「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

漁夫の手の向日葵の種ひかりをり 梅森 翔 「滝」8月号<滝集>

2011-08-31 20:17:47 | 日記
 津波による田圃の塩害を連想させるべく「漁夫」が据えら
れたかと思う。塩分除去に効果があるという向日葵の種が希
望の光りのように手の中にある。向日葵はチェルノブイリ原
発事故でセシウムを取り込み易い植物として植えられている。
肥料の一つであるカリウムを与えなければ性質の似ているセ
シウムを土壌から吸い上げてくれるそうだ。その処分も又懸
念されるが、拡散を招く焼却処分ではなく菌による分解で向
日葵の体積は1%程度になり放射性廃棄物の量を減らすことが
出来るという。「種ひかりをり」が迷い込んだ洞窟の闇に見
つけた陽の光であって欲しい。(H)

半壊の罹災証明へちま苗 平賀良子 「滝」8月号〈滝集〉

2011-08-30 22:00:04 | 日記
 被災されたのですね。お見舞い申し上げます。「半壊」は
補修すれば元通りに再使用できると思われる破損とは言え、
相当の壊れ方であるが、糸瓜は、うまく育てば5m以上の高
さまで到達することも可能だという。そんな、ほんの少し先
の未来を描く緑のカーテンが想像されて、「震災になんか負
けない」という力強ささえ感じた。今頃は日光を確実に遮っ
ていることだろう。(H)

留守電の点滅紙魚の走りけり 内山貴美子 「滝」8月号〈滝集〉

2011-08-27 05:10:22 | 日記
 暗い部屋に留守番電話が点滅している。照明を付けると、
紙魚が・・・。どんどん進化する電話と原始的な昆虫である
紙魚に、今と昔の家族のありようの違いが見えるようだ。
「ただいま」の声に子供たちが駆け寄ってきた嘗てと、紙魚が
走り去るばかりの今。視覚が語る人恋しさ。紙魚が少々食べた
かもしれないファクスが楽しい便りでありますように。(H)