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森羅万象 ~ 歩く印象派

馬頭広重美術館 -広重VS国貞 を観て洛中洛外図を思う。

2006年08月21日 21時32分06秒 | 歩く印象派
那珂川町というのは2005年に旧馬頭町と小川町が合併した後の名称だ。
旧馬頭町に広重美術館ができたのは2000年。
美術館開館の経緯についてはこちらを参照されたい。
建物の外観はユニークで格子状に八溝杉がふんだんに使われている。
なんだか凡庸だなあと思っていたのだが下の写真の側より、いったん
くぐり抜けて向こう側の眺めの(上の写真)方がぐっとシックで日本的である。

さて「広重VS国貞」だが
美人の背景に広がるのは、どこかでみた絵?そう、歌川国貞が描いた「東海道五十三
次之内」(左図)(竪中判56枚揃)には、歌川広重の代表作「東海道五拾三次之内」
(右図)(横大判55枚揃)の図柄が借景として引用されている。光による劣化を防ぐ
ために展示室内はかなり照明が抑えらているが歩くのには支障はない。かえって落ち着
いた雰囲気がある。
    
          右)歌川広重「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」
左)歌川国貞「東海道五十三次之内 蒲原図」

広重と国貞の絵を交互にを見比べながら進んで行くうちに、先月下旬に訪ねた米沢市上杉
博物館の「上杉本洛中洛外図屏風」を思い出した。

狩野永徳による洛外図は京の都の四季と、そこに暮らす人々の生活風俗が描き込まれた
もの。
永徳は洛中洛外図を京の都の上空からの俯瞰図として描いたが、上杉博物館では大型スクリ
ーンを用いて、洛外図に登場する人物たちの目線に置き換えて、京の町や人々の活き活
きとした暮らしぶりを個別具体的にみせてくれる。

広重の「東海道五拾三次之内」も江戸から京までの俯瞰図として描けば永徳の「洛中洛
外図」のように見えるかもしれない。
(庶民の時代の広重と信長からの下賜品という性格(永徳)など制作の背景は異なるが。)