一般的傾向として、良い歯科医とは歯を抜かない、歯を守ると言われています。
その為、根の治療、根管治療が最近では良い歯科治療として知られるようになっています。
しかし、私は敢えて行き過ぎた歯を残すことによって引き起こされる悪いこともあるのですよ、と発言します。
根管治療万能と信じて、どんな歯でも残せる筈と歯科医に無理な要求までするようなことはお止めに成った方が良い、と思います。
残念ながら、歯は必ず噛むと言う力に常に晒されます。
そして、歯髄を失った歯は、枯れ木のようなもので、歯髄のある生きている歯に比べれば脆弱なモノであるからです。
虫歯を削って残った歯質、厚みとか硬さで、その歯がどれだけ長持ちするのか?は決まって来ます。
簡単に言えば、なんとかして残そうとしているその歯が虫歯が大きく広く深く成っていれば、歯質は薄くなり弱々しく成っていて噛む力に耐えきれない、と言うことなんです。
加わる力に耐えうるだけの耐性をその歯が持ってるのか?ここがとても大事なんです。
それを何も考えずに、ただ歯を残すと言うのは後々困ったことになりかねません。
どう言うことかと言うと、無理無理に残した歯が割れてしまうと、その抜歯は大変なことになってしまうことが少なくない、と言うことなんです。
骨も溶け、歯茎も腫れて弱くなってしまいます。
残した歯根がかえってばい菌の溜まり場になり、骨を深い所で腐らせる、と言っても良いと思います。
なので、私は分かり易く説明する為に、最近無理に残そうとし得る歯根を便秘で出で来ない大便みたいなものですよ、と話してます。
そんなもの身体に何時迄も残していて良いものではありませんよね、と言う意味です。
昔は時限爆弾みたいなもの、と言ったりしてましたが、それよりも便秘の方が分かって貰えるので。
決して、歯を残すことを否定している訳ではありません。
しかし、お口の中にあり、常に噛む力に晒されてるのですから、それとのバランスは良く考えないとならない、と明言します。
歯と言うものは、患者さんの思われるよりもずっと弱いモノなんです。
大事に大事に使って健康で長生きをして欲しい。
その為には、噛む力とそれを受け止める歯の耐性のことを考えて欲しい。
何でもかんでも歯を残せば良いものではない、と気が付いて欲しいのです。