日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・31号

2009-03-31 | ブックレビュー
連日のブックレビューです。

★「マンデー・モーニング・リーダーシップ/デビッド・コットレル(東洋経済1300円)」

過去のベストセラー「チーズはどこへ消えた?」や「なぜ、エグゼティブはゴルフをするのか?」と同じ類の、物語風マネジメント・ブックです。リーダー・シップをテーマに全米で40万部以上を売り上げたというベスト・セラー。一人の中間管理職が著名なコーチとの毎週月曜朝のミーティングを8週にわたって実践し、リーダーシップの勘どころを学ぶと言うストーリーです。

さすがリーダー・シップ理論の本場アメリカ産と言った感じで、基本が染みてくるようにジワジワと理解できます。コーチが教えてくれることは日本のリーダーシップ本にも、あちこちに書いてある一般的な事ばかりなのですが、情景の絵づらが想い浮かぶような様が実に暖かく、まさに「リーダーシップ=コミュニケーション=ホスピタリティ」を全体のストーリー展開の中で学ばせてくれる工夫が素晴らしいです。

コーチの話で白眉は、最終週8週目。リーダーたるものは「常に学びの領域にいなくてはならない」というくだりです。
「自分の力を最大限に発揮するには、居心地のいい場所で満足していてはいけない。向上を目指し続ける必要がある」
「人は学び続けなければならない、ということは誰もがあっさりと同意する。だけど現実には、向上するための具体的な目標を立てないかぎり、何も変わらない」
「目標を立てると、いまの居心地のいい場所から出て行かざるを得なくなる」
などなど…。
実に明快で、読みすすんでこの章に至ると誰もが背中を押される思いでしょう。

主人公と同じ管理職もさることながら、中小企業経営者にとっては長く経営に携われば携わるほど普段意識をしにくくなるであろうリーダーシップについて、学びの多い物語であると思います。堅苦しくないので1時間コースで軽く読めます。パコ・ムーロの「エグゼクティブ」シリーズも個人的に好きでしたが、これも負けず劣らずです。

10点満点で9点。
マイナス1点は、ところどころアメリカ的な組織論を前提としていると思しき部分があり、若干ですが気になると言えば気になるので…。好みの問題もあるかもしれませんが、個人的にはかなりの良書であると思います。でも日本では売れないかな?

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・30号

2009-03-30 | ブックレビュー
★「「法則」のトリセツ/水野俊哉(徳間書店1200円)」

「成功本50冊勝ち抜け案内(光文社ペーパーバックス)」でおなじみの著者。今回はビジネスに関する「法則」を100以上にわたって羅列し解説しています。当ブログでも取り上げた「ハインリヒの法則」「ピグマリオン効果」「ジョハリの窓」等の広く一般に知られる理論から、「マインド・マップ」や「ブルー・オーシャン」「フェルミ推定」など、最近のベストセラー・ビジネス書のテーマに到るまでを「法則」としてひとくくりにして、個々に簡単な説明を加えています。

知っていると役立つ「法則」というのは世の中にたくさんあるもので、ビジネス書の類をあまり読んだことのない読者からは歓迎されそうですが、内容的にとり立てて特筆すべきものがあるという訳ではありません。むしろ、「法則」とそうでないもの、たとえば「法則」と「フレームワーク」を同類として扱っている点などは、違和感を覚えます。また「地頭力」「千円札は拾うな」「東大合格者のノートは必ず美しい」等々最近のベストセラー・ビジネス書からも、「法則」としてそのエッセンスが抜き出されていて、これを学術的に認知されたビジネス法則と同等に扱っている点も同様に違和感アリです。

その意味では、PART6「成功本の成功法則」は、既存の成功者の著書から成功への“最大公約数”的習慣だけに的を絞って抜き出したもので、この部分には他にないおもしろさがあると思います。「成功本50冊勝ち抜け案内」の焼き直しと言ってしまえばそれまでなのですが…。全体を通して言えることは、「法則本」というよりはヒット・ビジネス書の“イイトコどり”的なものであり、実に著者らしい本であると言えるでしょう。

