「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

梅雨寒や昔南部にむしろ旗 佐藤 秀 「滝」7月号<滝集>

2012-07-18 04:54:18 | 日記
 梅雨寒の暗さと冷たさと百姓一揆。「負」が並列された句
ではあっても、そこに強弱を感じた。江戸時代の農民がおこ
した一揆を大いに推奨する。今の日本の農家はおとなしすぎ
る。もっともっと怒るべきなのである。丹精した米の買取価
格はどう考えても安すぎる。それなのに高い店頭売価。「一
揆をおこせば」と、たきつけたことがあるが、稲作農家の高
齢化がそれを許さないそうだ。掲句には憤慨の気持ちが見え
るような気がした。農機店をしているので農家の人が労働に
見合う収入を得られていないことが良くわかる。莚旗を掲げ
るなら、一番にその指にとまりたいと思う。(H)

復旧の鳥居を映し植田かな 浅野 広 「滝」7月号<滝集>

2012-07-17 04:16:58 | 日記
 東日本大震災の復興がなかなか進まない中、震災前の状態
に戻った鳥居。子供の頃から其処にあり、故郷の変わらない
景色だった鳥居が震災で壊れてしまった時のショックが強く
あったのでしょう。田植の間もない田圃に映った真っ赤な鳥
居。主宰は「水には何でも映る、それは、そろそろ卒業しよ
う」というような事をおっしゃる。それでも詠みたかった鳥
居の景。嬉しさが伝わってきました。(H)

新緑や深呼吸追う聴診器 井上佐智子 「滝」7月号<滝集>

2012-07-16 04:03:39 | 日記
 日ざしを乱反射してキラキラと光る新緑のそよぎがことの
ほか美しい窓外。入院されているのでしょうか、回診かもし
れませんね。「はい吸ってー」と医師の声に促されて大きく
息を吸う。当てていた聴診器を外して医師がにっこり笑って
頷く。そんな情景を想像した。深呼吸はやっぱり新緑の中で
したいですね。そんな日がきっともうすぐです。新緑の季語
が元気に働く句だと思いました。(H)