軌道エレベーター派

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5. 軌道エレベーターの歴史

2018-10-01 01:01:06 | その他の雑記
5. 軌道エレベーターの歴史
 軌道エレベーターの発想は19世紀にまでさかのぼります。1895年、ロシアの科学者で「ロケット工学の父」として知られるコンスタンティン・ツィオルコフスキーは、地球の赤道上から宇宙へと伸び、静止軌道の高さでは無重量状態になるという塔のアイデアを紹介しました。
 このアイデアは、地上から宇宙へ伸ばしていくものでしたが、1960年、同じくロシア(当時はソ連)のユーリ・アルツターノフが、『電車で宇宙へ』と題し、現在の研究の基本構想となる、静止軌道から吊り下げて支える軌道エレベーターを新聞に発表しました。

 一方西側諸国では、その可能性を唱える研究者もいましたが、一般へ普及する大きな契機となったのは、『2001年宇宙の旅』で有名なアーサー・C・クラーク氏が1979年に発表したSF小説『楽園の泉』(邦訳は早川書房刊)でした。これ以降、軌道エレベーターは科学者やSFファンの間で広く知られるようになりましたが、技術上の課題、特に十分な強度を持つケーブル素材がないために、SFの世界の夢物語にとどまっていました。

 軌道エレベーターの素材には、静止軌道から吊り下げても切れない強度が必要という命題があります。最強レベルの高力鋼合金のさらに数十倍の強度が求められ、そのような物質は存在していませんでした。しかし1991年、日本の飯島澄男氏がカーボンナノチューブ(CNT)を発見しました。CNTは軌道エレベーターに必要な強度を満たしうる素材として注目を浴び、この発見により、軌道エレベーターの研究が加速しました。
 このほか、近年はCNTと同じ炭素系素材の「グラフェン」などにも候補として注目が集まっており、これまでに多様で具体的な建造計画が提案されています。

 1999年に米航空宇宙局(NASA)のマーシャル宇宙飛行センターで開かれたワークショップでは、軌道エレベーターを21世紀中に実現する構造物に位置づけて多角的に検証し、「驚くほど大規模かつ複雑な構想だが、明らかに解決の道筋が立たないという課題は見出せない」とするレポートをまとめました。
 その後のブラッドリー・C・エドワーズ氏らによる研究は、既存の技術の応用で実現に手が届くとして、具体的な建造プラン(7章を参照)を提案。この研究では建造費を100億ドル程度と見積もり、予算確保や建造のための準備に15年程度を要した後、建造に着手して数年で完成するといい、今すぐに取り組めば20年後くらいには実現可能と結論づけています。
 こうした研究と並行して、米国では実際に建造・運用を目指す企業が設立されたほか、各国の大学や研究機関などが、軌道エレベーターへの応用を視野に入れ、CNTをはじめとする素材の研究に取り組んでいます。

 2002年から米国で国際会議が開かれ、いったん中断したものの、08年から再開。その前年から欧州のルクセンブルクでも開催され、いずれも毎年最新の研究成果が発表されています。このほか、エレベーターのケーブルを昇降する機械の技術や素材の開発を目的とした競技会も開かれ、多くのチームがチャレンジしています。将来の軌道エレベーターの実現へ向けて、各国で様々な研究や活動が進行中です。
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