というわけで、本の見かけの切り口はともかく内容はこれまで同様のダイジェスト本。もちろん書いてあることは、ビジネス書初心者にはタメになることも多いのですが、ひとつひとつの内容は浅いので、実践では雑談ネタに使える程度かなという印象です。この手の本はビジネス書の“目次”として、関心のある部分の元本を読むという使い道が有効かもしれません。

10点満点で6点。
悪い本ではありませんが、どう読んでもダイジェスト本以外のなにものでもないので、これ以上の点数は無理ですね。

高松宮記念

2009-03-29 | 競馬
春のGⅠシリーズ開幕です。第一弾はスプリント決戦高松宮記念です。

昨秋のGⅠスプリンターズ・ステークスを圧勝した1番人気の④スリープレスナイトは、その後順調さを欠いてそのGⅠ以来半年ぶりのレース。能力的には抜けている印象ですが今回は“消し”たい馬の筆頭ですね。これで来られたら仕方なしです。良血2番人気⑧ファリダットも人気先行という印象で買いたくないパターンです。

中心は前哨戦阪急杯の勝ちっぷりが見事だった⑯ビービーガルダン。相手は、父キングヘイローもこのレースで悲願のGⅠを奪取した⑬ローレルゲレイロ、本調子前でも昨年の1、2着馬に敬意を表して⑩ファイングレイン、⑨キンシャサノキセキへ。

⑯から、⑬-⑯、⑩-⑯、⑨-⑯
ワイドで十分という感じの配当です。
初っ端ですから軽めに遊びましょう。

<NEWS雑感> 3・27号 「高速道路1000円、内閣人事局」

2009-03-27 | ニュース雑感

●「高速道1000円」スタート~システム改修は1か月遅れ●

ETCを装着した普通車やオートバイを対象とした、地方の高速道路で土日祝日の料金を上限1000円とする新料金割引が28日午前0時に始まります。地方の観光振興などによる景気刺激を狙った政府施策ですが、一方では高速道路の渋滞も懸念され、土日祝日のビジネス・ユーザーへの悪影響も懸念されています。

ちなみに、20日から「上限1000円」が先行実施された東京湾アクアラインと本州四国連絡高速道路では、20~22日の通行量が前年同期比でそれぞれ22%、62%の大幅増となっており、渋滞も発生する事態となりました。高速道路通行料の値下げは利用者に嬉しい半面、一部とはいえビジネスの足を引っ張るようでは景気刺激策として果たしてどうなのか、ちょっと首を傾げたくもなります。

加えて話題は、「地方-大都市圏-地方」のルートで走行した場合、当面は地方区間の料金は2回分の2000円を徴収されるという“詐欺まがい”のシステム。こうなった理由は単純で、システム改修が遅れているためとのこと。これが解決するのは4月29日からだそうで、中途半端なスタートにどこかスッキリしないモノを感じます。

高速道路会社関係者からは「政府が年度内スタートにこだわり続け見切り発車になった」との声も聞こえていますが、本当にそうなのか、政策決定時に高速道路会社が「実施はまだ先」と甘く見てのんびり構えてたせいではないのか、政府の景気刺激策の完全スタートを遅らせる結果になった訳で、高速道路会社はその理由を明確に説明する責任があると思いますが、いかがなものでしょうか。


●内閣人事局創設関連法案、自民が了承●

自民党は、国家公務員の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」創設を柱とする国家公務員法改正案など関連法案を、27日了承したそうです。この問題の焦点は、内閣人事局長ポスト。当面は官僚ポストである官房副長官に兼務させるとの案で、官僚の悪しき既得権益のはく奪による「天下り」廃止を目論んだ「官制改革」の目玉が、大騒ぎの末結局は官僚の思惑どおりの決着を見ることになりそうです。

政府は当初、事務の副長官の兼務を想定した案を提示したものの、党内で「政治主導にならない」との異論が噴出。“改革派”の中川秀直元幹事長や塩崎恭久元官房長官らが強硬に反対し二転三転したものの、執行部が最終的にはまたもや「首相の意向」という理由で押し切った形になったようです。

どこまでも官僚の言いなりの太郎ちゃん。本当に何の弱みを握られているのでしょうか。行政改革推進本部の中馬本部長に至っては、「来年4月に麻生さんが首相かどうかも分からない。(今法案を成立させても)官房副長官が国会議員か事務方かは時の政権が決めればいい」などと、無責任極まりないことを言う始末。まったく、どうなっているのでしょう。何のための法案づくりと思っているのでしょうか。

