日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

新時代のキーワード「オープン・イノベーション」とは~AllAboutさん拙担当コーナー更新されました

2015-04-30 | 経営
AllAboutさん拙担当コーナー「組織マネジメントガイド」更新されました。
◆経営の新たなキーワード、オープンイノベーションとは

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/454431/

JR東日本「先読みの甘さ」という組織風土に危機感を覚えるこれだけの理由

2015-04-15 | 経営
念願の上野東京ラインが開通から1か月。熊谷在住で東京との行き来を頻繁にする私からすると、この待ちに待った大変便利なダイヤ改正は本当に助かっております。たかだか上野―東京間に新しい線路をひいて高崎線と東海道線をつなげ(同時に、宇都宮(東北)線、常磐線も東海道と接続)直通運転をしただけの話ですが、乗り換えなしで東京、新橋、品川まで行けると言う便利さは、何ものにも代えがたい大改革であったのです。

そもそも今回の上野東京ライン開通の主な目的は、朝の通勤時間帯の上野駅および上野―御徒町間の異常な混雑を緩和することであったと聞いています。果たして、目的は十分に達せられたようで、上野―御徒町間はもとより朝の山手線、京浜東北線は見違えるほど乗車が楽になったと言う声がたくさん聞かれています。

接続初日、二日目は土日であったこともあり、歓迎ムード一色の上野東京ライン開通でしたが、三日目月曜日からは少々様相が異なってまいりました。利便性の面で恩恵の薄い東海道線利用者からの苦情です。恩恵どころか「JR東日本が余計なことをしてくれて、朝の一部車両編編成が変わったこともあり、従来以上の大混雑で途中駅から乗り込めなくなった」「従来、帰りは東京駅始発で座って帰れたのに、座れなくなった」等々のクレームが、翌週1週間はネット上に大噴出ししまったのです。

今回の上野―東京ライン開通を人体に例えてみますと、心臓疾患を患った患者に外科的治療を施す際に、バイパスと言う新たな血液の通り道を作って血流を良くするなら問題ないところを、それが何らかの理由によりできないので血流の流れが悪いところを流れる血液の量を減らし、従来の血管に減らした分の血流を既存の元気な血管につないで、血液の一部をそちらに迂回させる治療をしたと考えれば分かりやすいと思います。

この場合に、命がかかわる問題であるので当然と言えば当然ですが、う回路を作って他の血管に従来以上の血液が流れることで健康面から他に支障が生じないか否か、入念な検討がなされるはずです。企業が課題解決をおこなう時もまた同じです。

従来の体制の変更により課題解決対応を検討する際には、先のバイパス手術のように新たな仕組みを加えて一方的に改善だけが見込める場合はその限りではありませんが、従来の仕組みをいじって一部の改善をはかる場合は、変更によって生じるマイナス効果は確実にシミュレーションして把握をし、対応の可否を最終決定することになります。

JR東日本も、日本に冠たる大企業ですから当然のことながらこのシミュレーションは事前におこなっていると思うのですが、上野―東京ライン開通に伴い発生している多くの東海道線利用者からの利便性低下、サービス低下に関する大量クレーム発生はどうしたものかと、首をひねっておりました。

こんなことを考えながら1か月が過ぎようとしている最中に、山手線、京浜東北線が長時間にわたり不通になると言う事件が起きました。線路敷地内の送電支柱が倒れて起きたと言うこの一件、はじめはあまり関心を持っていなかったのですが事件発生の経緯を聞くにつれ、オヤッと思いました。

目に止まったのは、「JR東日本によれば10日には支柱の傾きを確認しており、週明け13日に補修工事を行う予定だったと。素早く応急処置をしていれば防げた事故であったことは間違いない」という報道です。私の頭に浮かんだのは、「先読みの甘さ」という言葉。上野―東京ラインの一件とこの送電支柱倒壊の共通項と思える、言葉としてです。

最近世間を騒がせた同社関連の事件でもうひとつ思い浮かぶのは、東京駅開業100周年記念スイカの発売大混乱事件です。昨年12月20日に限定15,000枚の予定枚数で販売を決めたこのスイカ、発売日に東京駅にはこの限定スイカを求めて9,000人以上の人が押し寄せ、現場は大混乱に。JR東は一旦スタートした発売を急遽中止。現場は暴徒と化した多くの人々と駅員の間で小競り合いが続きました。これまた「先読みの甘さ」以外にありません。

一件全く異なる事象に思えるこれらの事件は、実はすべて同じ「先読みの甘さ」という想定キーワードで結び付けることができるわけです。このような流れから何を読み取るべきかと言えば、JR東日本という企業組織に脈々と流れる企業風土に対する警鐘でしょう。

記念スイカの事件はJR東の企業姿勢としての信用問題にかかわるものでありました。また上野―東京ラインにおける一部路線でのサービス向上とトレードオフでの東海道線の混雑は、安全性の面からみれば確かに大した問題ではないのかもしれませんが、自社のヘビーユーザーに対すいサービス低下と言う観点からすると、サービス業としてこれでいいのかという問題提起につながると思います。

そして今回の支柱倒壊事件は、一歩間違えれば多くの人命の危機にも及んだかもしれないという、「先読みの甘さ」という企業風土がもたらすさらに重要なリスクを顕在化させた重大事象であったと思います。JR東日本には、個別事例の検証と再発防止に努めることが求められるのは当然のこと。同社経営陣には、上記のような観点から組織風土変革と言うより大きな視点に立った抜本的改革に速やかに取り組んでいただきたい。今は、「先読みの甘さ」が大事件を引き起こさないことを切に願うばかりです。

