日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日本エステ機構の「たかのBC認証取消」は、“臭いモノにフタ”ではないかと思う件

2014-09-24 | ビジネス
日本エステティック機構が、たかの友梨ビューティクリニック(以下、たかのBC)「エステティックサロン認証」を取り消すと発表したそうです。私はこの発表にいささか違和感を覚えました。

同機構による認証取り消し理由は以下の3点だそうです。
・仙台労働基準監督署による労働基準法違反に基づく行政指導がなされたこと
・企業コンプライアンスを無視したエステティック業全体の社会的信用を著しく低下させたと思われる代表取締役高野友梨氏の発言
・東京都による景品表示法に基づく行政処分を受け当機構から認証の一旦停止処分を受けたこと
http://esthe-npo.weblogs.jp/blog/2014/09/3-2eab.html

事件発覚以降の早い段階で、業界の発展を担うべき業界団体が認証の取り消しでことを済ませてしまうというのは、果たして正しい判断であるのか否か。誤解なきように申し上げておきますが、私はたかのBCの味方ではありませんし、擁護する立場で申し上げているわけでもありません。あくまで、業界の加盟店経営を監理する立場の団体として、不祥事の詳細が解明される前に「取消」という突き放すような対応はどうなのだろうか、ということです。

私は認証の取消は時期尚早、現時点では認証の「停止」があるべき機構の対応なのではないかと思っています。機構としては、今回のたかのBCの一件は業界が抱える問題として捉えるべきであり、その中で同社が今回の原因究明および再発防止をしっかり行うか否かを見極めつつ、停止認証の再認定の可否を検討すること。そして、その過程において入手されるであろうあらゆる情報を認定基準の中に新たに埋め込んでいくこと、それで初めて業界のコンプライアンス水準向上に資する認定団体の役割が果たせるのではないかと思うのです。

言い方は悪いですが、今回の日本エステティック機構のやり方は「臭いモノにフタ」と思われても仕方ないでしょう。

確かに、たかのBCは以前にも「認証停止」処分を受けており、二度目の今回は「取消」が妥当との意見もあるかとは思います。しかし警察の交通取り締まりならまだしも、業界のサービス向上をめざす団体の対応はそれとは違ってしかるべきではないのでしょうか。むしろ同機構の取り消し理由の第三点にある、2013年に起きたたかのBCの景品表示法に基づく行政処分時の認証の一旦取り消しとその処分取り下げ過程において、同社のコンプライアンス体制や経営姿勢に対する改善を確認せずに処分の取り下げをおこなった同機構の認証管理の甘さ事態こそ、今回非難されてしかるべきなのではないかと思うのです。

エステティック業界における、PRや労務管理を巡るコンプライアンス上の問題事例という点で、たかのBCの一件は氷山の一角に過ぎないと言われています。言ってみれば、たかのBCの不祥事は、エステ業界の体質をはからずも世に晒したものであるととも言え、業界のコンプライアンス体制を監理する認証団体は、この不祥事から逃げることなくむしろ業界体質改善の絶好期として捉えた積極的な対応が必要なのではないでしょうか。

ブラック企業問題は個別企業特有の事情に起因するある場合もありますが、その多くは業界特有のしきたりや風習に起因するものであるように思います。今回のような業界大手企業の不祥事発覚は、こういった業界特有のブラックの芽を摘む格好の機会であり、それを監理する立場の業界認証団体が「認証取消」という紋切り型の対応でこの問題に背を向けるなら、業界の改善は一向に進まないのです。何のための「認証」であるのか、今回の同機構の対応には疑問を投げかけざるを得ないのです。

“ドコモiPhone決定”と今後の注目点

2013-09-06 | ビジネス
「当社がアップル社の「iPhone」を発売する旨の報道がありましたが、当社が発表したものではございません。また、現時点において、開示すべき決定した事実はございません。」

NTTドコモが、本日未明の報道各社による「ドコモがiPhone取り扱い」報道を受けて発表したコメントです。報道各社のニュースソースは「関係者」。最初の報道は午前2時の日経のようですから、恐らく“裏取り”の必要ない限りなくトップに近い人物への、夜討ち取材で引き出したコメントを元にしたものかと思われます。新聞各社とも関係者取材により「どこかが書けば」という“確信”状態にあったのは間違いなく、日経の一報を見て一斉報道になった模様です。

ドコモ広報のコメント見てもお分かりの通り、どう読んでも「決定」と言っているようなものです。もし違うのなら、「事実と異なる」「事実はなく」の如き表現で否定するはずであり、「当社が発表したものではございません」は、あきらかにアップルに怒られないための言い訳であるのがアリアリ。しかも「現時点において、開示すべき決定した事実はございません」は、「決定した事実が仮にあっても、現時点で開示すべきものはない」と言っているに過ぎず、これも10日にアップルから正式発表された時に周囲から「嘘つき」呼ばわりされないための、予防線的発言にしか見えません。

これで、通信キャリア3社の競争条件が整って、三者のMNP合戦はいよいよ新局面に入ります。もちろん、ソフトもauも契約の縛りがあり「ドコモiPhone取り扱い→即MNP」とはならないので、当面はドコモからの契約者の流出ストップと契約縛り満了利用者の流入に留まり、さほど大きな動きにはならないでしょう。しかし、ソフト、au陣営が強力な引き留め策を講じないなら、規模の利益でジリジリとドコモ陣営に顧客を奪われることになるのではないでしょうか。ソフト、au陣営がいかなる次の一手を打ってくるのか、楽しみではあります。

