「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

般若つて女だったの春の雷 栗田昌子

2017-06-22 05:49:04 | 日記
 「えっ、知らなかったの?」と、問い返してしまいそうだが、たぶん、誰かの言葉をそのまま拝借したのだろう。私にも、いつだったか忘れたがその事実は衝撃的だった。「春の雷」は「思いがけない」ということに呼応して面白い。
 余談だが、「雷が鳴ったらお臍を取られるから隠しなさい」と言われた事と、祖母の「般若腹見た」と聞こえるお経がごっちゃになって、「死ぬ」って、そういう事なのかと思っていた子供の頃を思い出した。今は雷が鳴ったらパソコンの電源を切る。お経は、般若波羅蜜多心経(はんにゃはらみったしんぎょう)とちゃんと聞き取れるし、般若面とは無関係と知るつまらない老女になってしまった。(博子)

イースター籠にあんパンメロンパン 木下あきら

2017-06-20 06:06:41 | 日記
 イースターはキリスト教の最大の祝日で、十字架にかけられて死んだイエス・キリストが三日目に復活したことを記念・記憶するお祭り。クリスマスと同じように家族でごちそうを食べ、お祝いをする日だという。生命の誕生を意味する卵を、料理のみならず、卵を使った遊びを行うのも特徴だそうだが、掲句は「籠にあんパンメロンパン」と、ご馳走とは言い難い。しかし、リズムの良がお祭り気分を醸し出して楽しい。この二種類のパンが日本発祥であることを思えば、日本でのイースターの認知度とか、復活祭とも言うことを思えば、退院の軽やかさなども思われて、頭の中の整理がつかないが、二物衝撃の妙味。それでいいのかもしれない。(博子)

春雷やまなこ息づく雲龍図 平川みどり

2017-06-18 09:41:15 | 日記
 春を告げる雷に法堂(はっとう)の雲龍図の、「雨を呼ぶ水神の龍が仏法の教えを雨のように降らす」と言われる龍のまなこがギョロリと動いたかのようだ。すべての命の目覚めを思わせる季語を配して、龍神が敬意を持って詠まれている。薄暗い法堂の天井を見つめる視線が、雨音に移る作者の白い喉首も又美しい。(博子)

春の宵ゆっくり外す貝ボタン 鈴木幸子

2017-06-15 04:32:37 | 日記
 明るく艶めいていて、そこはかとなく感傷を誘い、浪漫的な雰囲気のある春の宵。そこに貝ボタンである。高級なワイシャツを着た男性が思われ、「ゆっくり外す」というしぐさに、なんだかドキドキしてしまう。取合せの妙が物語をつむぐ力を持っていて、私の妄想を膨らませにかかるのだ。いっとき物語の主役になってみるのも楽しい。(博子)