彼らの 証拠によれば携帯の使用による悪性の脳腫瘍が増加するリスクは否定できないという。ただし、明らかな関連があるということでもない。彼らは携帯の使用が明 らかにがんにつながるものだと確定したわけではないと結論付けた。このような強い結論を導き出すにしては証拠が弱すぎると反論している団体もいる。
31 人の専門家のグループは、人間での証拠を見つけるために、疫学的研究をリヨンやフランスで行ってきた。彼らは携帯を使用する人や職場で長時間電磁場にさら されている人に注目した。その結果、神経膠腫という脳のがんとの関連性がありうるため、今回携帯はpossibly carcinogenicに分類されるべきだと結論付けられた。
このラベルはWHOの国際がん研究機関IARCが決めたもので、科学的な発がん性の危険度を示している。このラベルに分類されるのは化学物質だけでなく、環境なども分類される。
分類は以下のようになっている
・carcinogenic…アフラトキシン、放射線からアルコール、タバコなど、発がん性が認められるもの。
・probably carcinogenic…紫外線、ディーゼルガスなど発がん性がおそらくあるとされるもの。
・possibly carcinogenic…クロロホルムやDDTなど、発がん性が疑われるもの。なんとコーヒーや一部の漬物もこのグループである。
・not classifiable…発がん性が分類できないもの。データが不十分である場合が多い
・not carcinogenic…発がん性がおそらくないもの。
こ の結果について、イギリスCancer ResearchのEd Yong氏は、「このWHOの判断は携帯電話とがんを結ぶなんらかの証拠があるということを意味している。しかしそのような強い結論を導き出すにはその証 拠は弱すぎる。」と述べている。「いままでの多くの研究は携帯電話とがんの関連性を見つけることができなかった、もしそんな関連性が存在していても、その 関連性が大きいものである見込みはすくないだろう。
脳腫瘍の危険性は携帯を使う人たちのほうが使わない人たちよりも大きい、脳腫瘍の発生率は携帯の使用が急激に増加した80年代をのぞき近年上昇していないからだ。しかしリスクを完全に否定するための十分な情報はまだ出ていない。
WHOは世界中に50億の携帯電話があると見積もっている。
IARC局長のChristopher Wild氏は「この分類と調査結果の公衆衛生への潜在的な影響を考えると、重度の携帯の使用に関するさらなる研究は長期間にわたって行われることが重要です。」と述べた。
「このような情報の有効性があいまいなあいだは、ハンズフリーフォンやテキストメッセージなど、携帯を頭に近づけるリスクを軽減するために実用的な措置を講ずることが重要です。」
携帯電話と脳腫瘍の関係についてはずいぶん前から危険性を指摘する研究機関と、証拠が不十分だとする通信業界の対立の構造が続いている。気になる方は調べてみてはどうだろうか。
(櫻井博光)