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森羅万象 ~ 歩く印象派

東京電力にみる、社長と会長の奇妙な関係

2011年06月03日 18時37分03秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

 

東京電力にみる、社長と会長の奇妙な関係

2011年6月3日 08時00分

辞任した清水正孝前社長

吉田典史の時事日想:

 東京電力の清水社長が辞任した。福島第1原発の事故を始め、一連の不祥事の経営責任を明確にするためという。勝俣会長は、その職にとどまることになった。

 ここ2カ月、東京電力は世間を騒がせてきた。記者会見での要領を得ない応対、社長の緊急入院、突然の計画節電、社長ら首脳陣の土下座謝罪、そして2011年3月期決算で過去最大の1兆2473億円の最終赤字。それを受けて、一応のリストラ策。

  これらいずれもが会社として問題行為なのだが、私が注目してきたのは社長と会長のあの関係である。この会社に限らないが、ベンチャーから大企業まで日本企 業の社長と会長の関係は実にあいまいに見える。その意味で、東京電力は日本の企業の縮図である。ずばり、社長と会長はどちらがエライのだろうか?

●怖くてぞっとする無責任な体制

 役員の制度改革にも力を注ぐ人事コンサルタントの林明文さん(トランストラクチャ代表)は、双方の力関係を見極めるためには社長や会長という名称ではなく、その前に代表取締役、つまり、代表権があるかどうかが大切と言う。

  「会長、社長、専務、常務といった役職名は商法など法律の概念にはない。代表権とは、会社を代表して契約の締結などを行なうことができる権利を意味する。 だから、ただの会長であるのか、それとも代表取締役会長であるのか。それでおよそ察しがつく。会長が代表権を持つというのは、社長を部下として使おうとし ているととらえることができる。

 勝俣会長は代表取締役が付いている以上、発言力は強く、清水社長をおそらく“部下”として使っていたのだろう。社長に起用したのも、今回辞めるように促したのも会長である可能性が高い。社長と会長による、権力の2重構造になっていたのではないか」

  この指摘は、大事である。数年前、取引先に社員数600人ほどの教材制作会社があった。そこには、代表取締役社長と代表取締役専務がいた。ほかの役員に は、代表権がない。「この2人で役員会を動かしているが、責任の所在があいまい」と部長たちからよく聞いた。その後、社長が代表取締役会長に、専務が代表 取締役社長になった。ほかの役員らは退任していった。

 それは、代表取締役社長と代表取締役専務の2人がそれぞれ上がっただけで、組織の機能としては何も発展していないことだ。依然として2人による私物化でしかない。実は、こういう役員がいる日本企業は少なくない。
これに対し、林さんは言う。

 「社長が代表権のある会長になり、役員会を仕切ろうとする理由は本人の性格もあるのだろうが、信頼できる役 員が少ないこともある。日本企業の役員は、社外から招かれる例は少数。その多くは、部長など内部から昇格する。その意味で役員候補の母集団が少なく、優秀 な人材が限られている。だから、会長が仕切ろうとする可能性がある」

 「東京電力では、清水社長と勝俣会長以外にも代表取締役の副社長が 数人いる。これらの役員の役割や権限と責任があいまいであったのではないか。無責任な体制のうえにこの巨大な企業があり、原発まで動かしていたかと想像す ると、怖くてぞっとする。これを機に、日本企業の役員のあり方や仕組みを問い直す必要がある。最近では、日本企業は社員には選別という意味で厳しくなりつ つあるが、役員たちにはまだまだ甘すぎる」

●東電の社長と会長の関係は遠い話ではない

 私が問題視するのは、担当する職務の役割や権限と責任があいまいであることだ。これは役員だけでなく、例えば部長と課長、課長と課長補佐、課長補佐と主任などにも言える。非管理職の間でも、それぞれの役割や権限と責任がはっきりしないことがある。

 これは「柔軟性がある」と言えるが、優秀な人が生まれにくい理由の1つがここにある。特に業績主義を浸透させるときは、それぞれの権限と責任があいまいであるがゆえに障壁になりうる。ところが、20~60代まで大多数の会社員はこのことに強い不満を持つわけでない。

  日本人は組織の中で自らがどのような機能を果たすかよりも、まずはその組織に所属することに重きを置く意識が強い。その1つの象徴が、大卒が新卒として就 職活動をするときには、大半が「就職意識ではなく、就社意識」であることだろう。私は専門学校で大学生にエントリーシートの書き方を教えているが、「自分 はこういう職業で生きていく」という明確な考えを持っている学生は数百人に1人いるかいないか、だ。

 学生たちは数年後には、どこかの会社で職務の役割や権限と責任があいまいな中で仕事をする。そのことに異議を申し立てることもしない。いずれ役員になる人もいるだろうが、その時に突然、権限と責任に敏感になる可能性は低い。

