映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「ルックバック」

2024年07月04日 | アニメ映画

小学4年生の藤本は学校で配布される新聞に四コマ漫画を連載し、
クラスの尊敬を集めていた。
しかし不登校児童の京本も同時に四コマ漫画を連載する事になり、
その超画力は藤本を驚愕させ、プライドをへし折る。
2人の少女は数年後に出会うが…というあらすじ。
藤本タツキさんが2021年に発表された同名漫画が原作です。
ネットで無料公開されたこの作品は話題になり、
どちらかといえば日本の作り手達を驚愕させ、
プライドをへし折っていた(ように私には見えた)。

上映館が少ないせいか大盛況でした。
若いお客さんが多かった。男女比は半々くらい。
作品は実質55分ほど。
びっくりするくらい原作そのままで、
足されていたのは時間の経過シーンとフラッシュバックくらいでした。
(あと藤野の貧乏ゆすりや、京本の山形弁とか)
皆がそれぞれ違うシーンで泣いていたのが趣深かったです。

ラストまでばれ

出発地点ではたしかに皆と一緒にいたのに
夢中になっているうちにいつの間にかやりすぎてしまい、
皆はいなくなっているか、またはドン引きされている、
どうしても普通に、平均的にやる事ができない、
そういうタイプの人に、より深く刺さる話なので、
過集中の経験がなく周囲に合わせてうまくやれる人には、
さほど迫るものはないように思う。
(友の喪失を前面に、全力で押し出してはいないので)

この作品は多元宇宙論が採用されていて、
別世界の京本は助かり、悲劇は起きない。
が、私たちの見ていた世界の京本は助からないし、藤野は独りで描くしかない。
でもこちらの藤野が破った漫画があちらの京本に届き、
あちらの京本の描いた漫画がこちらの藤野に届く。
それは確かに奇跡だし、私たちを救われたような気持ちにさせる。

藤本タツキさんの作風として、説明の省略がある。
例えばジャンプのランキングシステムとか知っている人のほうが少ないのだから、
京本母などに「そのハガキは何?」てきな会話をさせればもっと分かりやすい。
だがそんなシーンはない。入れると鈍臭くなるからだ。
あと、京本が引きこもったきっかけや、
京本と絵の話を京本の口から語らせると分かりやすい。でもそれもない。
藤野に漫画やめなって忠告した女子が、プロデビューした藤野をチヤホヤし、
言いたいことが言えない藤野の代わりに京本がズバっと言うシーンとかもない。
入れるとねむたいからです。
切られている説明をもっと丁寧にして、女子友情部分をエモくして、
人気音楽家の歌をギャーンと大音量で流したら、
それこそ新海監督の客層を引いて稼げたと思いますが、
そうしなかったのは上品ですね。

自分の書いた2021年のルックバック感想を読み返したが
批判に対して激しくシャドウボクシングしており面白かった。
原作の話をしますが、
あのコミックの中で間違いなく一番素晴らしい画は、
雨の中で独り有頂天の藤野の見開きだと私は思うが、
あれと同等の効果を得るのに、
あの尺と、強い音楽が必要なんだな、なるほどと思いました。
(音楽といえば徳澤青弦さんのお名前があった。
彼は舞台「うるう」に参加されていたが、
あれもまた時間とbeautifulfriendshipの話だ)

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のパッケージが登場するので、
ラスト部分のインスピレーション元なのでしょうけど、
こちらでの事実は変わらないが、あちらには救いがある(あった)という意味では、
C・S・ルイス先生のあの作品を私は連想する(一応ねたばれ避け…)。

唯一、それはどうなのか?と思ったのが料金一律1700円各種値引き無効。
せめて学割は残してあげてほしかった。
藤野と京本が一緒にこの映画を見ていたら5000円では収まらなかった。
(ところで「経済ぐるぐる回していこうぜ」が
「生クリーム食べまくろうぜ」(?)になっていたがなぜだろうか)
(生クリームはおいしいね…)


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