ドコモ側とていいことばかりではありません。iPhoneはご存じのように、ドコモ独自のサービスが相乗りできずコンテンツビジネスを新たな柱に据える同社にとっては極めて不都合な商品であります。コンテンツビジネス収入までを見込んだ1台あたりの収益を考えるに、恐らく他社端末に比べて約半分程度になるのではないかと言う話を以前関係者から聞いたことがあります。今回の両社間での販売ノルマの合意点は、これまでの報道から恐らく販売台数の4割程度と想像できます。4割が即座に全契約の4割になるわけではありませんが、国内におけるiPhone人気が続くならば、ドコモにとっては収益率の面でボディーブロー的に効いてくるハズです。

この問題はどこに影響が出るのかと言えば、一番は販売店運営でしょう。これまで2社に比べて圧倒的だったドコモの販売店支援費の面で少なからず影響は出るはずですし、この先機種変更やNMP効果でiPhoneのシェアが高まれば高まるほど支援費への影響は避けられない状況になるでしょう。販売店にとってはiPhoneを扱えるのはありがたいものの、あまり売れすぎても収益性の面で自分を苦しめることになる、手放しでは喜べない状況にあるのです。

ドコモはこれまでも、仮に扱うとしてもiPhoneはあくまで「品ぞろえ」としての位置づけを強調してきていますが、販売台数の4割のシェアを持ち徐々に全契約数におけるシェアも高まっていくのならそれはもはや「品ぞろえ」では済まず、まさしく“ドカン屋”への道をまっしぐらになりかねないわけです。iPhone取り扱いスタート後こそが今後の日本の携帯ビジネスのあり様を左右する本当の正念場になるように思います。ドコモのiPhone取り扱いによって注目すべきは通信キャリア3社の顧客争いばかりでなく、国内携帯電話の約5割を占めるドコモのiPhone後戦略こそ大注目ポイントではないのかと思っています。

ドコモ副社長発言のiPhone投入「今でしょ!」感

2013-08-28 | ビジネス
NTTドコモの坪内副社長が、SankeiBizのインタビューに答えiPhone取り扱いに関して、「態勢は整った。いつ出すかが問題」と発言し話題になっています。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/130826/bsj1308261001007-n1.htm

「もうそんな話どうでもいい」と一部読者からは辛らつなコメントをいただきそうな気もしますが、ドコモのiPhone取り扱いは引き続きその動向によって業界シェアに大きな影響を及ぼす可能性のある問題であり、拙ブログとしてはこれまでこの問題を追い続けてきた立場上からも再度触れずにはおけないところであります。今回の注目は坪内社長の、今までのドコモとは明らかにトーンが異なる「態勢は整った。いつ出すかが問題」発言の真意です。

◆「態勢は整った」について
拙ブログでも何度となくiPhone取り扱いの問題点を取り上げてきましたが、やはり表向きの「態勢」とは、携帯メーカーを減らしiPhone取り扱いに向けiPhoneに向けたシェアの整理をしておきたいという点がその最大のものであったと思います。2~3年前のiPhone一人勝ち的な風潮における国内弱い者連合の状況下でドコモがiPhone取り扱いをスタートするなら、国内メーカー総倒れにもなりかねない状況にあったわけで、できれば2~3社にやんわり引導を渡したい。その意味においてドコモが初めて打ち出した「ツートップ戦略」は、メーカー淘汰の呼び水になりました。

もちろんこの戦略が可能になった背景には、アベノミクス効果による急激な円安傾向が大手家電、IT各社の救世主になったという業績の好転があります。ここぞドコモにとってメーカー淘汰をするには千載一遇のチャンスとばかりに、「ツートップ戦略」というこれまでのメーカー各社との蜜月関係に一方的にな終止符を打つ、ある意味非常にエゲツない戦略を打ち出したわけです。結果、NECのスマホ撤退、パナソニックの新機種凍結といった形で思惑通りの展開になったのです。

もうひとつの「態勢」は、アップルが要求しているドコモにおけるiPhoneの販売ノルマの件です。そのシェアは5割というのがもっぱらですが、ドコモ側が公言してきた可能シェアは2~3割。しかしツートップ戦略によりツートップの販売比率が全体の6割を超えるという予想以上の淘汰伸展がドコモに譲歩の余地を生んだと見ます。またiPhoneに一時期の勢いがなくなったアップルにも多少の譲歩はあっても不思議ではなく、ドコモのアッパーライン3割とアップルのロウワーライン5割の間の数字に両社が歩み寄ることで、アップル側の要求に応える「態勢」が整ったと見るのが自然ではないでしょうか。

さらに冬の戦略として予定されている「スリートップ戦略」からは、サムスンのギャラクシーが外れる予定とか。そもそもiPhoneを持たないドコモが、その対抗商品として世界シェア№1のギャラクシーをツートップに据えたわけで、本丸iPhoneが手に入るならギャラクシーはお役御免。さらに、海外製品シェアの「態勢」から考えても、iPhone導入後もギャラクシーをトップラインアップに据え続けることはむしろデメリットであるわけです。ここにきてのいきなりの“ギャラクシー外し”は、iPhone導入の「態勢」をにらんだ複線とみるのが妥当であるように思います。

◆「いつ出すかが問題」について
さて上記のような「態勢」が整ったとすれば、「いつ出すかが問題」という発言は額面どおりに「すぐには難しい」と受け取っていいのでしょうか。「態勢」が整っているのならすぐにでもやりたいのがドコモの本心のハズです。