首相はじめ国会議員諸氏は、本気で行政改革の実効性最優先を大前提とした議論をして欲しいものです。行政改革の進展こそ、財政再建、景気回復に向けた“本丸”なのですから。小沢問題に紛れて「大山鳴動して鼠一匹」ということにならぬよう、一層この問題への国民の注目度を上げるようなマスメディアの報道展開に期待します。

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・26号

2009-03-26 | ブックレビュー
★「コンサルタントの習慣術/野口吉昭(朝日新書740円)」

個人的に本田直之氏と並んで敬愛するコンサルタント野口吉昭氏の新刊です。前作「コンサルタントの質問力(PHPビジネス新書)」がベストセラーになっての新作と言うことで、各書店ともかなり目立つ扱いをしているように思います。私は、「質問力」よりもさらに前作の「コンサルタントの現場力(同)」こそが、氏の真骨頂たる著作であると思っているのですが…。

本作は、自身の仕事術を「習慣」と言う切り口を軸にして解説する一種のノウハウ本と言えると思います。現在ベストセラーを続けている本田直之氏の「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」と同じ傾向の、人気コンサルタントが考える成功の「秘訣」を明らかにしているものです。内容的に、こちらのほうがややカタ目な感じはします。その分、大衆的なウケは本田氏の著作に劣るかもしれません。

全6章からなりますが、ポイントは第1章「習慣をマネジメントする」に集約されているように思います。「見える化」と「前倒し実行」と「継続」、これこそが習慣化のキーメカニズムであるとして、「思考力」「行動力」「創造力」「忍耐力」「牽引力」を鍛えるための「習慣」化すべき要素を継続章で解説しています。

この本、もちろんそれなりにおもしろさはあるのですが、1章に比べて2~6章は一部他の著作とのダブりありで目新しさはイマイチ、また「創造力」「忍耐力」あたりは他の引用事例が多くやや展開的な苦しさも感じさせられるかなという感じもあります。野口氏のコンサルタントとしての仕事術を解説したものとしては、「現場力」「人間力」「思考力」「実践力」という切り口で、ビジネス・シーンにおける成長のヒントを説いた「コンサルタントの現場力」に“軍配あり”と言う印象です。

そんな訳で、本作は10点満点で7点。
一連の著作の中で判断するとこの点数ですが、この1冊だけを単独で考えるなら8点以上。中身はさすが一流コンサルタントといえるレベル感に十分あると思います。

祝優勝サムライJAPAN「リベンジの悪魔」星野に勝った「若大将」原

2009-03-24 | ニュース雑感
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、原辰徳監督率いる日本チーム「サムライJAPAN」が、2大会連続での世界一に輝きました。おめでとう!

北京オリンピックで惨敗し、銅メダルすら獲得できなかった「星野JAPAN」。WBCの代表監督選びでは、星野氏の色気ムンムンの中モメにモメ、ようやく原辰徳巨人軍監督を指名し大会に望んだのでした。星野JAPANと原=サムライJAPANのそれぞれを率いた2人のリーダー、星野仙一、原辰徳の成否を分けたものは何だったのでしょう。

二人のリーダーとしての成否を分けた鍵は、野球人としての生い立ちに起因する「宿命」にあるように思います。星野仙一は法政三羽ガラスと同期で明治大学のエースとして活躍。ドラフト会議で巨人からの1位指名を約束されるも反故にされ、中日ドラゴンズに入団します。このときの怒りが彼のその後プロ野球生活の原動力であり、巨人への復讐に燃えた“リベンジ・エネルギー”が彼を支え続けてきたのでした。

一方の原辰徳は、甲子園の大スターから東海大学の4番として活躍し、ドラフトの超目玉として4球団から1位指名を受けるも、強運に支えられ1/4の抽選をくぐり抜けて希望通り巨人軍に入団。さわやかイメージ“の若大将”として、生涯巨人軍をまっすぐにリードする役割を果たしてきたのでした。最初の巨人軍監督をクビになった後も、リベンジに燃えるのではなくじっとまっすぐに「復活」を信じて、ただただ待っていたのです。そして監督復帰と昨年の日本一。あまりにも好対照と言える二人なのです。

