「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

天文台出て夏蝶の空のあり 浅野 稜 「滝」7月号<滝集>

2012-07-26 05:16:23 | 日記
 5月の滝吟行会、主宰の特選に選ばれた、仙台市天文台で
の一句。今しがたプラネタリウムを見てきた目にはひときは
眩しい空にアゲハチョウが現われた。この空は蝶の住処だと
直感した作者。夏蝶の空と言い切ったところに作者の蝶に対
する熱い思いを感じた。全ての命のふるさとが宇宙なのだ。
(中井由美子)

別れの手振る真ん中を夏燕 芳賀翅子 「滝」7月号<滝集>

2012-07-25 05:10:33 | 日記
 どんな別れの場面だろうか。燕の季語から察すると湿っぽ
い男女の別れではなさそう。久しぶりに会った友達との楽し
いお喋り、そして別れの時。その寂しさを吹き飛ばすかのよ
うな作者の笑顔といつまでも大きく振る手が目に浮かぶ。二
人を横切る燕を真ん中というストレートな言葉で表し清清い
句となった。(中井由美子)

正座してぼうたんの緋を濃くしたる 谷口加代 「滝」7月号<滝集>

2012-07-24 05:07:33 | 日記
 作者には「咳こめばマチスの赤の溢れくる」という句があ
る。絵画鑑賞が趣味の作者、色に敏感なのは当然。特に、赤
にはインスピレーションが湧くのでしょうか。掲句、正座し
ての措辞には牡丹と作者の一対一の対等な関係を感じさせる。
そんな緊張感漂うなか牡丹の緋色がいっそう美しく作者を魅
了したのだ。(中井由美子)

牛乳を飲みつつ夏の星つなぐ 菅原鬨也 「滝」7月号<飛沫抄>

2012-07-19 05:05:41 | 日記
 作者には「牛乳のうす膜寒波来りけり」の句もあること
から、健康のことを考え牛乳を飲むことを日課にされてい
るようだ。お風呂上り、冷たい牛乳で喉を潤しながら、わ
が遊び場のごとく星空を眺めている。天の川が美しい季節。
つないだ星は天の川をまたいで輝いていること座のベガ、
わし座のアルタイル、白鳥座のデネブだ。その形は夏の第
三角形といわれている。揚句は地球上の一人の人間の存在
と広大な宇宙との取り合わせに生まれた詩。ギリシャ神話
からミルキーウェイと言われる天の川。牛乳に掛けた作者
の遊び心だろうか。(中井由美子)