ドコモが取り扱い開始時機を考える場合の「問題」は、①他メーカーへの配慮、②今後のスケジュール、③他通信キャリアへのけん制、でしょう。①および②に関しては、過去のアップルの新製品投入時期をみると6月か9~10月です。6月はボーナス商戦真っただ中、9~10月はボーナス商戦まで若干余裕のある時期であり、既存メーカーへの配慮をするなら9~10月秋の投入がベターのハズです。今回を見送りもし次の「iPhone6」発表が6月ならボーナス商戦ど真ん中であり、もし9~10月なら1年先になってしまいます。こう考えると、「いつ出すかが問題」の発言真意は、「問題はあるけど、今やりたい」ではないかと思えてきます。

さらに③。ドコモのiPhone取り扱いが与える利用者へのインパクトはさておき、iPhone販売で先行するソフトバンク、auにとっては由々しき事態であることは間違いありません。ドコモとすれば、相手に迎撃に向けた準備期間を与えることなくできれば寝首をかきたいわけで、「いつやるの?」に対するこのところの死んだふりから一転いきなりこの9月に「今でしょ!」と立ち上げるのが戦略的にもベターであるように思えるのです。

このように、坪内副社長の「態勢は整った。いつ出すかが問題」発言を読み解いてみると、今回のiPhone5S発表時に合わせたドコモのiPhone取り扱いがかなり濃厚なのではないかと思えるわけです。この問題を毎度追いかけている日経新聞が「今回は見送られる公算」と報道している点も、「買うと来ない、買わないと来る」下手な競馬予想のようでまたまたハズしてくれるのではないかと。果たして「いつ売るの?」「今でしょ!」となるのか否か、9月10日新型iPhoneの発表を待ちましょう。

お知らせ~うちわ祭で「くま辛」!「くま辛クールシェアガーデン2013」開催します!

2013-07-17 | ビジネス
小職が事務局長を務めますHOTな街熊谷のHOTな街おこし「くま辛実行委員会」では、今週末から開催される地元最大のイベント「関東一の祇園 熊谷うちわ祭」で、「くま辛クールシェアガーデン2013」を開催します。

「くま辛クールシェアガーデン2013」は、HOTな(辛口の)食べ物で街を活性化する「くま辛」が、クールシェア運動とタイアップして「楽しく遊んで、おいしいモノを食べながら、涼んじゃおう」というコンセプトで、お祭り来場の皆さまに憩いのスポットを提供するものです。

具体的には、くま辛加盟店による出店での飲食の提供、ファミリーで楽しめるアトラクション、足水で涼むクールシェアスポット、お笑い芸人やダンスグループのパフォーマンス(両日14時、16時の2回開催)等々をお楽しみいただけます。詳しくは画像のチラシをご参照ください。


◆くま辛クールシェアガーデン2013◆
7月21日(日)13時~20時、7月22日(月)13時~21時
「リバーサイドパーキング」熊谷市筑波2(熊谷駅徒歩3分)

問)048-580-7440くま辛実行委員会事務局(㈱スタジオ02内)

※うちわ祭の詳細は、
「関東一の祇園 熊谷うちわ祭」公式ホームページ
http://uchiwamatsuri.com/

AKBの販売戦略を批判せず「革命」として受け入れたいと思う件

2013-06-11 | ビジネス
昨年はAKBの総選挙を「音楽界をダメにする」と痛烈に批判した私ですが(ありがたいいことに、AKBファンの皆さんからの抗議メッセージも多数頂戴しました)、今回は少し違う観点からこのイベントに密接にかかわるCD販売戦略を捉えてみたいと思います。
◆「AKB総選挙が音楽界をダメにする」
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/0add36edfac3f423e32d97d4f2d01667

論点となるのは引き続き、「一人の人間に同じCDを何枚も買わせることでCD売上の底上げをはかる販売手法」の是非です。一年間落ち着いて考えましたが(というのはウソ)、これはスゴイ戦略です。逆転の発想と言うべきか、コロンブスの卵と言うべきか。これまで音楽ソフトは一人に一枚を売るのが常識であり、いかに多くの人に売るか(買ってもらうか)に知恵を絞ってきたわけですから、この発想の転換はある意味音楽CD販売に革命的な変革をもたらしたと言ってもいいのかもしれません。

似たような売り方は、オヤジ層ターゲットでのCD商売にも存在します。60~70年代の名盤を、未発表の制作途上の音源やライブ音源をセットして「デラックス版」などと称して商品企画をしたり、昔のジャケットを紙製でまんまミニチュア化して「紙ジャケ版」などとして再度買わせる手法がそれです。私あたりも、この手にはついつい乗せられて同じタイトルの「デラックス版」「紙ジャケ版」をけっこう買わされております故、この手法の有効性は十分理解できるところであります。

しかし、AKBの販売戦略はこの比ではありません。一人のファンに買わせる数が半端なく、しかも買わせるものが全く同じ商品であるという異常さ。やり方の良し悪しの議論を超えて、この破壊的な新手法を定着させたところにAKB販売戦略の革命性があると個人的には思うわけです。何と言っても過去のこの販売手法への批判を乗り越えて、全く反省の色など見せることなく今年はすでに5回目。得票数も着実に増え、同じものを一人のファンに何枚も買わせることの批判も徐々に聞こえなくなってきているようで、もうこの手法そのものが社会的認知を得たと言ってもいいのではないでしょうか。