星野氏は引退後も“リベンジ・エネルギー”でポスト長嶋の座を勝ち取り、北京の日本チームを率いたものの惨敗。WBCの監督の座を狙って再び“リベンジ・エネルギー”を燃やしていました。そこに鋭い一言を投げつけたのがイチローです。「北京のリベンジとか言っている人は願い下げ」であると。あの一言の重みが今日ハッキリしたと感じました。“リベンジ・エネルギー”は所詮「復讐の炎」であり、不純なエネルギーを発するリーダーには、おのずと限界があるのです。まっすぐ前向きな気持ちの原監督には、皆が素直な気持ちでついていくるのだということを、まざまざと見せつけてくれました。

原監督の気持ちがいいほどまっすぐなリーダーぶりは、今日の試合で9回裏あと1アウトで勝利の場面を追いつかれた時の、「しかたがない」という笑顔に現れています。あの笑顔が延長10回快心の勝ち越し劇を呼び込んだのです。北京の星野氏は、こんな場面で必ずや「鬼の形相」をしていたものです。それを見るたび、歪んだ“リベンジ・エネルギー”が裏目に出た時、“悪魔”を呼び込む魔力に転換したように思えました。

星野氏とは好対照な原監督のさわやか指揮の下、本日決勝戦で延長の最後の最後に試合を決めたのはやはり宿命の人イチローでした。“リベンジ・エネルギー”での大会参加を批判した彼が、ここ一番でやってくれたのです。執念の勝ち越し2点タイムリー。役者が違います。「神が降りた」とその瞬間を、イチロー本人が祝勝会でマイクを向けられそう言いました。まさに「神」が“リベンジの悪魔”に勝った瞬間でした。

マイナス・エネルギーでのリーダー・シップは、決して真の力にはなり得ない。プラス・エネルギーのリーダー・シップには決してかなわない。「復讐=リベンジ」を原動力にしたリーダー・シップは要注意!改めて学ばせていただいたWBCでした。


ユニクロに学ぶ不況下の「値ごろ感」戦略

2009-03-23 | マーケティング
ユニクロが絶好調です。2月の衣料品専門店売上を見るとこの大不況にあって、同社は前年同月比で4.2%増、09年8月期の上期締め9~2月売上では前年同月比12.9%増と二ケタの増収を記録するなどこの時期驚異的な好調を続けています。

不景気に強いと言われて久しいユニクロですが、同社好調の要因は大不況下の安価販売との短絡的考えは少々早計のようです。なぜなら、同じ2月の衣料品専門店売上で、ユニクロと並ぶ安価販売の雄であるシマムラが前年同月比9.2%の減収と苦戦を強いられているからです。ユニクロとシマムラ、その明暗を分けたモノは何でしょう。

ユニクロに関する日経MJの調査によれば、この一年でユニクロでの買い物を増やした人は全体の約2割で、ユニクロの「品質が良くなった」34%、「おしゃれでデザインが良くなった」35%と、3割以上の人がユニクロの“変化”を評価し、その結果、「百貨店よりもユニクロの方が“値ごろ感”がある」とした人は65%にも上っているのです。

「値ごろ感」。まさに現時点で不況に打ち勝つ流通のキーワードらしきものと感じます。ユニクロの好調とは好対照に大苦戦が続く百貨店、ユニクロと同じ「安価販売路線」を歩みながら思わぬ苦戦のシマムラ、ユニクロにあってこの二者にないものは、まさにこの「値ごろ感」ではないのでしょうか?では、そもそもこの「値ごろ感」とは何なのでしょう?広辞苑にある「値頃」の項には、「値段がその品物の品質と相応していること」とあります。しかし今時の「値ごろ感」は、多少意味が違うかもしれません。

私なりの解釈は、「値ごろ感」=「コスト・パフォーマンス」です。自動車業界で今話題の“ハイブリット戦争”。ホンダのインサイトが189万円で予約好調と見るや、あのトヨタがプリウスの価格を40万円近く下げて同じ価格まで値下げする発表をしました。燃費と商品化キャリアで比較すれば、同価格なら明らかにトヨタが勝てるのです。今までのトヨタなら、同価格まで下げることはせず、価格を近づけはしても差額は「トヨタとホンダの差」として、“王者の戦い”を貫いたはずです。今回なぜ同価格まで値下げなのか。この戦略をトヨタの危機感の現れとの見方もありますが、私はマーケティング・キーワードを「コスト・パフォーマンス」であるとみた上での戦略であると思っています。