今こそ、NHK民営化議論を盛り上げませんか

2015-04-09 | 経営
筑波大学のシステム情報工学科の視覚メディア研究室、NHKが写らないアンテナを考案したというニュースは実に興味深いです。なぜこのような研究が国立大学の教授指導の下で行われたのか、どうやら現状を見るにNHKの公共放送らしからぬそのおこないの数々に、「NHKを受診しない自由があってもいい」ということから研究開発されたもののようです。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/158752

そもそも今このアンテナが話題になる背景は、以前から時折問題になりつつも一向に止まないNHKの不祥事体質にその体質を問う風潮があると思われます。特に現時点で大きな話題になっているのは、「クローズアップ現代」のやらせ問題。私は以前にもこのページで書いていますが、サラリーマン時代に勤めていた会社でプレス担当してNHKのやらせ取材の被害にあったことがあり、今回の事件もさもありなんという心鏡で受け止めております。
http://www.sankei.com/entertainments/news/150409/ent1504090004-n1.html

私が被害を受けた事件はもう20年ほど前の古い話ではありますが、「おはようニッポン」という番組でとある都市銀行の女子行員が病死し過労死問題として遺族が勤務先の銀行を訴えたと言う事件があり、その関連で私がいた銀行の女子渉外の取材にNHKが来たと言うものです。

正直に取材趣旨を語って申し込まれれば恐らく断ったであろうテーマなのですが、NHKは私に「女子戦力の活用をテーマに番組を作っているので、積極的に取り組む御行を取材したい」と趣旨をごまかして申し込みをしてきました。女子渉外の一日を取材クルーが追いかけ私は立ち会ったのですが、「がんばっている姿をたくさん撮りたいので、こうしてくれ、ああしてくれ」とのリクエストを受けましたが(後から思えば完全やらせです)、その段階では取材趣旨を信じて疑いませんでした。ところが番組を見てびっくり、番組のテーマは「銀行女子行員の過労死問題を考える」。私が受けた取材は、銀行における女子渉外職の実態紹介として「午後3時には閉店する銀行女子行員のイメージとは程遠い、朝から晩まで過酷な労働環境で働かされる姿」としての取り上げだったのです。

当然NHKに強い抗議をしました。プロデューサーは自分たちの非を認め、翌週の番組内で「お詫びコメントを出す」と約束しましたが、実際に流されたコメントは「先週の放送内で一部取材上の不手際があり、取材先にご迷惑をおかけいたしました。この場を借りてお詫び申し上げます」という、全く何のことを詫びているのか分からないいい加減なものでした。私は引き続き強い抗議を続けましたが先方は「済んだこと」として聞く耳を持たず、これを受け当時の担当役員からは「もう終わりにして、NHKの取材を受けなければいい」という指示が出され、憤懣やるかたない終わり方をしたのです。

私はそれ以降、NHKの報道系特集番組取材の体質は平気でうそをつく取材体質であると信じて疑いません。管理職であるプロデューサーが、虚偽取材の件を「そう受け取られるなら」と非を認めながらも「我々の判断基準では通常許される範囲です」とハッキリ言っていたのですから。「この組織は腐っているな」と私は思いました。今回のやらせ問題にしても、過去に何回となく起きた似たような事件も、すべては組織の体質の問題です。会長の公私混同問題も含め、NHKの全ての不祥事は結局のところ公共放送という組織がはらむ甘え体質がその根底にあると思っています。

となれば今更ではありますが、NHKはなぜ民営化しないのか。そこを今一度この機会にこそ議論すべき問題なのではないかと思うのです。電波メディアがすべてスポンサーの意向で動く民間企業になってしまったら、災害時等の優先放送の確保ができなくなるというリスクをヘッジすることが目的であるのなら、3.11災害発生時の民放の対応を見ればコマーシャル自粛を含めてなんら問題はなかったと言えるのではないでしょうか。

また民間企業のみになることで報道がスポンサーの意向を踏まえ偏向されるリスクがあると言うのなら、放送方針が「日本政府と懸け離れたものであってはならない」と公言してはばからない会長の下でNHKを運営させることの方が、よほど大きなリスクがあるのではないでしょうか。また政府が民間放送局に圧力を掛けるかのような発言を繰り返す今の政府の方が、NHKの民営化リスクなど比べ物にならないほど危ない状況であるとも思うわけです。

筑波大学の研究室には申し訳ないですが、NHKが民営化すればNHKが写らないアンテナなど不要です。他のメディアはアンテナ開発の報道をする前に、なぜそういうものが開発されたのか、そこに焦点を当てNHKの民営化の要否についてしっかりと問題提起をするべきなのではないかと思うのです。

組織の体質は管理体制を根底から変えない限り、絶対に変わりません。民間組織で言えば資本の入れ替えであり、公共機関であれば民営化以外にないのです。このまま公共放送を続けるのなら、私が体験した事件から20年ほどが経とうとしても何も体質が変わっていないことからも、やらせやウソツキ取材は繰り返されることになるでしょう。この機会にこそ、NHK民営化議論を再燃させるべく世論を盛り上げていくべきではないかと私は思います。