「一人の人間に同じCDを何枚も買わせることでCD売上の底上げをはかる」という戦略。過去の音楽業界で誰一人として気がつかなかったこと、あるいは気が付いていたとしてもタブーとされていたことだったわけで、これを打ち破った事実はやはりスゴイと絶賛すべきなのでしょう。現実にAKBの総選挙がらみのCD売上があって、音楽業界全体としてもCDの販売数減少に歯止めがかかってもいるのですから。

これがまた今後、総選挙が年2回だ年3回だと増えてくるようなら、それはそれで問題多しなわけですが、ニーズがあって購買意欲が減じることがないのなら、それはそれでアリなのかなとも思うのです。いかに過去の常識からは邪道と言われるモノが助長しようとも、それを支持する層が厚いままならそれは新たな常識になるわけで、「革命」とはそういうものなのですから。

とは言いつつも、旧人類の私は一音楽ファンとしてやはり「一人の人間に同じCDを何枚も買わせることでCD売上の底上げをはかる販売戦略」そのものには納得しておりません。買っている人間が音楽を買っているのではなく、投票権を買っているという事実がまだわずかな救いではありますが…。音楽業界は、より多くの音楽ファンに1種類1枚ずつのCD買わせることで総体の売り上げを伸ばすような、魅力あふれる音楽ソフト販売戦略をぜひとも打ち出して欲しいものだと切に思うところです。

結局結論は昨年と同じものになってしまいました。AKBファンの熱い思いも認めますが、これが一音楽ファンの熱い思いでもあるのです。

乙武さんの一件に学ぶ、正しいトラブル・コミュニケーションのあり方

2013-05-23 | ビジネス
車いすでエレベータのないレストランに来店した乙武さんが店側に入店を拒否された一件が大変な話題を集めています。事件の経緯や障害者と健常者のやり取りのあり方をとやかく言うつもりは毛頭ありません。私はどちらが良い悪いではなく、自己の商売柄ビジネスにおけるコミュニケーション円滑化を扱う立場から、この一件から学ぶべきコミュニケーション上の教訓を記しておきます。なお、あくまでネット上で得た情報を元に一般論で教訓を記します。事実関係の成否確認はしておりません。

1. 相手に負担や迷惑をかける可能性は、分かった段階ですぐに伝える
相手に迷惑や想定外の負担を与える可能性がある場合は、その事実が発覚した段階で即座に相手に伝え事前の了解あるいは心構えをもってもらう必要があります。それがないと、相手は予期せぬ事実に「聞いてなかった」→「話が違う」→「知っていながらなぜ教えなかった」という驚きから怒りに変質することにもつながりかねません。相手に負担や迷惑がかかる恐れがある事実は、判明時点で必ず伝える必要があるでしょう。

今回の件では、乙武さんはそのレストランがエレベータの停まらない階にあることは事前に知らなかったそうではありますが、未知の店への来店であるなら、「もしかすると、お店にご迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが、車いすでも大丈夫ですか」と事前に申し出ておくのがベターであったとは言えるでしょう。

2.店舗側はどんな時もビジネスであるということを忘れてはならない
ビジネス・コミュニケーションでもっとも大切なことは、どんな場面においても「主客」の立場を忘れてはならないということです。要するに、自身が「主」相手が「客」であるのなら、どんなに不都合なことがあろうとも(犯罪行為の類は当然除きます)、お客様に接しているのだという態度を忘れてはならないということなのです。

乙武さんは今回で相手をブログで非難した理由について、店主の「上から目線」を最大の理由として挙げています。これがもし本当であるのなら、店主の「上から目線」がなかったなら、今回のような第三者を巻き込んでの大きな騒ぎにはならなかったと思われます。店主に「上から目線」があったか否かは、乙武さんの主観の問題ですから何とも言えませんが、それを思わせる「主客」を忘れた何かはあったのでしょう。

3.トラブル・コミュニケーションは第三者を介さない大原則
トラブル発生時によくある「火に油」の状況は、トラブルの口火となうような一言を、当事者ではなく代理人や取り巻きに対して発し、そのことが間接的に伝わることで当事者同士のコミュニケーション成立前に感情がもつれ、まともなコミュニケーションが成立しなくなることです。「××と言っておけ」と伝言形式で非難、批判、罵倒の類を口にすることは、相手に正確に意図が伝わらないばかりが、第三者を介することでその第三者の主観がそこに入り込み一層やっかいな感情のもつれを生む原因になるのです。

今回の件で店主は断りの第一声を乙武さんの同伴女性にしています。同伴女性はそれを受けてあまりのショックに言われたことを泣きながら乙武さんに伝えたと言いますが、ここがトラブルを大きくした最大の原因であると思っています。店主はその後階下に降りて乙武さんと直接話をしていますが、もう後の祭り。乙武さんは泣きながら戻った女性を見て、どんなにひどい言われ方をしたのかと、相手と直接相対する前に相手に対する怒りや嫌悪の感情を持ってしまうわけで、これではまともなコミュニケーションが成立するハズがありません。完全なる店主側の落ち度です。「トラブル・コミュニケーションは第三者を介さない」は大原則として記憶したいところです。