では、この「値ごろ感」=「コスト・パフォーマンス」はどうつくられるのでしょうか?再びユニクロの話に戻ります。ユニクロの努力はまず圧倒的な品質追求です。大人気の「婦人向けウォッシャブル・ニット」は、羊毛とアクリルの最適な混合比率を割り出すのに百回を超える試作を繰り返したそうです。また東レとの全面提携により、繊維に関する半端でないノウハウを取り込み原糸から見直した、品薄が続くヒートテックは重量が1割も軽くなったと言います。まさに本家トヨタも真っ青のカイゼンぶりなのです。

さらに「値ごろ感」=「コスト・パフォーマンス」を増すためのイメージ戦略にも抜かりがありません。昨年来、人気モデル山田優や女優藤原紀香、吹石一恵をCMに起用して、高付加価値イメージを創造することで商品の相対的な「お得感」を生み出しているのです。こんな厳しい時期にあって、ブランド戦略にも余念がないと言えるのです。

このようにユニクロは、「品質」と「イメージ」二正面での向上戦略が見事に実を結び、現在の“一人勝ち”状態を生みだしたと言っていいでしょう。単に大不況を口を開けて待っていた訳では決してないのです。本来“追い風”であるはずの不況下にありながら、苦戦が続くシマムラとの業績の差は、このあたりにあるとみています。

消費者の嗜好は不況が長期化すればまた大きく変わる可能性があり、いつまでも「値ごろ感」=「コスト・パフォーマンス」がキーワードであるとは限りませんが、好景気で豊かな生活を謳歌していたものの突如不況に突き落とされた現時点での消費者心理は、「お金は大きく節約したいが、水準は落としても徐々に」という感じなのでしょう。対消費者マーケットでは、今しばらく「値ごろ感」=「コスト・パフォーマンス」をキーワードとして生き残りをかけた、各社の戦いが続くものと思われます。

〈70年代の100枚〉№65 ~ 史上初!初登場全米№1の快挙作

2009-03-21 | 洋楽
<70年代の100枚>にこれまで複数作品が登場しているのは、ビートルズ、ストーンズ、フー、イーグルス、ドゥービー・ブラザーズの4バンドとロッド・スチュワートの5アーティスト。ソロでは2人目となる2作品登場アーティストはエルトン・ジョンです。

№65「キャプテン・ファンタスティック&ザ・ブラウンダート・カウボーイ/エルトン・ジョン」

エルトンの70年代の全米でのレコード・セールスは、すさまじいものがありました。ベスト盤を含めて72年の「ホンキー・シャトー」から75年の「ロック・オブ・ザ・ウェスティーズ」まで、なんと7作品が連続全米№1を記録(計39週)。中でも特筆すべきは、75年発表のこの作品です。ビルボード・アルバムチャートに初登場で第1位という、ビートルズさえも成し得なかったポピュラー音楽史上初の一大快挙を成し遂げているのです。

74年当時、米国でのエルトン人気は徐々に盛り上がりつつありましたが、それは年の後半から一気にスパークします。ジョン・レノンのシングルにエルトンがゲスト出演した「真夜中を突っ走れ」がシングルチャートの№1に輝き、11月にニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンで行われたエルトンのライブにジョン・レノンが飛び入りして、大反響を呼び起こします(ジョンとヨーコがヨリを戻した生前最後のライブです)。

クリスマス・シーズンにはベスト盤の「グレイテスト・ヒッツ」が発売されて、10週連続№1を記録。引き続いてリリースされたジョンとの共演でのビートルズ・ナンバー「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイヤモンド」も難なく№1に輝き、人気はピークに。元ビートルズの威光も受けて、彼の人気は想像を絶するほどのレベルに達していたのです(この人気、日本には全くと言っていいほど伝播しませんでしたが…)。

