曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

ロシアのウクライナ侵攻について

2022-02-28 17:34:00 | 社会



ロシアとウクライナの戦争についての感想など。

最初は、クリミアの時のように東部2州を拠点にして、工作員を入れるなり情報戦するなりしてじわじわと浸透、東部の実効支配を既成事実化してしまうのかと思っていた。プーチンが特別軍事行動に出ると発表したときも、どうせ東部地域限定でダラダラ小競り合いするんだろうとタカをくくっていた。

ところがその30分後くらいにロシア軍が全面的に侵攻開始。早い。ウクライナの軍事施設、特に航空基地はあっという間に制圧された…と報道された。

僕はTwitterで信頼できる軍事論客のリストを作っている。論客の一人は、ロシアは精密攻撃兵器の在庫があまりないので、このピンポイント攻撃はそれほど続かず、民間人にも被害が出るだろうとこの時点で予測していた。

2月24日くらいまでは、キエフ陥落も時間の問題だと思っていた。制空権を握られると厳しい。ロシアは伝統的にヘリを多用するが、ヘリは低速なので制空権下でないと運用できない。そのヘリが何の妨害もなく飛び回っているのだろう。その一方で、ロシア軍機が6機撃墜されたという情報もあった。撃墜したパイロットは「キエフの幽霊」と呼ばれているとか。ウクライナ側の士気を高めるプロパガンダかもしれないが、もし本当なら文字通りのエース、撃墜王の出現である。

テレビなどのマスコミでは、ロシア軍の電撃戦を伝える情報と、ウクライナ市民の厳しい避難生活と限定的な反撃が報道される一方、Twitterなどでは、いや意外にウクライナ軍善戦しているぞという呟きやリツイートも多く、情報が錯綜していた。

僕は昔、シミュレーションウォーゲームを少しやっていた。一番好きだったのは第3次世界大戦をシミュレーションした伝説の超大作、GDWの「The Third World War」であった。ゲームを持ち出して現実を語るなと言われそうだが、このゲームは実在の装備の火力と装甲からユニットの戦闘力を数値化していた。T-80はこのくらいの強さ、ではなく、ソ連の第○戦車師団は何個連隊何個大隊何個中隊あって1個中隊にはT-80が何輌あり、T-80の125ミリ滑空砲は係数x.xxだから、この師団ユニットの攻撃力と防御力と練度はこう、というデータの作りかたをしていた。つまり、本物のデータを使っていた。

そのゲームでワルシャワ条約機構軍を指揮していつも感じたのは、突撃の異常な速さ、突破に失敗したらすぐ止まる粘りのなさだった。戦後のソ連陸軍は、ヒトラーに国土を蹂躙された教訓からか極端に攻撃的で、第一撃は強力だが、後が続かない。昨日今日の戦況は、この、急速突破しても抵抗に遭うと停滞する「The Third World War」のワルシャワ条約機構軍を思い出させる。20年前から戦術ドクトリンが変わってない。まあ、あくまで僕のイメージなんだけど。

そもそも、北のキエフ方面、東のドンバス方面、南のオデッサ方面と同時に侵攻するのは戦線正面が広すぎる。広げすぎた戦線各所でZOCに捕まった赤いユニット群が身動き取れなくなっているのではないか。テレビではどこもウクライナは最終的に(軍事的には)負けると言うが、もう少し耐えればロシア軍の兵站は崩壊し、侵攻が止まるような気がする。微かだが希望の光が見えないわけではない。

武力で国境を書き換えるような行為をやろうとしている国は他にもある。このままプーチンが勝つと、それが今後の世界秩序になってしまう。条件を受け入れて停戦し、市民の血をこれ以上流させないほうがいいのではとも思うが、ゼレンスキー大統領以下、ウクライナ国民の士気は高く、徹底抗戦するらしい。今のところ。

アメリカもNATOも、ウクライナが加盟国でないという理由でロシアと直接交戦しないだろう。世界のルールが武力で書き換えられるかどうかは、ウクライナ軍とウクライナ市民の踏ん張りにかかっている。だが、簡単に頑張ってくださいと言えるような状況ではない。第一に命を大事にしてください。その上で国を守れるように祈っております。

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幻の真・麻婆豆腐

2022-02-23 20:54:00 | グルメ
何度か書いているが、僕は昔、東京競馬場東口から歩いて5分のところに住んでいた。その頃から通っている中華料理店が最近閉店してしまった。

東府中で1番高いビルの最上階にその店、菜根香はあった。夜、1番高いフロアの窓からオレンジ色の灯りが見えて、おシャンティな店なんだろうなと思って見上げていた。ジャズバーかなんかだろうか。

ある土曜日、なんとなくそこのビルに行ってみたら、中華料理店だった。エレベーターを上がり切って、エレベーターから出るともう店内で、逃げようがなかった。そのままランチメニューの定食を食べた。

菜根香は、マスターと奥さんの二人でやってる店だった。四川料理は辛くて赤いイメージがあったのだが、菜根香の料理は淡い色彩が多く、上品で優しい味だった。いつも空いていて、俺が行かないと潰れると思い、月に二、三回のペースで土曜のランチを食べに行った。日曜は休みだし、夜は高いので、行くのは常に土曜の昼だった。