4.外に出すリスクの大きさを知り、時を改め再度コミュニケーションをとる
当事者間のトラブルを外に公言するということは、最大限避けなくてはいけない部分です。どんな形であれ、トラブル情報が外に出ると言うことは詳細な事情を知り得ない無関係な第三者の目に触れさせることを意味するわけで、相手への誹謗中傷の拡大に加えて予期せぬ自己への批判も起こりうることであり、相応にとってプラスは何もないということになります。今回の件のように、大企業や著名人がトラブルの当事者として絡んでいる場合はなおさらリスクが大きくなると考えるべきでしょう。著名人のツイッター炎上などは大半が、このようなリスクの行方を考えないトラブルの公言や他者批判に起因するものです。

もしトラブルを公言しようと思うことがあったなら、特に影響力の強い立場にある側は、まずは冷静さを取り戻すだけの時間をおいたうえで、直接相手に再度コンタクトをとり改めて事実関係を正してみた上で善後策を検討するという注意深さも必要であると思います。

トラブル・コミュニケーションはビジネスをおこなう上で避けては通れない問題でもあり、その上手な運び方に対する心得や事を深刻にしない工夫があれば、余計な労力や精神面のダメージを生むことなくやり過ごすことができるのです。今回の件を傍目で見ていて、ビジネス・パーソンはこの機会に改めてそのあたりを認識されてはいかがかなと思った次第です。

「独立」で失敗しないための3つのこと

2013-04-19 | ビジネス
これもアベノミクス効果であるのか、最近「独立」に向けた相談によく受けますので、その際にお話しいていることを少しまとめておきます。

「独立」というからには、「一人で立つ」ことです。「一人で立つ」とは何かですが、これは「支えるモノなく立つ」ということで、その意味からすると何か公的な「資格」を取ってそれを支えにして「立つ」場合や、親会社の庇護のもと別会社として「立つ」場合は、この場合の「独立」ではありません。

もちろん「資格」を取っただけでは商売にならないというものもありますので、「資格系独立」全部が全部これにあたるわけではありませんが、基本的には何の「資格的裏付」や「親の庇護」なしに「一人で立つ」ことを、ここでは「独立」の定義とさせていただきます。

一般的には「サラリーマン生活」からの独立というのが一番多いパターンです。この場合に「独立」すると何が一番変わるのかをまずしっかりと認識する必要があります。一番の違いは「時間」を基準として働くか否かです。サラリーマンは基本的にはどこまでいっても「時給いくら」の世界であり、給与が上がるのはすなわち、自分の働きが認められて「時給があがる」だけのことなのです。

その昔、植木等が「♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ!二日酔いでも寝ぼけていても、タイムカードをガチャっと押せばちょっくらちょいとパーにはなりゃしねえ」と歌っていたように、極端に言えば会社に行っていさえすれば仕事をしていようがしていまいがおカネになる、それがサラリーマンであるわけです。仮に自己の怠慢でクビを言い渡されたとしても、ある程度は法が守ってくれる部分もあるのです。

「独立」は全く違います。「時間」は関係ない。どんなに働きづめでいようが、どんなに長時間努力をしようが、稼げるか否か全てはそこにかかっているのです。言い換えれば「結果」がすべて。1日1時間労働でも、食べていけるだけのモノが稼げるならそれでOKですし、どんなに汗水たらして努力をしても稼げないのなら、仮に誰か傍の人が「がんばってますねぇ」と評価してくれたところで、それは何の意味も持たないのです。

ですから、「休みと仕事の区分けがない」それが「独立」です。仮にバカンスを楽しんでいても、ビジネスになりそうなモノに出くわしたなら、すぐにビジネスモードに切り替えてビジネスチャンスを逃してはいけませんし、無駄な仕事をするぐらいだったらビジネスを思いつくまで遊んでいようということもアリなのです。

よく人から、「サラリーマンと違って、時間が自由になってうらやましいですね」などと言われることがありますが、これは「リスク」とバーターで「自由」を手に入れているだけにすぎないわけで、全然うらやむようなものではないのです。「サラリーマンだって、会社倒産のリスクがある」とおっしゃる方がいますが、そんな「リスク」と「独立」のリスクは比較にならないです。勤務先の倒産リスクは事前把握をして、「転職」という手で逃げることが可能です。「独立」は事業主ですから逃げることができませんし、またいつどんな裏切りによってどん底に突き落とされるのか、常に見えない「リスク」に四方八方を囲まれているも同然なのです。蛇足ですが、サラリーマンにある万が一の時の「失業補償」は、「独立者」「経営者」にありません。

では、自分の「独立」の可否を決めるポイントは何か、です。3点あげます。
一点目は、上記に書いたとおりの当たり前のことではありますが、「独立」の正しい意味を理解できているかどうかということです。ここを履き違えて、「独立」をしてはみたもののすぐにビジネス破綻しサラリーマンに戻った人を数多く見てきました。このケースは、一言で言うなら「考えが甘い」ということになるのでしょう。

二点目は、会社の看板で仕事ができなくなるので、自分がもといた会社をのぞいて、2年間食いっぱぐれのないと思えるだけの豊富な「人脈」があるか否か。とにかく「独立」のキーは「人」です。そして、その「人脈」はオーナー系経営者をはじめとするサラリーマン以外の同じ「独立者人脈」である必要があります。サラリーマンは所詮はサラリーマン感覚でしかビジネスを考えられないので、本人の意にかかわらず思わぬ“裏切り”に会うこともこともしばしばです。イザと言うとき頼りになる、同じ「独立者」目線でビジネスを共有できる「人脈」の豊富さこそが有効であるのです。

