「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

絵の具三つ混ぜたやうなる暑さかな 芳賀翅子 (10月号滝集)

2010-10-31 06:31:40 | 日記
 今年のような猛暑を詠んだ句は実に多かったが、掲句のよ
うな突飛な表現には初めてお目にかかった。ところで絵の具
三つと言われると、どうしても色の三原色を思わずにはいら
れない。色材の三原色では混ぜ合わせると黒になってしまう
し、光の三原色では白となる。しかしこの場合は、この暑さ
からすると油絵の具に違いなかろう。いかにもぎらぎらする
太陽まで思い浮かべてしまった。(S)

ハンカチを握りなほして告白す 鈴木幸子 (10月号滝集)

2010-10-30 06:15:38 | 日記
 もちろん必死なことは十分に伝わるのに、何故か滑稽さも
漂わせるのは何故だろう。それはまさに手に汗をかかんばか
りに握りしめていた「ハンカチを握りなほした」ところにあ
るのではなかろうか。どのような告白かは分からぬまでも、
女性からのものだけに一層切実味が諧謔感を伴ってしまう。
(S)

原爆忌裁かるるもの無き不思議 小林俊一 (10月号滝集)

2010-10-29 05:26:13 | 日記
 世界史上唯一の戦争による被爆国、日本。戦争を考えるた
び「勝てば官軍」の言葉がよぎる。「戦争に大義は無い」と
も言われる。それにしても軍人、民間人の区別も無く、まさ
に無差別的人類抹殺の最終兵器を使用することの非人道的行
為には、いかなる大義も容認されざることではなかろうか。
核兵器は地球そのものの存命をも危うくするもの。二度と使用
されてはならないのである。(S)

踊の輪抜けて秩父の闇にあり 加川則雄 (10月号滝集)

2010-10-28 05:25:54 | 日記
 観光ガイドによると秩父には年間300余もの祭があると
のことである。そのなかでも特に有名なのは「秩父夜祭」だ
ろう。ここでは夏祭の盆踊りのことかもしれない。踊りの輪
に加わって十分に堪能したのではなかろうか。そうして踊り
の輪の中から抜け出た時に、改めて奥深い秩父の山々の
闇が、まるで覆いかぶさるかのように感じられたのではなか
ろうか。そう言えば秩父は金子兜太の生まれ育った郷里でも
ある。(S)                    

砂時計返す八月十五日 木下あきら 10月号滝集) 

2010-10-27 06:28:57 | 日記
 日本にとって八月は特別な月である。言うまでもなく敗戦
忌。決して戦争をしてはならないという戒めも語り継がない
限り風化していく一方であろう。砂時計を返すという行為に
はそのことが象徴されているように思われてならない。私自
身は戦後間もなく生れた団塊の世代の走りであるが、幼心に
戦争の傷跡は未だ色濃く残っていたことで未体験ながら強く
そう思う。(S)