「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

ゴーガンのをんな骨太雲の峰 菅原緋沙子 「滝」11月号<滝集>

2011-11-30 19:57:37 | 日記
 共同生活をしていたゴッホと絶交したゴーガンが、新天地を
求めてたどり着いたのが、南の国タヒチ。後に彼が妻としたテ
ハマナをモデルにした絵がある。当時の彼女は十三才。南国の
女性は早熟だ、野性味あふれるがっしりとした体つきに圧倒さ
れた。ゴーガンの豊な色彩と「雲の峰」が程よく釣り合ってい
る。(鈴木幸子)

海見ゆる悲しき場所へ小鳥来る 相馬カツオ 「滝」11月号<滝集>

2011-11-29 20:08:48 | 日記
 鳥雲に・・・。春、北方の繁殖地へ帰って行った小鳥たち、
その直後東北は大震災に襲われた。・・・山河、家並、津波は
それら全てを奪った。反年を経て渡って来た小鳥たちは、仰天
したであろう。記憶の中の風景は何も残っていないのだから・
・・。「小鳥来る」の明るい季語に救われた。(鈴木幸子)

早退けの少年秋の草結び 堀籠政彦 「滝」11月号<滝集>

2011-11-28 20:13:36 | 日記
 食べ頃になった通草が目の前にちらついて、居てもたって
も居られない。少年は腹痛を訴え早退した。少年が草の罠を
仕掛けたのか、掛かってしまったのか、通草はあったのか、
否かそれは諸氏の想像におまかせしょう。少年(少女)時代、こ
んなことの一つや二つ、誰にでも覚えがあろう・・・。(鈴木幸子)

足下の毬栗ふいにホイッスル 芳賀翅子 「滝」11月号<滝集>

2011-11-27 10:18:15 | 日記
 久し振りに会った二人の散歩中の出来事である。囲りの景
色が目に入らぬほどに話に夢中になっていた。その時突然ホ
イッスルが鳴った(ような気がした)。びっくりして立止った
足もとに毬栗がころがっていた。うっかり踏んで痛い思いを
するところだった。護身の本能にスイッチが入って危険を知
らせたのかも知れない。取り合わせの「ホイッスル」が効い
ている。(鈴木幸子)

見開きは卑弥呼の国史野分きたつ 佐藤時子 「滝」11月号<滝集>

2011-11-26 20:02:31 | 日記
 三世紀半ば、邪馬台国の卑弥呼が内乱に明け暮れる三十余
りの連合国家を総括する女王になった。卑弥呼亡き後男王が
即位したが、又も内乱になった。そこで卑弥呼の一族の少女
を立てると再び国が治ったと「蘶志倭人伝」は伝えている。
いつの世も政権交代には嵐が吹き荒れるものだ・・・。邪馬
台国はどこにあったのか? 九州説、幾内節、野分はこの二
つの論説の中をどう吹き抜けて行くのだろう。(鈴木幸子)