2年間と申し上げたのは、仮に何かに失敗をしても2年間なんとかかんとか食べていけるなら、その時間で自己のビジネスを再生・再構築したり、新たなビジネスを立ち上げたりを可能にする十分な長さであると思われるからです。逆に2年間で立ち直れないのならば、残念ながらその人は「独立」には不向きであるという結論にならざるを得ないでしょう。ちなみに「人脈」の代わりに「資金」があると言うのでもOKです。良いか悪いかは別にして、おカネのあるとろには人が群がりますから、「人脈」はカネでつくることができるとは言えるでしょうから。

三点目。これが一番重要ですが、何事も自ら動く積極性を持っているか否か。言い換えれば、「何かが起きることを待たすに、自分で起こすこと」ができるかです。組織生活に慣れ親しんでしまうと、意外にこの点が弱くなるものです。運営が安定した組織であればあるほど、対処療法的な動きが身についてしまい、自分から動く・動かすということから疎遠になってしまうのです。

「よく仕事が切れることなく来てますね」と言われることもありますが、そもそも自分から何も動くことなく、あちらから仕事が舞い込んで来る、黙っていてそういう状態になることは普通あり得ません。私自身のあらゆる仕事も、露骨な売り込みではないにしても、積極的な自分からの働き掛けやアプローチ、仕掛けや仕込み等々さまざまな自発的かつ前向きな努力の積み重ねがあっての結果に他なりません。嫌な思い辛い思いもたくさんしています。「努力のないところに成果なし」です。自分から働きかけることなく、待ちの姿勢で「楽」をして稼ごうなんて、そんなにうまい話はありません。

新しいビジネスモデルを考えつけば出資者を集めてそれで一攫千金だ、と思い込んでいる若い人たちも最近はよく見かけますが、そんな幻想は捨てたほうがいい。何事にも例外は存在しますが、例外は目標にはなり得ません。下手な成功本に踊らされて、自分にもできそうだと一攫千金を夢見ることは勝手ではありますが、愚かでもあります。本に書かれていないところにこそ、「楽」とかかけ離れた成功の秘密があることを忘れてはならないと思います。

「楽」をしたいならサラリーマンであり続けること。相談に来られた方には最後にそうお答えしています。

「ドコモiPhone投入」報道、今度こその3つの理由

2013-04-11 | ビジネス
「ドコモが今夏にもiPhone投入へ」。
もう聞き飽きた感のある見出しフレーズですが、先週末の報道の主は産経さん。これまでたびたび日経さんが“飛ばし”続け、いい加減“狼少年”も老けこんで“狼オヤジ”になるんじゃないかと思っていただけに、産経さんのご登場はなんともフレッシュな感じがしてはおります。
★「ドコモ、今夏にもiPhone投入へ」(産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130405/biz13040519080019-n1.htm

このテーマに関しては、これまでも何度となく拙ブログで取り上げ多くの注目をいただいてきただけに、今回もこのタイミングで再びiPhone導入の見通しについて一言言及せねばなるまいと、筆を執った次第です。で、いきなり結論から申し上げておきますと、今回の「iPhone投入へ」はかなり確度が高いお話であると思っています。理由は3つ。順を追ってご説明申し上げます。

第一の理由は、決算発表を前にドコモのおかれた環境です。産経さんの記事にもありますが、2012年度の携帯電話の契約純増数をみるとドコモは大手3社中最下位かつソフトバンクの半分以下という結果に終わり、しかもナンバーポータビリティ(MNP)で見ると、140万件以上の転出超という“ひとり負け状態”もかなり深刻なレベルに達してしまいました。auがトップの100万件を超える転入超というの大復活ぶりを見るに、iPhone取り扱いの有無が明らかに明暗を分けたと言っていい結果であるでしょう。

ドコモは昨年より加藤薫新体制がスタートしたものの、いきなりの大苦戦続きで初年度から業績予想の下方修正に追い込まれる等散々な一年であり、就任1年目になんの目ぼしい実績も残せなかった加藤氏にとってはいきなり二年目の今年度が正念場になってしまいました。それもこれも、大手三社で唯一iPhone扱っていないがための体たらくであり、もうドコモの我慢も限界であると考えるのが普通でしょう。あとは条件次第という段階に昨年秋以降入っていると、拙ブログでもこれまで散々書き散らかしてきたところでもあります。
★「状況一転、ドコモがiPhoneを扱う条件」
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/dfc0254165688d2b623c065ec293064d

「iPhone投入報道」是認を後押しする第二、第三の理由は共に、以前拙ブログで論じWeb上でかなり話題にしていただいた、大株主である日本国も懸念するドコモがiPhoneを扱った場合に予想されるガラケー・ビジネスモデル仲間である国内携帯メーカーへの影響が、ここにきて微妙に変化してきたということに絡むものです。
★「“一人負け”ドコモが、それでもiPhoneを導入できない理由」
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/82833ed595dc816cae701df270d6c74a

まずはシャープ。以前私は、ドコモがiPhoneの取り扱いをアップルの条件に従っておこなうなら青息吐息シャープの“おくりびと”になるのは確実視され、そのことが景気の腰を折ることになりかねないと申し上げました。あの段階では台湾企業鴻海からの出資とりつけもままならない状況下であり、iPhone導入による携帯事業の大打撃によって息の根を止められれば完璧な破産状態に追い込まれかねなかったからなのですが、その後省エネ液晶「IGZO」狙いとも思われるサムスンの出資提携にこぎつけたこと、すなわちドコモ携帯の製造先であるサムスンという支援先確保は、イザと言う時にサムスン=シャープ統合というウルトラCが見込めたと言う点で、ドコモにとって願ってもない流れになったのです。

