJ)
2015-07-14 01:08:54
民主党批判するなら、そもそも最初の1300億円という設定が正しいのか、どうかを検証した方がいいかと思いますね。
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このままでは日本はギリシャの二の舞になる。 (S.A.)
2015-07-14 20:48:04
オリンピックの5 年後10 年後、日本は都市部の高齢化が一挙に進む。生産年齢人口は落ち込みこの建物のにための税負担がボディブローのように経済を蝕み、貯蓄率の低下が進展するため日本国債は暴落する。日本がギリシャ化する致命的な原因として後世伝えられることとなる禍根となるだろう。
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