今の時代では、音楽ソフトの販売データが瞬時にチャート形成データに反映されるため、ビルボード誌のチャートで初登場№1というのは決して珍しくない出来事ですが、アナログ集計時代の当時としては大変な出来事だったのです。要するに当時のエルトン人気は、発売数週間前からの予約だけでチャート・トップに躍り出るような販売数を稼いでしまうという驚異的な人気であったということなのです。この陰には、当時「エルトン=ジョン=レノン」と言われ、まるでデュオのように扱われたことで、元ビートルズであるジョンの根強い人気による後押しも少なからずあったようには思います。

さて肝心の中身ですが、エルトンと作詞を手掛けるバーニー・トーピンの二人の成功に至る歴史を全10曲に綴った、至ってプライベートなテーマのコンセプト・アルバムです。テーマの目新しさはあるものの、果たしてこんな歴史的快挙をなしとげるほど素晴らしい出来なのかというと、少々首をかしげざるを得ません。もちろんこの時代のエルトンのアルバムが悪かろうハズはないのですが、彼のそれまでの創作水準からみれば正直言って標準レベルといった感じなのです。この点は最高傑作の呼び声が高い「グッドバイ・イエロー・ブリックロード」との聞き比べをしてみれば明らかです。楽曲、演奏、アレンジ…、誰がどう判断してもこちらの“負け”は明白であると思います。

その原因として、72~73年の「ホンキー・シャトー」「ピアニストを撃つな!」「グッドバイ・イエロー…」の3作はすべて、フランスのシャトースタジオでの制作であるのに対して、74~75年の「カリブ」、本作、「ロック・オブ…」の3作は米国カリブランチでの制作である点が思い当ります。この6作品、「ロック・オブ…」を除きプロデューサーや録音メンバーに特段の変動はないものの、前半3作品と後半3作品では明らかに印象が違うのです。楽曲にも音にも深みがなくエルトンの魅力が半減と言う感じで、米国制作は英国人のエルトンにはしっくりこない、今思うとそんな印象に落ち着きます。

このように本作は作品の水準は70年代を代表するレベルにはないのですが、「史上初のチャート初登場第1位アルバム」という金字塔は歴史的に語り継ぐに値することであり、その意味では確実に70年代を代表する1枚であると言っていいと思います。

経営のトリセツ56 ~「見える化」基軸の新人教育

2009-03-19 | 経営
今年も新人研修の季節がやってまいりました。弊社が新人研修を実施する際のポイントを少々お話します。

基本は、ここでも「見える化」です。もちろんそんな難しい話をする訳ではありません。簡単に言うと、何も見えていない状態で入社してくる新人くんたちに、弊社に与えられた時間内で、できる限りの「見える化」をしてあげる訳です。「何も見えていない状態」は「暗闇」を想像すれば分かると思いますが、誰でも不安です。ですから、そこに少し明かりを灯してあげれば多少は安心して入っていけると言う訳です。

新社会人として歩き始めた彼らは、まさに「暗闇」に放り出された状態です。そんな彼らの「暗闇」で、まず照らしてあげるのは「行先」です。研修で私は一番はじめに「働くということ」というお話をして、一人ひとり「働く理由」を話させます。はじめに「自分は何のために働くのか」ということを意識してもらうためです。これは一般のコンサルティングに置き換えれば「目的の見える化」にあたります。どんなプロジェクトでもそうですが、「目的」が見えないことには、自分が今何に向かっているのかが分からずメンバーのモチベーションはあがらないのです。

「生活のため」「親離れして自分の欲しいものを思いっきり買いたい」「ブランドものを買っておしやれがしたい」「海外旅行に行きたい」「将来自分のお店を持ちたい」・・・。仕事に就いたとたん環境変化への対応で精神的に忙殺され、不安感と緊張感の中で忘れがちな、心の奥底にあるそんな「働く目的」たちを呼び覚ましてあげるのです。

「目的地」を照らしたら、次に照らすのは「今いる場所の周囲の風景」です。これは「会社って何?」というお話です。一般コンサル的には「環境の見える化」にあたりますね。自分が今入った会社というところはどういう場所なのか、なぜ会社という形で存在するのか、会社は何をするために存在しているのか、その中で働く社員は何をすべきなのか・・・。そんな話の中から「会社の目的」をぼんやりとでも理解させる訳です。

