歯医者だから、歯を治すことが仕事です。
しかし、歯を治すことが如何なる時にも善なのか?と問われたら、私はそれには明確にノー!と言います。
口腔の目的は、摂食、咀嚼、嚥下、声を出せることにある、と考えていて、その為の生体の機能的な組織として歯があるに過ぎない、と看過します。
最近、患者さん受けを狙い、歯を抜かない、歯を守ると言うことを殊更に強調する風潮が歯科界に支配的です。
私も残せるモノ、助けられるモノを治すことには異存は全くありません。
もっと具体的に言えば、私が治療して10年は使えるだろう、そして、その10年後でも骨や歯茎を棄損しないだろうと読める歯なら治療します。
そうではない歯の場合には、次に悪くなる時にはより大変な事態に陥る可能性を説明して、患者さんのご希望に基本的にはそうようにしてます。
が、何としても助けてくれ、残してくれ、と言うご希望の場合には、ご希望には添えません、と敢えて治療はせずに経過観察に留めたりしてます。
残念ながら、患者さんは刹那のことしか考えられない方が殆どです。
そして、段々とダメになり、収拾のつかない事態になって何とかしてくれ、となられます。
正直に申し上げて、歯を救うに拘り過ぎるのは、そのような事態を助長する、と私は考えております。
歯を救う、と言う美辞麗句で、かえって人生を壊されるなら、それは間違った考え方だ、と思います。
本当に大切なのは、口腔機能を守ること、の筈です。
痛くなく気持ち良く噛めて、話せて、生活できる。
それを一番に守ること、を考えるべきだ、と明言します。