老朽化した空き家が積雪の影響で倒壊するケースが相次いでいるという。 近隣住民の安全や交通に
支障が生じる前に手を打つ必要があるが、自治体が解体に踏み切る例は少ない。 所有者に適切な
管理を促すための体制づくりが求められている。
1月下旬、青森県黒石市の市街地で、2階建ての空き家の屋根が雪の重みに耐えきれず抜け落ちた。
「通学路だから、子どもがいたら大変なことになっていた」。 音を立てて崩れる様子を目の当
たりにした近所の女性はこう振り返る。 県警は倒壊の恐れがあるとして、県道約200㍍を約
3時間にわたり通行止めにした。 一帯の積雪量が1㍍超に及ぶ今シーズン、同様に被害が市内
各地で相次ぎ、これまでに空き家2戸が全壊、6戸が半壊した。
2024年末から大雪に見舞われた同県は10市町村
に災害救助法を適用し、倒壊の恐れがある住宅の雪下
ろしなどの支援に乗り出した。雪害による同法適用は
約13年ぶりという。県内では2月上旬までに空き家
計23戸が全半壊し、除雪中の人身事故も相次いでい
る。同県担当者は「大規模な被害が短期間に集中し、
行政による支援が追い付かない地域も出ている」と緊
張感を漂わせる。全国の空き家は人口減少や高齢化の
進行に伴って増え続け、総務省によると23年10月
時点で住宅総数の14%にあたる900万戸に達した。
全域が豪雪地帯に指定されている10同県のうち9県
は空き家率が全国平均を超える一方、除雪のための人手不足は年々深刻化している。
近年は気候変動の影響もあって、短時間に大量に降る「集中豪雪」で人的・経済的被害が増大してい
る。 2月上旬には強い冬型の気圧配置の影響で、福島市土湯温泉町を通る県道が雪崩でふさがれ
温泉街の宿泊客や従業員らが一時孤立。 各地で混乱が生じた。
国土交通省によると、豪雪地帯で雪が原因で倒壊した空き家は22年度までの5年間で計840戸。
記録的な大雪となった21年度は367戸に上った。 空き家は虫害の発生や景観の悪化といっ
た様々な問題につながる恐れがある。 倒壊によって第三者に損害を与えれば所有者は賠償責任
を負う可能性もあり、豪雪地帯では雪害によるリスクが指摘されてきた。
15年施行の空き家対策特措法により、空き家の状態が著しく悪化して通行人や隣家に危険が及ぶ
可能性があるなどと判断した場合、自治体が「特定空き家」に指定し、行政代執行や略式代執行
といった措置で解体することが可能になった。 「特定空き家」は全国に推計で4万戸超とされ
る。 豪雪地帯で行政代執行などにより空き家が解体された事例は18~22年度に53戸。
23年12月の同法改正で災害時などは必要な手続きを省くことができる「緊急代執行」が可能
となったが23年度末までの適用例は全国で5戸だった。
適用が進まない要因の一つとなっているのが、実態把握の難しさだ。
国交省の指針によると、自治体は地域住民からの相談・通報や周辺環境への影響に基づき、物件
所有者に対する指導の是非を判断する。 現地調査や所有者の特定に時間を要するため「雪害に
よる倒壊を見越して対応しようにも、十分な人手を割けない自治体も多い」のが実情だ。
新潟県は23年時点で15万5000戸の空き家がある一方、23年度の行政代執行と略式代執行
が計8戸だった。 県の担当者は「強制的な撤去は私有財産の権利侵害になりかねず、あくまで
最終手段。 まずは住民に適切な管理を促したい」と話す。
空き家対策に詳しい名城大学の"庄村教授"は「自治体のマンパワーが限られるなか、外部専門家の
活用が対策のカギになる」と指摘している。 好事例として挙げるのが、奈良県生駒市が18年
に始めた「空き家流通促進プラットフォーム」事業。 市職員が住民に空き家の売却・賃貸の意
向を聞き取り、司法書士や宅地建物取引士、金融機関などにつなぐ制度で、1月末時点で158
件の利用実績があるという。 庄村教授は「空き家は雪による倒壊のリスクが高まるため、早め
の対策が望ましい。 所有者に利活用や解体に向けた選択肢を紹介するなど、放置を防ぐための
相談体制の充実が不可欠だ」としている。
