軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

OEV豆知識(21) 課題・問題その1 他天体との衝突(下)

2009-10-01 23:47:26 | 軌道エレベーター豆知識
 豆知識「他天体との衝突」の3回目。最後に、天然の物体、すなわち自然に地球へ飛んでくる天体との衝突について触れたいと思います。
 
1.大きいものと小さいもの
 一般的な「星」と呼ぶに満たない天体で、大半は数mmや数cmの微小天体。宇宙空間を漂う塵がほとんどです。大きめのものは小惑星と呼びますね。小惑星はけっこう頻繁に地球の軌道とニアミスを起こしているのですが、大きめのデブリ同様、NASAや世界各地の天文台といった観測施設、さらにはアマチュア天文家などが観測・追尾していて、位置や軌道がおおむね把握されています。
 ですから軌道エレベーター(OEV)とぶつかりそうになっても、前回までに述べてきたように耐えるか、小惑星並に巨大なものはよける(OEVの構造体を人為的にくねらせる)ことが対処の選択肢になると考えられます。アーサー・C・クラーク氏の「楽園の泉」(早川書房)で語られる火星のOEV構想には、衛星「フォボス」をOEVがよける光景を見世物にしようなんて発想も登場するくらいです。

 微小な塵が地球の引力に引かれて落下してくるものについては、スピードはかなり速いものも多いんですが、デブリの対処をすでに紹介してますし、軌道上にたくさんあるデブリの方がまだ深刻と言えます。そんなわけで、大きな天体はよける、小さなものは耐えるということで解説済みとして、ここでは天然微小天体の集中攻撃、いわゆる流星雨を主な対象として扱いたいと思います。なお、放射点が天頂方向に来るものを特に流星「雨」と呼びますが、ここではこの呼称に統一します。

2.流星雨
 年に数回は見られる流星雨。今年も8月にペルセウス座流星群(これは「雨」ではないですが)などが観測されました。ではその正体は何だと思われますか? 主な原因は彗星にあるのです。
 大半の彗星の主成分は岩や有機物質などを含む氷です。ようはゴミの混じった雪ダルマで、太陽に近づくと太陽風によってこれがガス化し、反対方向に尾を引きます。このため「ほうき星」とも呼ばれます。ちなみに、彗星の尾は進行方向の反対ではなく、あくまで太陽から遠い方へ伸びます。彗星の由来も非常に興味深いのですが、長くなるので後日の雑記で書こうと思います。



 これが流星雨とどういう関係があるのか? 彗星は尾を引いている間、ガス化した成分を軌道に沿って飛び散らかして行きます。彗星と地球の軌道が交差すると、地球がその帯の中に突入したたりかすめたりして、彗星の残りカスが地球大気に突入し、燃え尽きて流星になるのです。彗星というのは荷台を持ち上げたまま砂利を落として走るダンプカーみたいなもので、地球がその跡を踏む車のような感じでしょうか。

3.軌道エレベーターへの影響と対処
 ここでOEVへの影響ですが、流星雨は秒速70~80kmくらいザラで、軌道上のデブリの何倍もの速さで突入してきます。「雨」というくらいですし、地上から肉眼で見えないものも多いので、OEVにしてみれば機関銃を連射されているようなものですね。ですから流星雨への対処も、OEV実現において考慮しなければならない重大問題なわけです。

 ではどうするか。現存の人工衛星は流星雨に対し、向きを変えて流星雨に対する面積を少なくし、太陽電池などを保護して耐えしのぐのだそうです。
 「これだけかよーう!」と、自分で書いておいてツッコミたくなるんですが、幸運にも、流星雨はたいてい予測がつき、かつ一定期間後に過ぎ去る現象です。OEVも流星雨のシーズンには、推進剤も併用して負荷をかけてでも、重装甲にして耐えさえすればよいのではないか、というかそれしかないんじゃないかと思います。それだけやって破壊された部分は素直に修理しましょう。
 興ざめな消極的結論かも知れませんが、反面、OEVを利用した高高度からの流星観測や研究だって可能になるかも知れない。そう思うと、これもまた一長一短ありではないかと思うのです。上述の「楽園の泉」のように、一種のショーにしてしまえたら楽しみだと思いませんか!
 OEVはまだまだ課題山積ですが、こうした課題を一つ一つクリアしていき、逆手にとって有効に生かして、もっともっと楽しい時代が訪れて欲しいと思うのです。
 3回にわたって他天体との衝突を扱ってきました。次回はまた、別の問題について触れたいと思います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする