アメリカの元副大統領アル・ゴアの最新作『理性の奪還』を読みました。
「虚構をもって政策の根拠とし、説得力ある反証がいくら提出されても態度を改めようとしない。・・・『いったいこの国はどうなってしまったのか?』」
「何かが根本的におかしくなってしまった」それに大きな影響を与えているのは、巨大企業に所有された一方的なメディアであるテレビだと著者は指摘する。「ジャーナリズムは、ニュースビジネスに変身し、メディア産業となり、いまではほぼ完全に巨大企業の手中にある」
さらに、政治的に影響を与えるそのテレビ広告を誰かが買い、「マネーがアメリカ政治を支配する」
「その結果、われわれの民主主義は空洞化する危険にさらされている」・・・「なんとも不気味である」
「現在の民主主義の危機には、何か根本的に新しく、いままでとは異なったものがある。何かが非常にまずいことになっている」
恐怖を駆使するブッシュ政権。対テロ戦争の永続化を宣言し、先制攻撃の権利と核使用を表明し、戦時大統領として立法・司法をこえる全権を掌握したブッシュ政権は、虚偽をもとにイラク戦争を強行し、民主主義を圧殺しているとゴア元副大統領はするどく批判しています。
2000年の大統領選挙で、もし正しく開票がおこなわれていたらゴア大統領がうまれていた可能性が高いと考えると、アメリカの損失ははかりしれないといえます。
ゴア元副大統領は、ブッシュは、世界の覇権国家アメリカの地位を失わせ、民主主義国家としてのアメリカを辱めた指摘していますが、かれの危機感は、はたしてアメリカに復元する力があるのかというところにまでいたっています。
「結局のところ、愛国者法は大きな間違いである。」
「”右”か”左”かの問題ではなく、”正”か”誤”かの問題だ」
アル・ゴア『理性の奪還』ランダムハウス講談社、2008年2月18日刊、1800円+税