 林さんの指摘するように日本企業の役員のあり方や仕組みを問い直す必要はある。だが、実は相当に難しい。東京電力の社長と会長のあの微妙で無責任な関係は遠い話ではなく、私たちの意識の奥深くに巣くうものなのだから。
●社長は会長にNO!と言えない

 名古屋をはじめ東海地方を拠点に企業のコンサルティングを手掛ける佐藤政人さん(HR経営コンサルティング代表)は、社長と会長の力関係はケース・バイ・ケースではあるが、傾向としては会長の存在は大きいと言う。

 「ほとんどの会長は、社長経験者。その意味では、現在の社長の先輩。そして大体は、会長の指名があって社長になる。役員会の多数決などで決まることはまずない。会長は会社のあり方などをめぐり、自らと価値観が近い役員を社長に抜てきするケースが多い。

  双方は他の上下関係、例えば、部長と課長の関係よりは精神的なつながりがおのずと深くなる。この関係を踏まえれば、社長は会長に『NO!』と強くは言えな い可能性が高い。例えば、社長が新規事業を始めようとしても会長がそれに疑問を呈し、取りやめになることが少なからずある」

 佐藤さんは かつて、社長と会長の権力が2重構造になっている会社のコンサルティングを手掛けた。会長が創業経営者であるいわゆるオーナー企業だった。会長は社長の父 親であり、息子の経営に何かと口を出していた。双方で口論になることが日常茶飯事であり、部長ら管理職は2人から仕事の指示を受ける。指揮命令系統が混乱 することで仕事の量が増えて、困り果てていた。

 こういう場合は、どちらかが引いて指揮命令を1本化することが必要になる。だが、それができなかった。

  「特にオーナー企業の場合は、会長が社長を長く務めてきたケースが多い。だから社内はもちろん、業界での知名度も高い。ネットワークも豊富。社長は相当に 優秀な人でないと、それを乗り越えることは難しい。私のイメージでは、日本企業では全般的に会長の方が社長よりも立場が強く、発言力があるように見える」

  同情の余地はないが、東京電力の清水社長も職務の役割や権限と責任があいまいな体制の犠牲者と言える。勝俣会長に限らず、どこの会社も上に立つ者は自らに 責任が及ばないようにルールなどを常にあいまいにしておくもの。そして、下の者をいいように使っていく。それに大多数の人は、拒絶の意思を示さない。こう して日本企業は問題の本質を残し、形を変えて同じことを繰り返していく。きっと、国や社会がこのようになっているのだろう。

18人死亡の大腸菌O104、多くの抗生物質に耐性

2011年06月03日 18時03分47秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

2011年6月3日12時0分

 

 ドイツで18人が死亡するなど被害が広がっている新種の腸管出血性大腸菌O(オー)104は、幅広い抗生物質が効きにくい多剤耐性の遺伝子も持っている ことがわかった。北京ゲノム研究所(BGI)が2日、解析結果を発表した。今回の菌は強毒性に加え、薬剤が効きにくいことで、治療が難しくなっている。

 ドイツ北部の患者の多くが入院しているハンブルク・エッペンドルフ大学病院の依頼で、BGIが菌の遺伝子を調べたところ、ストレプトマイシン系やペニシ リン系など多くの抗生物質に耐性を示す遺伝子を持っていた。実際の治療でも、抗生物質による治療が難しいことがわかっている。

 多剤耐性の遺伝子は、別の型の大腸菌からこの菌に乗り移った可能性があり、BGIはこの菌が発生した理由などを調べる。

 

注)北京ゲノム研究所 とは(アルプリの部屋さんより)

北京ゲノム研究所(BGI)は1999年に発足した中国の公的機関です。最初に注目を集めたのは2002年にイネのゲノム解読を発表したころだと思います。

2000年にBGIは8億円を投じて当時の最新のシークエンサーを36台購入したそうです。フル稼働させれば、1日に2千万塩基くらいを解読できる計算になります。あくまで最高値ですけどね。実際はその半分も解読出来れば良いほうでしょう。

イネゲノムの解読は19ヶ月の期間(2000年4月~2001年10月)を要して、4.6億塩基のイネゲノムの6倍にあたる27億塩基を解読したそうです。

その後、BGIはカイコ、ニワトリ、コロナウィルス(SARSの原因)のゲノムを次々と解読していきました。

BGI はよりスピーディーにパワフルにゲノム解読を進めるために、2007年に中国と香港の国境近くの港町シンセンに移り、イルミナ社の次世代シークエンサー “Hiseq2000”を128台購入しました。1日に125億塩基が解読できる計算です。単純計算でいけば、1日に4人のゲノムが解読出来ることになり ます。アッセンブルの問題があるとしても、1人分のゲノムは確実に読めるでしょう。

このHiseq2000は1台7千万円するので、128台だと90億円くらいかかることになります。

し かし、こういった機械は原価はたいしたことがないんです。7千万で販売していますが、実際は数百万円あったら作れるでしょう。それよりも、機械を動かすた めには様々な試薬が必要ですから、機械自体は安く売って、128台分の試薬代で稼ぐ方が効率が良いのです。公式にはBGIが1台いくらで買ったかは公表さ れていませんが、かなり安くで購入しているはずです。

