日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ52~“突発対応”をモラール・アップに活かす!

2009-02-06 | 経営
経営者・管理者が、突発事象対処的なイレギュラーな仕事の担当決めの際、部下をいかに使い分けるのが効果的か、というお話です。

社内あるいは部署内で突発事件や経営環境の激変等で何か解決すべき問題が発生した時のことを思い浮かべてください。当該テーマに直結する業務の部署・スタッフが明確な場合は当然業務分掌に従った対応策を検討し、当該部署責任者や担当スタッフに対処を指示してあとは進捗を見守るということになるでしょう。では、明確な責任部署や担当部署、あるいは担当者が決められないケース、問題が複数部門にまたがるようなケースではどうしたらよいのでしょう。

こんな場合、大抵はまず関係者ミーティングがもたれ、その召集者たる経営者や管理者は、集められた中で一番優秀と思しき最も信頼感のある部下を責任者に指名して、あとは下にスタッフをつけるか彼に指名させるかで、問題の解決をはかろうとするのではないでしょうか(大企業の場合は、細かい分掌が明確化されておりまたスタッフの平均レベルが高いケースもあり、状況はかなり異なると思います)。問題深刻であればあるほど、重要性が高ければ高いほど、その傾向は強いように思います。

確かに一番優秀と思しき信頼の厚い部下に仕事を任せれば、最もよい対応策の策定や安心感の高い着地点を見つける確率はかなり高いでしょう。個別事案の短期的な結果だけを求めるだけなら、そのやり方で構わないかもしれません。あるいは官僚の世界のように、キャリア、ノンキャリアの明確な区分けがあり、特定のエリートだけを分別教育していくのなら話は別でしょう。しかしながら中小企業は限られた経営資源の下、未来永劫の発展を目指して前進を続けていくのであり、短期的な成果や部分的成果よりもむしろ長期的展望に立ちそのすそ野が広がるような成果を求めなくては、継続的発展は望めないのです。

企業にとって長期的展望に立った成果の最たるもの、それは人材育成でしょう。人材の育成は決して短期的に結果が出ない、でも永続的発展を考えるときに最も重要な経営命題でもあります。対処すべき突発事象が発生したときこそ、この人材育成のまたとないチャンスなのです。そのチャンスに、一番優秀な傍から見ても信頼されていると思われるスタッフに仕事を任せたのでは、指名の当人は「面倒くさいけど、俺しかいないんじゃ仕方ない」ぐらいに思うでしょうし、周囲は「ヤツが一番できるんだから、それでいいじゃん」と感じサラッと流すでしょう。すなわち、せっかくの機会を何の啓発剤にも転化できず、№1スタッフと他のスタッフ力の差は開くばかりなのです。

そこで長期的な観点で組織力を高めるために、対処すべき突発事象が発生したときには、プロジェクト・リーダーなど中心的役割を担う立場を、候補となるスタッフ中で2番目に優秀と思われる者、1番手の陰に隠れた2番手を敢えて指名して対応策を検討させることをおすすめします。そうこの“2番手指名作戦”こそ、突発事象対応を利用した「職場モラール・アップ→レベルアップ策」なのです。

指名を受けた者は「ヤツを差し置いて俺?」と意外に感じるかもしれませんが、決して悪い気はしていないはずです。「この手の仕事は君が一番だと思っているから、よろしく頼むぞ」ぐらい、そっと耳打ちでもすればもう完璧です。一方1番手には、「君は今回ひとつ上のポジショニングでの仕事に慣れる意味で、君にしか頼めない高所から大局的にみた側面フォローを頼むよ」と耳打ちすればOKです。

これで、2番手も1番手もやる気アップ間違いなし!このような「期待の言葉をかけられた者はかけられない場合よりも、断然成果が上がる」という人の心理は、「ピグマリオン効果」として広く知られています。「期待感」を伝える意外性のある指名も重要ですが、単に指名するだけでなくその際の小さな声かけが大きなポイントでもあります。また、問題の重要性が大きければ大きい程、その効果も大きくなるのです。

このように突破事象対処法の活用によって、2番手のモチベーションを上げつつ、1番手のプライドもしっかりフォローすることで、複数スタッフのレベルアップによる組織活性化作用での全体水準の向上が期待できるのです。もちろんやってみた結果、仮に2番手の対処結果が1番手が担当した場合の期待値を下回ったとしても、比較論的な評価に立った文句を口にするのは絶対にタブーです。目的はあくまで長期的展望に立った人材育成、組織の全体のレベルアップにあるということをお忘れなきように。

ルーチンの仕事の中で、伸び悩みスタッフの成長を動機付けするのは至難の業です。ルーチンではなかなか成果が出にく「ピグマリオン効果」も、突発事象のようなイレギュラー対応では意外なほど効果を発揮するものです。突発事象対処は使い方ひとつで、伸び悩みスタッフのモラール・アップと育成の場として活用できると言うことは、経営者や管理者の記憶に留めておいてよい方策であると思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