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「グレイテスト・ショーマン」

2018年02月23日 | ミュージカル映画

象やファンタジーの動物、異形の人々を見世物にした、
実在の興行師P・T・バーナムの半生を元にしたミュージカル。
監督はこの作品が初監督。
https://www.youtube.com/watch?v=wqGOKoXB3UA
予告がすごくワクワクさせてくれるやつだったので見に行きました。
評価は割れています。曲と歌と映像はどれも素晴らしいです。捨て曲がない。

貧しい仕立て屋の息子の主人公は、得意先の貴人の娘と恋に落ち、
極貧のなかで手紙を通じて愛を育み、駆け落ち同然に結婚するが、
彼女に最上の暮らしをさせるという約束はまだ果たされていなかった。
そんなある日、職を失った主人公は奇妙なアイディアを思いつく…というあらすじ。

評価が割れているのは、主人公の取る行動がわりとクズめなんですけど、
それをヒュー・ジャックマン氏の持つ聖人りょくでなんとかカバーしようとして
それなりにうまくいっているところだと思います。
そこのところは下記にまとめました。
それにしても曲が最高で映像が美しく、サーカス場面も、
バーでの男同士の猛烈な口説きの歌とか、オペラの歌も、ロープを駆使した動きも、
見たいと思った瞬間に俯瞰、回転、かゆいところに手が届くカメラワークで、眼福でした。

内容ばれ

上流階級や銀行や批評家などの権威に反抗する闘士かと思えば
一番その権威に弱いのは本人で、

異形の者たちの庇護者で味方かと思えば
彼等が用済みになったら冷淡に扱い、

自由なショーに誇りを持っているかと思えば
自分の耳より評判を信用すると言って高名なオペラ歌手を雇う、

せめて妻子を大切にする姿勢だけは守り通すかと思えば
娘たちが泣いて止めても去ってしまう。

妻が彼に言うセリフ
「誰の事も愛してない。愛してるのはショーだけ」
ですけど、彼は別にショーさえも愛している訳ではなくて
あるのはただ、子供の頃に自分を侮辱した
すべての人間、階級、社会への恨みで、それはおそらく永久に晴れない。
何を詰め込んでも、ぽっかり空いた穴に落ちていくだけで満たされないんですよね。
(まさにNever Enough)
でも彼がどんなにひどい事をしても周囲は許して彼を愛する。
演じたのがヒュー・ジャックマン氏じゃなかったら
私も6回くらいサイコパスサイコパス言ってたと思います。

彼の飢えにはエネルギーがあって、
高貴なものを見るとどうしても手に入れたくなり、
その熱病みたいな彼の夢に触れると、高貴な人々は彼の手に落ちてしまいます。
妻もそうだし、パートナーもそう。オペラ歌手も。
でも飢えが彼を病のように蝕んで、いずれは次が欲しくてたまらなくなる。
積み重ねられたエピソードから、あのラストに着地するのは(あの尺では)不可能な事が分かります。
でもそれは脚本が悪いのであって、曲に罪はない。

ヒュー・ジャックマン氏の足が長すぎて、何回か「CGでは…?」って思いました。
なんか現在の人間の居住環境より、水辺に立って水面下の魚を狙うのに適した体だと思う…。

「SING」の主人公のコアラも、P・T・バーナムをモデルにしているのでは?
という意見をネットで見掛けて、「あっ確かに!!」って思いました。
オペラ歌手も出てくるし!そしてどっちの映画にもパートナーの羊が出てくる。
どっちの羊にも「友達は選んだ方がいいヨ…」って思いますけどね。

余談ですが、綺麗ごとじゃなくてちゃんと当時の倫理観で
おぞましい部分と美しい部分の両方が見たい…と思った方には
近藤ようこさんが漫画化された「五色の舟」をおすすめします。

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