温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

寸又峡温泉 町営露天風呂「美女づくりの湯」

2009年03月25日 | 静岡県


静岡県の寸又峡といえば条件反射的に金嬉老事件を思い起してしまうのは私だけでしょうか。事件の舞台となった場所だけに何か陰鬱な雰囲気があるのかと思いきや、散策してみると実に風光明媚な渓谷で、いやはや大変失礼な思い込みをしておりました。
そもそも寸又峡一帯は林業の盛んな場所でありましたが、昭和37年にボーリングによって温泉の源泉が掘り当てられ、以来温泉郷として今日に至っています。南アルプスに温泉郷は少ないので、周辺地域においては貴重な温泉と言えましょう。

バスの終着地は温泉街の一番奥に位置しており、且つ渓谷散策の入口にもなっています。町営露天風呂はこのバス終着地から坂を上がってすぐのところにあります。簡素な脱衣所に浴槽がひとつだけ(無論男女別)というシンプルな造りですが、2本の竹筒から注がれるお湯は、南アルプスという温泉貧困地帯にあってはなかなか良質のもの。無色透明無味ではっきりとした硫黄臭が感じられ、「美女づくりの湯」という名前にあるようヌルヌルスベスベ感が強く、おそらく掛け流されていると思われます。
露天風呂というものの頭上はアクリル樹脂の屋根で覆われていますが、訪問時は雲ひとつない晴天だったので、屋根と壁の間から覗ける山並みを眺めながら、この上なく爽快に湯あみすることができました。立ち去る時に受付のおじさんが「いいお湯だったでしょ」と自慢げに話しかけてきたのが印象的でした。はい、いい湯でした:)


お風呂の様子

名所「夢の吊り橋」とコバルトブルーの湖水


単純硫黄泉
42.8℃ pH9.0 成分総計712mg/kg

大井川鉄道・千頭駅から寸又峡温泉行バスで40分、終点下車、徒歩1~2分
列車・バスの時刻は大井川鉄道のホームページを参照

静岡県榛原郡川根本町千頭366 地図
0547-59-3985
寸又峡ほっとステーション

3月20日~12月5日→9:30~18:30(受付18:00まで) 木曜定休
12月9日~3月19日→12:00~17:30(受付17:00まで) 木曜定休
但し、月によって営業時間や休業日が変則的になります。
委細はこちらをご参照ください
400円

私の好み:★★

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塚原温泉 火口乃泉

2009年03月24日 | 大分県


別府と湯布院の中間に聳える標高1045メートルの伽藍岳中腹に、全国第2位の強酸性を有する温泉「塚原温泉」があります。温泉街はなく、入浴施設「火口乃泉」のみ存在しています。お風呂には共同風呂と家族風呂、露天風呂があるのですが、訪問時は生憎強い雨が降っていたため共同風呂に入りました。青森県の恐山境内にある湯屋群を思わせる素朴な造りです。


家族風呂・外観

上述の通り、酸性度は全国第2位、アルミニウムの含有量も全国第2位、鉄分の含有量は全国1位と、全国屈指の濃い温泉でありますが、成分表を見ずともいかにこのお湯の酸性度が高いか、お湯に浸かれば体が教えてくれます。緑色透明のお湯からは明礬と硫黄の匂いが鼻をつきます。ちょっとでもお湯が口に入れば、強烈な酸味と苦み、アルミ箔を齧ったような味、えぐみ、そして金気味が混然一体となって舌に襲いかかってきます。
視覚・臭覚・味覚のみならず触覚もお湯のインパクトを感じ取り、酸性によって皮膚にひりひり沁みてくるのがわかります。もし体のどこかに傷があれば非常に沁みて痛いことでしょう。この強い酸性による効果を求めて、アトピー症に悩む患者さんがここへ多く訪れるそうです。また水虫など皮膚の感染症にも有効だと思われます。逆に傷がある場合は単に沁みて痛いだけでなく回復が阻害されるかもしれません。とにかくガツンとくる強いお湯です。
ペーハーが1.4ということは、塩酸などと変わらないわけで、ちょっと汗でも流そうという感じで簡単に入れるような生易しいものではありませんが、温泉好きなら万全の体調で是非入浴すべきでしょう。



尚、共同浴場の裏手から伸びる道を数分登れば、ガレが広がり噴気が立ち上る伽藍岳の火口を見学することができます(別途見学料200円必要)。この火口は活動が活発で、年々拡大する傾向にあるそうです。なお噴気帯には立ち入ることはできません。




酸性-含硫黄・鉄・アルミニウム・カルシウム-硫酸塩泉
pH1.4 60.6℃ 成分総量9059mg/kg

大分県由布市湯布院町塚原1235 地図
0977-85-4101
ホームページ

共同浴場500円 家族風呂2000円(1時間以内) 露天風呂600円
6月~9月:9:00~19:00(受付18:30まで)
10月~5月:9:00~18:00(受付17:00まで)