どの定食も美味しかったのだが、暑い夏の日に食べた胡瓜と中華ハムと鶏肉その他の冷製スープみたいなのが今でも忘れられない。果物は入ってないのにフルーティな爽やかさがあまりにも美味しくて、ぼーっとしてしまい、気づいたら一階だった。料理の名前を覚えておくのを忘れた。

基本的に月替わりの定食を食べていたのだが、ある月は通いすぎて今月のメニューを制覇してしまっていた。それで、今まで食べてなかった固定メニュー「陳麻婆豆腐」定食を頼んでみた。メニューには麻婆豆腐が二種類あって、辛い方だった。

一口食べて一瞬で分かった。今まで麻婆豆腐だと思っていた料理とは違うと。俺は偽物を食べていたんだと。同じく辛くて舌が痺れるのだが、非常に複雑な味で、何かが決定的に違う。あるいは全部が違う。



それ以来、僕は陳麻婆豆腐定食しか食べなくなった。考えてみれば、ここのマスターは赤坂四川飯店にいた人なのだった。店内に陳建民の写真や記念品が飾られていた。エビチリを発明した四川料理の神様・陳建民の弟子だったのだろうか。そうなると、中華の鉄人・陳健一の兄弟弟子ということに。なるほど。とんでもない店が近所にあったものだ。

結婚して引っ越してからは、年に数回しか行けなくなったが、行けば必ず陳麻婆豆腐定食だった。ある時、何の気なしに食べログを検索していたら、菜根香は首都圏の中華で一位になっていた。ヤバい。知られた。口コミでは、赤坂四川飯店と同じ味の麻婆豆腐がリーズナブルな価格で食べられると書かれていた。その頃から、土曜の昼に行ってもランチ売り切れで退散することが多くなった。

櫻井翔と有吉弘行が、長年一緒に番組をやってるのに、ご飯食べに行ったことないから行こう、という企画をたまたま見たことがあった。二人が行ったことがない店に行こうということで、赤坂四川飯店に行った。麻婆豆腐を一口食べた有吉が、何これ別物じゃんと言ってゲラゲラ笑い出した。櫻井翔も、美味いとか言う前に驚いていた。分かるわその感覚。

そんな感じで、僕にとっての唯一無二の麻婆豆腐を食べに定期的に通っていたのだが、コロナ禍の中、菜根香はいつのまにか閉店していた。これからどうすりゃいいんだ。陳健一がYouTubeに赤坂四川飯店のレシピと調理法を上げてるので、真似してみるか。いや無理だな。手に入らない材料がたくさんありそう。ああ困った。もうあれが食べられないなんて。


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湊かなえ「Nのために」の感想

2022-02-11 21:27:00 | 



湊かなえの「Nのために」を読んだ。二度目だ。テレビドラマ版を久しぶりに見返して、映像では描かれない各人物の心情や設定を、原作でもう一度確認したくなったのだ。

テレビドラマ版は、僕が今まで見た中でもNo.1かもしれないというくらい出来が良かった。対して、原作は、湊かなえのワーストと言われるほど評価が低い。




高級タワーマンションで商社マンと妻が殺された。その場にいたイニシャルにNを持つ四人の若者の一人、西崎真人が、自分がやったと自供した。だが、四人にはそれぞれ密かに守りたい相手や葛藤があり、真相はもっと複雑で意外なものではないかと思われた。特に、同じ離島出身の杉下希美と成瀬慎司には、放火事件の現場に二人で居合わせて容疑をかけられるという過去があった。

このタワーマンション殺人事件の日に向かってそれぞれの物語が収束し、また別れていく。運命が悲劇的に交差してしまった四人の人生に、何とも言えない何かを深く考えてしまう。

ミステリーとしても、西崎の到着の遅れや、成瀬が安藤望のプロポーズを知ってしまうところ、その安藤が事件直前に杉下の本当の相手を知らされるなど、予定外の出来事が次々に起きて緊迫感が半端ない。良いミステリーは、大抵の場合、計画を乱す要素が盛り込まれている。

...という概略をすらすらと書けるのは、テレビドラマを先に見て、何度も見て、最近も見たからだ。原作である本書だけでは、この物語の全体図を把握するのは困難である。

ドラマでは、タワーマンション殺人事件に向かってカウントダウン的に話が進む。高校時代の放火事件、大学に入ってN作戦決行、「事件当日」、そしてその後の四人が順番に描かれる。緻密に、かつドラマチックに構成されている。

しかし原作は、四人それぞれの供述がアトランダムに現れる構成になっている。時系列がバラバラのように見え、話の流れがわからない。安藤の性別を隠した叙述トリックも、読者を無意味に混乱させる。重要な鍵となる放火事件が、さらっと流して書いてあったりもする。一番盛り上がらなくてはならない終盤が、謎解きというより単なるオチになっててずっこける。

前述のように、この原作は、湊かなえのワーストとも評されている。それを、僕のテレビドラマ視聴史上最高傑作にまで作り替えた、脚本の奥寺佐渡子の手腕には感服せざるを得ない。本書は、僕のように、まずテレビドラマ版を見て泣き、映像では分からない各人物の心情や設定を知るために読む、というのが正しいと思う。



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