曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

音質についての戯言

2017-02-08 00:25:11 | その他
このブログではほとんど触れていないが、僕は趣味で音楽を作っている。ジャンル的には一応テクノかな。いわゆる「打ち込み」で自宅録音。ライブとかはやったことがない。というか演奏力がない。元P-MODELの福間創が言った「楽器は演奏するのではない。操作するのだ」は名言だと思っている。

その自宅録音、今はPCだが、昔はマルチトラックレコーダーというやつで内臓HDDに多チャンネル録音していた。まずバスドラムを録音し、スネアを録音し、ハイハットを録音し、ベースを録音し…とそれぞれのトラックに録音して、最後に音量バランスや左右の定位を調整しながら2トラック(ステレオの左右)にまとめる。

ミキサーでまとめてレコーダーに送るのが普通だと思うが、僕はあまりミキサーが好きではなかった。BOSSのを持っていたが、安物だったせいか、ミキサーを通すと音の鮮鋭度が落ちた。面倒でもその都度機材をレコーダーに直結でつなげ直して一つずつ録音していた。

それをやっていると、世間で言う「音質」とは何なのか考えさせられた。皆、音質が何かわかっていないと思った。

僕は録音するまでシンセサイザーやリズムマシンやサンプラーで音を作りこむ。音作り曲作りの段階では、ヘッドフォンジャックにモニター用のヘッドフォンをつないでチェックし、128段階のローパスフィルターのカットオフ周波数を80にするか81にするか悩んだりする。僕は曲の制作中は最高の音質の原音を聞いている。

それらの悩みぬいて作ったトラックを1つ1つ録音していく。その段階ではまだ高音質だ。しかし、ミックスダウンして2トラックにまとめると一気に様子が変わる。設定したはずのスネアの微妙なざらつきがなくなったり、聞こえていたピアノのハンマー音がぼやけたりする。なぜか。

CDの音のデータ量は、量子化ビット16、サンプリング周波数44.1kHzである。縦軸が65536、横軸が44100の目盛を振ったグラフ用紙がデータの許容量と思っていただきたい。1トラックがそれである。最終的な音は、それが左右で2つと決まっている。しかし、まとめる前は16トラックとかなのである。その16トラックは、それぞれがやはり16ビットの44.1kHzの範囲をぎりぎりまで使って録音されている。単純計算で、バラで録音した16トラックの音声情報は、2トラックにミックスダウンすると1/8になる。そりゃ音質が劣化するわけですよ。原音を聞いている作者本人に言わせれば。俺が作った音色はこんなに眠くねえ、と毎度思う。

このように、皆さんが聴いているCDは楽器やボーカルの原音から十数分の1にまで情報量が減らされている。作った本人にしかわからないが、元の音と比べて輪郭がぼやけている。これはどうしようもない事ではあるし、作者以外のリスナーにとってはどうでもいい事で、それはそういう音なのだと思って聞いていればいい。

しかし、世の中にはオーディオに果てしなくお金を使う人たちがいる。100万円級の機材をそろえるマニアはもちろん、最近は高価なヘッドフォンアンプをiPhoneに繋げる輩なんかもいる。そういうのを見ると、なんだかなーと僕は思うのだ。君たちが聴いているその2トラックは原音と比べて激しく劣化しているのだよ、と。今はミックスダウン直前まで48kHzで処理するなどして何とか劣化を最小限にとどめる技術などがあるが、録りたてのトラックに比べると当然ながら劣化はある。僕は素人だからせいぜい16トラックだが、プロのは48トラックとかである。48トラックが2トラックに押し込められ、サンプリングレートも44.1kHzに落とされてCDとして売られる。iTunesやGooglePlayMusicで購入する楽曲はさらに圧縮され、音声情報は圧倒的に減っている。そういうのを聞きながら音質を語るな、と僕は言いたい。

劣化しているから、せめていいヘッドフォンで聞こう、ヘッドフォンアンプも用意しよう、という事かもしれないけどね。それならわからなくもないけど。
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