「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

実存死待つ身に永し四日かな 赤間白石 「滝」3月号<滝集>

2013-03-31 06:12:49 | 日記
 訃報は葬儀が終わってから私の耳に入った。鑑賞するには
あまりに悲しく、私の想像を超えた所にある句である。他の
三句「雪降るや吾が音楽は津軽より・身の内の管の洗浄事は
じめ・虎落笛いくたび痛み遠ざかる」からは、病院の窓に降
る雪に、好きな津軽三味線の音色が添ってくる。治療が事は
じめだったとはお辛かったでしょう。「虎落笛」は、目をつむ
り聴覚でその病んだ身体の悲鳴を語っているようですし「い
くたび痛み遠ざかる」から、何度も耐え難い痛みに襲われた
ことが分かります。もうあの優しい笑顔には会えないのです
ね。互選が入らなかった時も、披講が上手くできなかった時
も、必ず励まして下さった白石さん。ありがとうございまし
た。そして、さようなら。合掌。(H)

実存死待つ身に永し四日かな 赤間白石 雪降るや吾が音楽は津軽より 赤間白石    「滝」3月号〈滝集〉

2013-03-30 05:42:14 | 日記
 実存死という哲学的な言葉に、作者の心情を図ることは私
には難しいが、長いこと病と闘ってきた作者に心を寄せるこ
とは出来るのではないかと、この句に向き合った。限りある
日々を家族を思いながら自分らしく生きたと話されたご長男。
残された津軽三味線と「滝」誌。(小林邦子)
白石さん安らかにお眠りください。(合掌)

加湿器の湯気の向こうにアルジェリア 梅森 翔 「滝」3月号〈滝集〉

2013-03-29 05:58:54 | 日記
 世界中に仕事に旅行に日本人は存在し、日本人が事件や事
故に会うことが多くなった。しかもとても悲惨な。私たちは
例えば加湿器の向こうの画面にしかそれを見ることは出来な
い。まさに日常の中の非日常が目の前にある。無関心ではい
られない。(小林邦子)

寒紅の競り落したる大魚かな 今野紀美子 「滝」3月号<滝集>

2013-03-28 05:26:13 | 日記
 作者は塩竈の方なので、早起きをして魚市場で競りをご覧
になったのでしょう。「寒紅の」ですから女性ですね。「大魚」
と言うのですから鮪でしょうか。魚屋さんと言うよりは鮨職
人さんかと思います。今は女性の職人さんもいるそうですか
ら、自ら仕入に来て、競り落とした姿に、驚き以上に痛快さ
を感じた句。(H)