そしてさらにもうひとつ、今回のiPhone取り扱い報道の信ぴょう性を裏付ける最大のポイントでもある理由が、NECの携帯事業撤退のニュースです。
★「NEC携帯電話事業撤退」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0329/TKY201303280699.html

NECは正式発表はしていないようですが、どうやら撤退の事実は間違いないようで、中国国籍のPCメーカーLenovoへの事業売却で本決まりというのは既に業界筋で語られているところであります。NECと言えば、元祖二つ折り携帯をはじめとして富士通と共にドコモのガラケー・ビジネスを支えてきた運命共同体的携帯電話メーカーであり、ドコモとしてはiPhone導入後も国内メーカーシェアトップの富士通の生き残りはなんとか見通せるものの、NECへの悪影響は最大の悩みの種であったわけです。それが、海外勢への事業売却による撤退が決まるなら、政府ともどもこれに勝る朗報はないと胸をなでおろしているに違いないと、思うわけです。

それとNECのシェアの問題が実に微妙なわけでして、10年前には20%超のシェアでトップを走っていた同社の現在の国内シェアは7%足らず。年間4000万台の国内携帯電話出荷台数で計算すれば約300万台弱がNECの取り扱い台数なわけです。ここで重要なのは、この台数のドコモにおけるシェアです。ドコモの2012年度の販売計画は期中の上方修正を受けて1400万台となっており、NECのシェアは内約20%を占めています。この20%が何を意味するかです。

加藤薫社長が年初の「iPhone導入の可能性」についての発言を見るに、「販売台数の2~3割なら扱ってもいい」というものがあり、まさしく「2割」はNECのシェアに合致するわけです。さらに深読みをするなら、将来的にシャープがサムスンと統合したケースまで含めれば、NEC+シャープの販売シェア分はそっくり海外勢にとって代わられるわけで、上限で「3割」超のシェアをiPhoneに振り分けるという戦略は十分に成り立つわけです。すなわち、携帯事業から撤退したNECのシェア分約20%を当面のiPhone割り振りとして取り扱いを開始し、シャープ、サムスンの統合を視野に入れながら段階的に30%超までシェアを伸ばすという交渉カードを、ドコモが手にし既に交渉に入っていると考えていいのではないでしょうか。

残された問題はアップルの対応と、自社コンテンツを販売できないプラットフォームであるiPhoneに対するドコモの対応をどうするかでしょう。前者はアップルの胸の内ひとつですが、こだわりジョブズ氏亡き後のアップルがiPhone販売に関する頭打ち感と次なる一手に関する無策感を真剣に捉えているのなら、ドコモのiPhone導入に向けた歩み寄りは十分検討の余地があるのではないかと思うのです。となると問題は後者でしょう。

ドコモが販売台数確保にこだわるあまり、iPhoneのシェアを拡大させ過ぎることはコンテンツビジネスの先細りを意味し、確かに“ドカン屋”と化して収益環境を一気に悪化させることにもなりかねません。しかし転んでもただでは起きない官僚組織のドコモが描いている戦略は、恐らくそんなに単純ではないでしょう。「品ぞろえ」としてiPhoneの取り扱いを開始することで、ドコモは「アップル=iPhone」の内部事情を今以上によく把握できることにつながるわけで、むしろそのスパイ的活動にこそiPhone導入のメリットを見出し、iPhoneとの比較対照販売において勝てる商品・サービスづくりによるスパイ潜入逆転劇を虎視眈々狙っているのではないかと思ったりもするのです。

今月末とも言われるNECの携帯事業撤退の公式発表を受けた来月のNTTドコモ決算発表の場において、正念場加藤政権第二年度の今年度計画達成に向けた具体的施策が明らかにされるわけですが、上記のような考えを巡らせてみるなら、いよいよXデー発表に向けた諸条件は整いつつあると強く感じる次第です。

お知らせ~「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」の発刊について

2012-11-29 | ビジネス
既に拙ブログでもKindle関連エントリーで触れておりますが、このたびKindle対応電子書籍第一弾「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」を上梓いたしました。エレファントブックス刊450円です。Amazonならびに楽天ブックスにて好評発売中です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00AA6CJYE

Kindleをお持ちでない方も、アップルiPhone版およびAndroid版のスマートフォン、タブレットですとKindleの無料アプリをダウンロードいただければ簡単にお読みいただけます。PCの場合は、フリーソフトKindle For PCをダウンロードいただければOKです。

内容は、小職約30年にわたるビジネスマン生活(銀行員、新聞記者、業界団体プロジェクトメンバーとしての政界・官界との折衝役、企業コンサルタント、上場企業役員、起業家、街おこし仕掛人、ブロガー等)の中で、できる人たちとのお付き合で学び身につけてきた成功へのカギを握るビジネススキルを読者の皆様に伝授しようというものです。

フレームワーク活用法にはじまり、戦略的思考の構築法、コミュニケーションスキルの基本と成功する会議・ミーティング、必ず実績が上がる営業の進め方に至るまで、若手から管理者、組織運営者の別を問わず今日から使える実践的なビジネスの道具箱を公開しています。

本書につきましては、電子書籍の利点を活かして加筆、修正、差し替えなど今後のバージョンアップを随時無料でさせていただき、より一層充実したものにしていこうと考えております。