私の好み:★★★
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羽根沢温泉 共同浴場

2009年03月23日 | 山形県


山形県最上地方の鮭川村にある思いっきり鄙びた温泉地「羽根沢温泉」をご存知でしょうか。新庄から車で北西へ約18km、40分程走ったところに位置しています。バスが一日1本しかないような交通の不便な場所で、旅館は3~4軒しかなく、村落人口もいくらも居そうにないのですが、それにも関わらず公に開かれた共同浴場がちゃんと設けられていることは、温泉好きの私にとっては敬服に値します。集落の中心にある無料駐車場に面して集会場が建てられているのですが、この集会場の1階に共同浴場があります。

この温泉は大正8年に日本石油が油田を掘り当てるべく石油を試掘しているとき湧出したものです。新潟県の月岡温泉や瀬波温泉も同じように石油試掘中に発見されたものですが、これらの温泉と同様、羽根沢温泉も油のような匂いが特徴的です。無色透明のお湯からは硫黄の匂いとともにはっきりとした石油の匂いが漂い、臭覚でこの温泉が発見された歴史を実感できると思います。湯口にコップがあるので飲んでみると、塩味に出汁の味、そしてほろ苦さが感じられました。3人ほど入ればいっぱいになってしまいそうな湯船の中では、大きめの黒い綿状の湯の花と、量は少ないのですが白い綿状の湯の花が舞っています。そして口に含んでも肌をさすってもよくわかる程の強いヌルヌル感とスベスベ感を有し、いわゆる美人の湯と呼ばれるお湯に属するものと思われます。湯上りに脱衣所の窓を開けると、目の前を流れる川から心地よい風がそよぎ、火照った体を程よくクールダウンしてくれます。

設備は何も無く水道の蛇口すらありませんが、掛け流されるお湯の良さは一級で、こんな素晴らしい泉質を有していながらどうして温泉街は寂れているのかと疑問を抱きたくなるほどでした。




ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
47.2℃ pH8.4 蒸発残留2957mg/kg 

山形県最上郡鮭川村中渡 地図

4月~10月:8:00~18:00 11月~3月:8:00~17:00
200円

私の好み:★★★

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飯坂温泉 仙気の湯

2009年03月22日 | 福島県


名前に「仙気」あるいは「疝気」という語句が冠される浴場がある温泉は飯坂温泉の他、信州の浅間温泉、北アルプスの麓にある蓮華温泉、岩手県の夏油温泉、山形県最上地方の肘折温泉などがありますが、疝気とは胆石や膀胱炎などによる下腹部の痛みや睾丸の腫れに伴う痛みのことであり、これらの温泉は疝気に対して効能を有していると信じられていたのでしょう。古典落語にも「疝気の虫」という話がありますので、昔は割とポピュラーな語彙だったのかもしれません。

飯坂の外湯にしては割と広めの浴室にタイル張りの浴槽がひとつ、中央の湯口から無色透明のお湯が滔々と注がれています。飯坂温泉の外湯はどこも熱いのですが、なかでもここはとにかく熱く、堪えて10秒入るのがやっと。ホースから水が注がれているにもかかわらず、湯口に設けられた温度計の針は47℃を指していました。せっかくの澄みきったお湯を堪能できず、疝気が治るところか、脛が赤く腫れ上がってしまいそうでした。あの熱さは信州・下諏訪温泉の「旦過の湯」と双璧をなすのではないでしょうか。いや、この熱さこそ疼痛を吹き飛ばすには効果的なのかもしれません。




単純泉(若竹分湯槽)
60.0℃ pH8.6 成分総計809.5mg/kg

福島交通飯坂線・飯坂温泉駅 徒歩5分
福島県福島市飯坂町湯野愛宕前35 地図

6:00~22:00
200円
現金払い不可。事前に温泉街の商店にある「入浴券売捌所」で専用チケットを購入してください。
↓写真の看板が目印です

※本記事投稿時点では入浴券を事前に購入する制度でしたが、現在は各浴場に券売機が設置されており、それで料金を支払えばよいスタイルに変更されています。

私の好み:★★

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下風呂温泉 大湯共同浴場

2009年03月20日 | 青森県


本州で北から3番目に位置する青森県下北半島の下風呂温泉はちょっとした温泉街を形成していて、2つの外湯を擁しています。今回紹介するのは、そのうちのひとつである「大湯」です。
全体的な造りは素朴な銭湯といった感じで、浴室は床が板張りながら、浴槽は養殖生け簀のように真っ青に塗られたコンクリート造です。熱めと温めのふたつに分かれているのですが、両方ともかなり熱く、まだ温めのほうが入れる分だけましで、熱めの浴槽は足を入れるだけで精一杯。でも湯浴みしてみると身がきゅっと引き締められ、肌も幾分すべすべして、お湯の良さを実感できます。お湯は乳白色に濁る硫黄泉で硫黄の匂いが漂い、酸っぱく若干の塩味も感じられます。
熱さに耐えながら湯浴みもまた一興でしょう。


浴室の様子

温泉街には戦中に工事が中断されたままの鉄道(大間線)の遺構が残っています

鉄道遺構を活用して、駅に模した足湯も設けられています

下風呂名物「いかさまレース」


酸性・含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉

青森県下北郡風間浦村下風呂97
TEL(0175)36-2824
月曜定休
4月1日~10月30日:7:00~21:00 11月1日~3月31日:8:00~21:00
300円

私の好み:★★

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