世界を救うために戦う女性が主人公のエンタテインメント映画です。
これが本当に数が少なくて、百本に1本レベルなので、
(最近ではゴーストバスターズやSWの新作やハンガーゲームがあります。ダイバージェントもかな)
女児ちゃんたちに見てほしいです。
女性が主人公の映画って多くは恋愛頑張る、病気と闘う、友情すてき、
家庭やお仕事がんばる、たまに事件と戦う、生き残るために戦う、
ごく稀に公共の利益のために頑張る、という感じで、
多数のために強大なパワーを使って何かと戦うという作品は滅多にありません。
そして女性監督。この手の派手なビッグバジェットムービーを
女性監督が単独で撮った作品はものすごく珍しいです。というか私は初めて見るかも。
DCエクステンデッド・ユニバースの4作目です。
4作の中では1番の出来だと思います。
マーベルで喩えるとソーとキャプテン・アメリカを足して割ったような感じのお話。
ゼウスによって作られた女戦士アマゾン族は、
不思議な力で守られた島で心身を鍛えながら暮らしていた。
王女ダイアナは母の反対を押し切って将軍に師事し、
誰よりも強い力を身に付ける。
ある日島に不時着したアメリカ軍所属のトレバーと出会い、
ドイツ軍がガス兵器を開発している事を知った彼女は、
正義を行うために島の外の世界へと飛び出していく…というあらすじ。
冒頭のアマゾン族の訓練風景、すごい格好いいです。
ファンタジー女戦士が剣でつつきあってるのではなく、
ガチで身体を鍛えている人が本気の戦闘民族を演じてます。
そしてドイツ軍と戦うダイアナ、めちゃくちゃスカっとする。
銃弾の雨を盾でしのぐ溜めのポーズからの突撃、
あの高揚するテーマ曲、女神のような美しさ。
そしてダイアナが並外れて強大だからといって、
男性は陰に守られてキャーキャー言ってるだけの添え物という、
男性客にとって面白くとも何ともない映画かといえばそうではないです。
この映画で一番優れている点は実はトレバー大佐の性格造形だと思います。
それとワンダーウーマンとのパワーバランス。
冒険物語の大半は男性主人公であるので、男性鑑賞者の多くは(一部の熟練者を除いて)
女性キャラクターに感情移入する必要も経験もありません。
ゆえに彼等が自己投影して満足できるような男性登場人物が必要になります。
監督か脚本の人はこれを熟知していて非常にうまくやった。
少年漫画青年漫画で女性戦士が主人公の場合、
多くはハンドラー、教官、指揮官、指導者、助言者などの男性が付きますが、
トレバー大佐の場合は助言者ですね。
これは演じているクリス・パインさんの雰囲気もあると思うのですが、
ダイアナを押さえつける言動はなく、彼女の話を聞き、
食い違う双方の事情を一生懸命すり合わせようとする。
客観的に物事を見るがピュアな面もある。紳士。もちろんイケメン。
ダイアナは生まれてから島を出た事がないので世間知らずで、
世界情勢もマナーも風習も分からないことだらけです。
男性から見ても女性から見ても満足できる難しいラインを、
綺麗にクリアしている感じ。
もちろん「逆」ベクデル・テストも通ります。
ラストばれ
アレスくんは、きょうだい全員ぶっ殺したわりには、
末の妹のダイアナちゃんにだけはなぜか執着していて、
仲間になる?なる?ならない?なろうよ?ってめっちゃ勧誘激しかった(笑)。
シューリス先生、長い指での念動力攻撃きれいでした。
でも、ちょっと、その兜は、ださい。最終戦はややもっさり気味だった。
というか公開前に映画サイトでデヴィッド・シューリス(アレス役)って紹介されてましたけど
それあかんやろ!!ねたばれやろ!!
アレスに操られ不和に囚われた人間たちを救ったアマゾン族が
その人間たちに奴隷として扱われ、
もう彼等の世界には関わらないっていう風になったのも分かるし、
それでも人間を救わなければ!アレスを倒さなければ!ってなる
ダイアナの気持ちも分かる、
あとアレスがいてもいなくても争いは起こるし、人間は善良な部分ばかりではない、
でもそれでも守りたいっていうトレバーくんの気持ちも分かる。
アイスクリームや雪や音楽や、心の傷や信頼を学んで、
ダイアナが女神として完成されていく映画でした。
「ジャスティス・リーグ」楽しみです。
(登場人物のなかにヒッポリタ女王の名前があるけど、あの島はできればそっとしておいてほしい!)
「町山智浩 映画『ワンダーウーマン』を語る」
ひたすら「へー!」「へー!」「へー!」と言うしかない紹介記事。
ネタバレはないですが、バイアスがかかるので
鑑賞後にご覧になった方がいいです。
http://miyearnzzlabo.com/archives/43736