「目的地」と「周囲の風景」が分かったら、後は「行き方の見える化」をしてあげます。「行き方」とは、組織や顧客との関係の中で上手に前にすすんでいくための「方法」や「知恵」の伝授です。すなわち、「行き方」=「コミュニケーションの基本」を教えてあげるわけです。「自分の思ったことを伝えることの大切さ」「相手の話をよく聞くことの大切さ」「報・連・相の重要性」などのお話がそれにあたります。

新社会人導入研修で覚えられることはこの程度が精一杯です。

自前で新人教育をされている会社では、「自分の目的を確認すること」「会社の目的を知ること」「コミュニケーションを大切にした行動をすること」、この3点をぜひ分かりやすく話してあげてください。それともう一点忘れずに、困ったとき、悩んだときの相談窓口(担当)を必ずつくってあげてください。相談相手がいれば辞めずに済んだのにと言うケースは、精神的にモロい今の新人くんたちには意外に多いのです。

日テレ“バンキシャ事件”に見る、テレビ報道の“大甘”

2009-03-17 | ニュース雑感
昨日はTBSの話、今日は日テレの話です。

ここ数日既報のとおり、日テレ報道番組「真相報道バンキシャ」で取材先の発言を信じ虚偽情報を放送。取材先が偽計業務妨害の容疑で「告訴→逮捕」されるに至り、番組自体が一気にヤリ玉にあげられる展開になりました。この問題で昨日、久保伸太郎日テレ社長が辞任表明するに至り、事件は新たな局面に入っています。番組は昨年11月に放送され、岐阜県の元建設会社役員の証言をもとに、県が裏金づくりをしていると報道。県が調査をした結果事実を確認できず、偽計業務妨害でこの元会社役員を告訴。岐阜県警は今月9日、同容疑で元会社役員を逮捕したというものです。

日テレの報道機関としての問題点は同番組内での謝罪説明ではからずも明らかになりました。今月1日の放送で謝罪した福沢朗キャスターは、謝罪はしたものの「手口が巧妙で見抜けなかった」「取材の手法に間違いはなかった」と弁明したそうです。タレこみ取材の“裏トリ”は、取材における「いろはの“い”」です。それをしないで「取材手法に間違いなし」とは、寝ボケもいいところ。電波(=テレビ)における取材姿勢の甘さと報道機関の責任に関する問題認識の欠如を露呈した形となりました。

このような、苦しい“弁明”で言い逃れをしてはみたものの、結局はトップ辞任という展開に。おそらく読売新聞時代に記者経験のある久保社長の判断として(あるいは、同じく記者出の読売グループ首領ナベツネ氏の指示か?)、テレビ業界の常識で考えるほど軽い問題ではないという判断に至ったのではないかと思われます。余談ですが、テレビ業界の常識のズレを表す出来事が、今回もうひとつあったそうです。昨日の社長辞任会見で当初「各社1名カメラ不可」なる日テレ提示の条件の下会見を開き、大モメにモメて条件撤廃で会見をやり直すという醜態も演じたというのがそれです。まさに電波(=テレビ)の報道責任に関する認識の甘さここに極まれり、ですね。

そもそもテレビの報道姿勢の甘さは今始まった問題ではありません。完璧な報道機関である新聞と違って、テレビは娯楽部門が主流であり報道局は傍流扱いで昔から新聞社に比べて圧倒的に手薄なのです。しかも新聞は原稿がなければ成り立たないがために原稿の客観性が極限まで求められますが、テレビは報道とパブリシティの線引きが甘い上、画像重視のため刺激的な「絵」が撮れることに命を燃やすという文化を持った、ある意味かなり危険な媒体なのです。過去の度重なる制作部門の“ヤラセ”事件の原因も、常にそこにありました。今回の原因も報道部門までもがこの文化にあぐらをかいて、「下請け任せ」や「裏トリ軽視」になっていることにあると思えるのです。

日テレだけでなく全テレビ局は、今回の事件を反省の機会として捉え、報道番組の安易な下請け依存や手抜き取材の横行を二度と起こさないという誓いの下、新聞社並の報道倫理の確立に向けて会社ぐるみで本気で取り組むべきであると思います。