eラーニングの現状と展望

ネットラーニングHD、ネットラーニング、WIWIW、Phoenix Consulting、各代表取締役 岸田徹

『小林多喜二の手紙』

2010-02-28 21:57:26 | 読書/新聞/映画など
この本も、旅行中に読み終わりました。

もちろん、『蟹工船』や『党生活者』などの著者です。

1921年多喜二18歳の小樽商業学校の同級生へのはがきからはじまり、1933年1月とみられる恋人田口タキへの置手紙で終わるまで、159通の手紙がおさめられています。

拷問死にいたるまでの12年の間に、われわれがよく名前を知っている多数の人に、おどろくほど多数の手紙を出しています。収録されているのは、その十分の一にもならないでしょう。人物群像も浮かび上がります。

短期間に、みるみる成長していくようすがよくわかります。わたしも、学生時代にほとんど主要な著書は読みましたが、こんな順番に書いていたことは気がつかなかった。

いまは、一人の読者として敬意をはらうのみです。

『小林多喜二の手紙』(岩波文庫、2009年11月13日、987円+税)




「トンネルを抜けると雪国であった」

2010-02-28 18:05:10 | 読書/新聞/映画など
先日、新聞を読んでいると、『雪国』が1ページの半分にわたって紹介されていた。また、中西進先生の万葉集講話のなかでも、『雪国』にふれたお話があった。

そんなわけで、さっそく購入して、今回の海外旅行中に読みました。

有名な最初の文章は、「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国であった。」であるとずっとおぼえていました。ところが、原文には、(、そこは)がない!!「夜の底が白くなった。」と続いています。

すべて、すさまじいばかりの名文です。

文筆家の島村と山村の芸者駒子、そして、最初に列車で出会い最後の亡くなるシーンでおわる美しい声の葉子。列車の窓ガラスに映った車内の現実感がない世界とその先に見える山々の現実の世界。

トンネルのむこうとこちら、どちらが現実なのか。

「『あんた2月の14日はどうしたの。嘘つき。ずいぶん待ったわよ。もうあんたの言うことなんか、あてにしないからいい。』
 2月の14日には鳥追い祭りがある。」
島村は、この日の約束をやぶって、東京から来なかった。

「『あんた私の気持ちわかる?』
『分かるよ。』
『分かるなら言ってごらんなさい。さあ、言ってごらんなさい。』と駒子は、突然思い迫った声で突っかかってきた。
『それごらんなさい。言えやしないじゃないの。嘘ばっかり。・・・』
そうして、声を沈ますと、
『悲しいわ。わたしは馬鹿。あんたはもう明日帰んなさい。』
・・・・・
『一年に一度でいいから、いらっしゃいね。・・・』



「『それでいいのよ。ほんとうに人を好きになれるのは、もう女だけなんですから。』
と、駒子は少し顔を赤らめてうつむいた。」
  *これは、男性にとっては、かぎりなくきびしい言葉ですね。一番の逃げ道は、「そんなこ
   とはない、男もほんとうに人を好きになれる」と否定すること。
   でも、そうでないとしたら・・・。この言葉の理解は、やはり男女でちがうのだろうか。

川端康成『雪国』(新潮文庫、2009年6月15日、第141刷、362円+税)