かなり専門的な話になりますが、持論を書かせていただきます。
インプラントと被せものの接合方式には、インターナルと言うものと、エクスターナルと言うものがあります。
インターナルと言うのは、インプラント体の中に嵌め込む形で接合して歯を造る方式なので、接合部が被せものとインプラントだけで治せる、天然歯に酷似している方式です。
エクスターナルと言うのは、インプラント体と被せものの歯の間にアバットメントと言う中間構造物があり、それがインプラントと接合する部分と被せものとアバットメントの接合する部分とで2ヶ所接合部位がある方式で、天然歯とは全く違う方式です。
それぞれに特徴があり、患者さんにとって治療を受けるのが楽であるとか、治し方が煩雑でないとかで違っていて、一概にどちらが良いとは言い難い、と一般的には説明されています。
しかし、私はこの説に全く反対で、特に抜歯即時植立にエクスターナルタイプのインプラントを用いることは止めるべきだ、と言う考えの持ち主です。
にも関わらず、現時点で最もアグレッシブに抜歯即時植立インプラントを推進している流派が、エクスターナルしかない、どう考えても不自然としか言いようがない爪のある、しかも表面性状がHAハイドロキシアパタイトと言う流派なので、それは拙いでしょう、と言う思いから、自説を展開します。
その理由を説明します。
一番最初に疑問なのですが、何故例のメーカーはエクスターナルに固執し、インターナルを作らないのでしょうか?
現時点での、生物学的ルールからは、明らかにインターナルの方が治癒形式が良い、長い経過の中で骨の吸収、歯茎の退縮が少ないと分かっています。
その理由は簡単です。
インターナルなら接合部が少ないから、エクスターナルではアバットメントと被せものと言う接合部が2ヶ所ある、と言う弱点があるからです。
接合部は、どんなに頑張っても接合部で一体化している訳ではありません。
そこには、ミクロレベルであっても継ぎ目があって、隙間が生じていますし、極僅かであっても、ガタ付きからは逃れようがないのです。
となれば、菌の溜まり場が出来ていることになりますし、ガタ付きはやがて緩みとか破折の原因になることでしょう。
インターナルの場合、接合部が1ヶ所だけで済んで、しかもインプラント体に嵌り込む治し方ですからガタ付きはまず有り得ません。
そうなると、接合部の隙間の問題でも、セメントで付ける方式で解決出来るので、菌の溜まり場になる確率はかなり減ります。
但し、セメントで付ける方式は、非常に繊細で、歯茎の中にセメントが入り込んだら、インプラント周囲炎の原因になってしまいますから、危険が伴いますので、、物凄く注意が必要です。
そして、エクスターナルの方式の最大の問題点は、インプラントボディとアバットメントの接合部まで必ず骨が下がる、と言うことです。
この大きな原因は、接合部にあり、そこは絶対に一体化出来ないからそこまでは骨が下がるのです。
インターナルで一体化するインプラントではラフな面と研磨されている面の境界で骨の吸収が留まるのに対して、非常に不利になるのです。
それを避ける為に、現在ではプラットフォームシフティングと言って、意図的にインプラントとアバットメントの直径を変えて細くするやり方が良いと改良されています。
しかし、、例のHAインプラントではそれすらシステムとしてないのです。
片手落ちのシステムである、と言わざるを得ないでしょう。
確かに、HA表面なので、上顎の難しい場合でも、くっ付いてくれると言いう利点があるのでしょうが、SLA表面処理とかされているものであれば、然程差はないと言うのが私の実感です。
更に、現在紫外線を表面処理すること、光機能化することで骨との生着がより得られる、と言う情報もあり、尚更わざわざ色々と不利がある点のあるHAインプラントを使う理由が私には分からないのです。
因みに、私も光機能の話題で高価な機械まで買えないので、紫外線滅菌器の照射とか、光重合レジンの照射器で当てたりしてますが、それだけでも、確かにインプラント表面に生理食塩水を濡らすと濡れが全く違いますので、試されることをお勧めします。
そして、私が一押しの超音波治癒促進器ですが、これを作用させていると、全身のシンチグラム検査とかで調べると、明らかにその部位に骨化が進んでいることが認められるそうで、やはり相当に効き目があるんだと思われ、何故HA?と感じるのです。
HAの最大の弱点は、炎症に弱いことです。
石本先生が、リカバリーのご報告をされていますが、先生ほど見事にリカバリー出来る方ばかりではありません。
それよりも、一気に炎症がHA層伝って深化してしまって、重大な状態になっているのはセミナー、学会で報告されています。
それなのに、いざ逆回転して外そうとすると、HAインプラントは強固過ぎて取れない、と言う弱点もあります。
取ろうとすると、結局かなりの骨を犠牲にするしかない、それが大きな問題点でしょう。
そうは言いながらも、私はストローマンSLAで抜歯即時植立を何時もしているのですが、そう言うのは私位で、相当に異端児である、と言うのを言わないと片手落ちになるでしょう。
抜歯即時植立がさるHAインプラントの独壇場化し出しているし、それでトラブルが今後多発することも危惧され、このシステムに飛び付くDR達の考えが、HAだからに頼る、置いてくれば良いと言う家元の神様の発言で、問題が多発するのでは、と心配です。
何よりも、巻き込まれる患者さんが気の毒です。
誰が最終的に責任を持てるのでしょうか?
多分最終的には患者さんの自己責任、と言うことになるのではないでしょうか。
誰もこう言う問いに明確な答えを出すことは出来ないでしょう。
そういう現状の中で、私はリスクの低い方法、ストローマンSLAによる、天然歯に準じた治し方、歯肉の少し中に被せものの淵が入り、メインテナンス出来るインプラント治療をします。
万が一のリカバリー、上部冠外しての高齢時の義歯の支えに使える方法に応用が利く、と言う点、色々と考えて、私はこの方法が最も安心出来るのです。
なので、実は最近特に、ワンピースのインプラントを用いることが出来る症例では積極的に用いたりしています。
ストローマンにも、アバットメントにくっ付いているボディを出して欲しい、とリクエストしている位です。
接合部とか、色々と複雑な治癒形態は避けた方が良い、シンプルイズベスト、それが動かぬ真理だと思います。
生意気な事ばかり書きましたが、将来を危惧し、避けられる未来なら避けようと思ってのことです。
その他に他意はありません。
生物学的治癒、そのルールの中で、何が良いのか。
皆さんもそれぞれ考えて見ては如何でしょうか?