でも、BGIは中国開発銀行から1500億円の支援を受けているらしいので、余裕でしょうけど・・・。

ラジオのネット配信、9月開始=NHK

2011年06月03日 12時27分29秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

時事通信 6月2日(木)17時1分配信

 NHKは2日、ラジオを放送と同時にインターネットで配信する事業を9月1日から始めると発表した。当初はパソコンのみが対象で、10月1日からスマー トフォン(多機能携帯電話)にも配信する。配信するのはラジオ第1、第2、FMの番組。民放ラジオ各局は地域を制限して番組をネット配信しているが、 NHKは全国で聴取可能にする。期間は2013年度末まで。 


首都直下地震そのとき帰宅できるか?3・11でわかった「慌てて帰るな」

2011年06月03日 07時15分38秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

 

2011/5/31 18:00
   *NHKクローズアップ現代(2011年5月30日放送「『帰宅できない』~どう備える首都直下型地震~」)

   東日本大震災当日の東京の帰宅困難者は300万人だったといわれる。鉄道が止まり、携帯はつながらず、 幹線道路は歩いて帰宅する人であふれ、車は大渋滞。しかし、これは首都直下地震のときどうすればいいかを教えてくれてもいた。

直接被害なくても3・11都心大混乱・大渋滞

   横浜に住む会社員の中島美砂子さんは、都心の会社で地震を受けた。震度5強の揺れに家族を心配した。夫は関西に出張中で、横浜には小学生の息子がひとりだ。携帯はつながらない。

「行かなくちゃ」

   午後5時に退社して、7時半に渋谷からバスに乗ったが、1時間で400m。バスをあきらめて8時40分に歩き始めた。横浜まで23キロだ。歩行者が車道にまであふれていた。

「止まると後ろから押される。赤信号でも前へ押し出された」

   午後11時、飲まず食わずでハイヒールのまま歩き続け、足の感覚がなくなってきた。寒さと疲労で道端にしゃがみ込む人が大勢いる。横浜市へ入ったところで、ようやく息子が学童保育にいるとわかった。息子に会えたのは午前零時すぎだった。

   あの日、歩いた人たちは中島さんと同じだったろう。帰れない人もたくさんいた。都や区は帰宅者に水道やトイレの場は用意したが、宿泊までは考えていなかった。大田区は最終的に46か所の施設を用意して毛布や食料を提供したが、本来は地元民のための備蓄だった。

歩いて帰宅が一番危険−火災、沿道支援もなし

   「直下型のときは歩いて帰ってはいけない。危険だ」とリスクコンサルタントの指田朝久さんは言う。まずは火災の危険だ。都心から5~15キロ 圏内は木造家屋が集中している。火災の発生で引き返すと後続の人とぶつかる。しかも、今回は助けてくれた地元の人も直下型だと被災者だ。

   もうひとつは車の渋滞。東日本大震災では警視庁・交通管制センターの掲示板は午後8時には全ての道路が渋滞を示す赤になった。「全面真っ赤になったのは、センター始まって以来」という。

   「救急、消防が動けないと命にかかわる。渋滞が加害者になってしまう」と指田さんはいう。現に、地震で駐車場が崩れて10人が死傷した町田の現場に、救急車が到着したのは1時間半後だった。郊外の町田でだ。

自治体・学校は「帰らせない対策」

   郊外の自治体や学校では「帰らせない対策」が動き出している。横浜市の小学校では、保護者が迎えに来るまで生徒たちを学校が預かるというルー ルを作った。大震災で一部を集団下校させたことに父兄から不満が出たからだ。同時に、家族の間でいざというときにどう連絡をとるかを決めておく。

   昼間人口60万人の中央区は、企業に「社内に泊めて」と訴えている。ある建設会社は、あの日1200人の社員の8割が帰宅しなかった。社屋は 直下型に備えた耐震設計で、非常食、レトルト、クラッカーなどの備蓄もあった。翌朝、社員たちは地域を見て回って備蓄食を配って歩いた。「地域の一員です からね」と会社はいう。

   中央区は買い物客も考慮して、デパートなどにも受け入れのスペースの確保と非常食の備蓄を要請している。企業の従業員は自治体との連携で救助のボランティアにもなりうる。「動かなくていい社会は、信頼感で成り立つのです」と指田さん。

   直下型では帰宅困難者は650万人になるともいう。今回の体験を教訓に、まずは家 族間の取り決めからというのが結論だった。ただ、ひとつ抜けている。鉄道だ。動かせるものは動かすべし。京王線など一部私鉄の素早い対応が多くの足を救っ たことも覚えておいた方がいい。JRが駅を閉めてしまったのがけしからんと、石原都知事は抗議文を出している。

ヤンヤン

   *NHKクローズアップ現代(2011年5月30日放送「『帰宅できない』~どう備える首都直下型地震~」)