コーヒー一杯、タバコ一箱の値段で役立つスキルが手に入ります。ぜひこの機会にご一読ください。

なお、エレファントブックスさんでは、現在電子書籍無料購入チケットの配布キャンペーンを実施中ですので、そちらも併せてご覧ください。
http://www.facebook.com/pages/エレファントブックス/215435038560244?sk=app_327245887304042

キンドル電子書籍を出してみた~書き手のメリットを考える

2012-11-22 | ビジネス
Kindle Paperwhiteの発売により、19日いよいよ本格スタートとなったアマゾン・ジャパンのKindleストア。新時代に乗り遅れてなるものか、というわけでもなかったのですが、小職著作をこのタイミングでKindleストア電子書籍として上梓したしました。
「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51(エレファントブックス刊/450円)」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00AA6CJYE/

なぜ電子書籍なのか、今回の経験を踏まえてここでは書き手の立場から少しお話してみようと思います。私が電子書籍で著作を出すことにした理由分かりやすく説明するために、本書の概要をごく簡単にかいつまんでおこうと思います。

本書は、私の長年にわたるバンカー、新聞記者、業界団体、中央官庁折衝担当、起業家、街おこし仕掛人等の様々な職歴を通じて「できる人」たちから学びつつ取得し、現在の企業コンサルティングや執筆業務に役立てさせてもらっているノウハウを、思考、コミュニケーション、会議、営業等のジャンルごとに区分けしてお見せし、読者の皆様のお役に立てていただこうというもの。言ってみればマイ「道具箱」の公開です。

このビジネス「道具箱」というのが実は厄介な存在で、その都度使い方のポイントが多少変わったり、流行りの使い方があったり、付随して新しい道具が登場したり等々、手入れを入念にしておかないとすぐに陳腐化する恐れもあるのです。そう言った意味では、このあたりを紙ベースの書籍で取り扱うのはけっこう辛い。似たようなビジネス書が次々と出されては消えていっているのも、こう言った事情による宿命でもあるのです。

そこで私は電子書籍なら補完して余りあると考えました。何よりも書き手にとって大きなメリットは、第一版をリリースした直後を含めていつ何時でも改訂版のリリースが可能であると言う点に尽きると思っています。何か企業不祥事が起きたから書き足したいとか、書き変えたいとか、あるいはまるごと1章を差し替えたいとかでも、何の気兼ねもなく簡単にできるのです。

紙の書籍ではそうはいきません。内容の改訂は必ず増刷という多額のコストがかかる作業とセットであり、初版にしてもそれなりのコストをかけて刷りあげている以上、ある程度の部数がはけない限りは多少の改訂であろうともままならないのです。小説とか、エッセイとかの類ではさほどこのメリットは感じないでしょうが、ことビジネス書についてはこの自由改訂機能は素晴らしく革命的な出来事であると思っています。

今回企画した本書においても、定期的な中身の補修と共にあらたな章建ての追加などにも前向きに取り組み、中身をどんどん充実させていくことが可能であろうと考え、そのつもりで第一版をリリースしております。読者へのバージョンアップ・サービスこそが、電子書籍において読者にもメリットを供与できる書き手サイドからの最大の利点なのではないかと思うからです。この読者に対する著作側からのアフターフォローを各書き手がしっかりとおこなっていくならば、低迷久しい出版業界にあって、ビジネス書一冊あたりの販売寿命、販売部数は大きく伸びていくのではないでしょうか。

ちょっと売れると似たような著作を粗製乱造する書き手がよくいますが、それはいたずらに著者の書き手としての価値を下げることに他なりません。一冊一冊の著作を大切にし、その一冊を通じて書き手が成長していくということもビジネス書の書き手に期待されるところではないのかと思っています。さらにビジネスの観点から言えば、ビジネス書はビジネスのあり方を問いかける分野でもあり、IT技術を駆使した電子書籍化の流れによる変化を他のジャンルと同じように受動的に待つのではなく、積極的に変化を投げかけることも望まれるのではないかと思うのです。

もうひとつ別の観点で書き手側の利点をあげるなら、やはり価格面のメリットでしょう。現在ビジネス書の主流であるソフトカバーが1,300~1,700円。新書版でも800~1,000円程度はします。一方今回の著作で言えば発行形態を電子出版に限定したことで、それらと同等の約6万字を越える文字数収録でありながら450円でのリリースが可能になっています。今時、コーヒー1杯より安い。たばこ一箱レベルです。紙代、印刷代がかからないというのは本当に大きいです。購入検討に際して、簡単に手を伸ばしていただける金額であると言う点で、書き手に大いにメリットありと思います。

電子書籍販売運用上の問題点、課題点は、やはり買う前に読者がものを手にとって目次を見ながらパラパラと好きな部分を空けて見てみという、自由な“立ち読み”がしにくいと言う点に尽きるでしょう。この点に関しては、書店の利点でもある“立ち読み”機能の中に盛り込むのがいいのではないでしょうか。すなわち、電子書店来店者は手に取った本を例えば1回5分間までという時間制限付きで中身をすべてめくることができるという機能を持たせるのです。本が好きな人間にとっては、“立ち読み”の楽しさも書店に足を運ぶ立派な誘引材料ですから、それのあるなしが電子書籍の発展に大きく関わってくるように思います。

いずれにしましても今回の電子書籍出版を通じて感じたことは、電子書籍がいきなり紙媒体にとって代わることはないにしても、ビジネス書分野においては送り手側の工夫ひとつで、紙とは有効性の違う新たな媒体として大きく発展していく可能性が十分あるといったところです。