これって、雪国だけのことではなく、どこにでもある問題。 しっかり考えたいものだ。
支障が生じる前に手を打つ必要があるが、自治体が解体に踏み切る例は少ない。 所有者に適切な
管理を促すための体制づくりが求められている。
1月下旬、青森県黒石市の市街地で、2階建ての空き家の屋根が雪の重みに耐えきれず抜け落ちた。
「通学路だから、子どもがいたら大変なことになっていた」。 音を立てて崩れる様子を目の当
たりにした近所の女性はこう振り返る。 県警は倒壊の恐れがあるとして、県道約200㍍を約
3時間にわたり通行止めにした。 一帯の積雪量が1㍍超に及ぶ今シーズン、同様に被害が市内
各地で相次ぎ、これまでに空き家2戸が全壊、6戸が半壊した。

に災害救助法を適用し、倒壊の恐れがある住宅の雪下
ろしなどの支援に乗り出した。雪害による同法適用は
約13年ぶりという。県内では2月上旬までに空き家
計23戸が全半壊し、除雪中の人身事故も相次いでい
る。同県担当者は「大規模な被害が短期間に集中し、
行政による支援が追い付かない地域も出ている」と緊
張感を漂わせる。全国の空き家は人口減少や高齢化の
進行に伴って増え続け、総務省によると23年10月
時点で住宅総数の14%にあたる900万戸に達した。
全域が豪雪地帯に指定されている10同県のうち9県
は空き家率が全国平均を超える一方、除雪のための人手不足は年々深刻化している。
近年は気候変動の影響もあって、短時間に大量に降る「集中豪雪」で人的・経済的被害が増大してい
る。 2月上旬には強い冬型の気圧配置の影響で、福島市土湯温泉町を通る県道が雪崩でふさがれ
温泉街の宿泊客や従業員らが一時孤立。 各地で混乱が生じた。
国土交通省によると、豪雪地帯で雪が原因で倒壊した空き家は22年度までの5年間で計840戸。
記録的な大雪となった21年度は367戸に上った。 空き家は虫害の発生や景観の悪化といっ
た様々な問題につながる恐れがある。 倒壊によって第三者に損害を与えれば所有者は賠償責任
を負う可能性もあり、豪雪地帯では雪害によるリスクが指摘されてきた。
15年施行の空き家対策特措法により、空き家の状態が著しく悪化して通行人や隣家に危険が及ぶ
可能性があるなどと判断した場合、自治体が「特定空き家」に指定し、行政代執行や略式代執行
といった措置で解体することが可能になった。 「特定空き家」は全国に推計で4万戸超とされ
る。 豪雪地帯で行政代執行などにより空き家が解体された事例は18~22年度に53戸。
23年12月の同法改正で災害時などは必要な手続きを省くことができる「緊急代執行」が可能
となったが23年度末までの適用例は全国で5戸だった。
適用が進まない要因の一つとなっているのが、実態把握の難しさだ。
国交省の指針によると、自治体は地域住民からの相談・通報や周辺環境への影響に基づき、物件
所有者に対する指導の是非を判断する。 現地調査や所有者の特定に時間を要するため「雪害に
よる倒壊を見越して対応しようにも、十分な人手を割けない自治体も多い」のが実情だ。
新潟県は23年時点で15万5000戸の空き家がある一方、23年度の行政代執行と略式代執行
が計8戸だった。 県の担当者は「強制的な撤去は私有財産の権利侵害になりかねず、あくまで
最終手段。 まずは住民に適切な管理を促したい」と話す。
空き家対策に詳しい名城大学の"庄村教授"は「自治体のマンパワーが限られるなか、外部専門家の
活用が対策のカギになる」と指摘している。 好事例として挙げるのが、奈良県生駒市が18年
に始めた「空き家流通促進プラットフォーム」事業。 市職員が住民に空き家の売却・賃貸の意
向を聞き取り、司法書士や宅地建物取引士、金融機関などにつなぐ制度で、1月末時点で158
件の利用実績があるという。 庄村教授は「空き家は雪による倒壊のリスクが高まるため、早め
の対策が望ましい。 所有者に利活用や解体に向けた選択肢を紹介するなど、放置を防ぐための
相談体制の充実が不可欠だ」としている。
これって、雪国だけのことではなく、どこにでもある問題。 しっかり考えたいものだ。