「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

柿の皮くるくる乾く鳥の声 佐々木博子 「滝」1月号<滝集>

2015-01-31 04:25:02 | 日記
先日、知人からレシピを貰い、大根のビール漬を作った。
砂糖を少し入れて甘味を出すのだが美味であった。次回は柿
の皮を入れて牛乳漬に挑戦してみようと思っている。作者は
白菜漬の準備でもしているのか。くるくると干し上がった柿
の皮は色も形もオブジェのようで見ていて楽しい。小鳥の囀
が気分を浮き立て、子ども達の笑い声が絶えない。(木下あきら)

鶏小屋に卵ころがる野分後 加川則雄 「滝」1月号<滝集>

2015-01-30 03:54:07 | 日記
 各家で鶏を放し飼い同然で飼っていた懐かしい昭和の風景
である。卵が貴重な時代、病気にならなければ食べることが
できなかった思いでは誰にでもある。そんな貴重な卵がころ
がっている景に接し、野分の後のほっとした朝の清清しい一
瞬を切り取った伎は一朝一夕で会得はできない。(赤間学)

ドアノブの凍てし夜なり巨船来る 谷口加代 「滝」1月号<滝集>

2015-01-29 04:08:21 | 日記
 TVを点けたら久しぶりに大橋巨泉がクイズダービーの司
会をしていました。病気で手術をしたとかで往年の元気さは
ありませんでしたが、楽しい時間でした。冬の夜ですからド
アノブが冷えて霜が付くことは私も経験していますが、素手
で開けようものなら手は貼りついてしまうし、背中がゾクっ
としてしまいます。私は巨船から巨泉を思い出しました。(木下あきら)

胸中に棲める木枯二号かな 平川みどり 「滝」1月号<滝集>

2015-01-28 04:02:56 | 日記
 女性の胸中に棲むものとは、女神様の様な優しさ、母性愛、
はたまた鬼女の様な恐ろしさ。まさか作者の胸に鬼女など棲
みついてなどいないでしょう。木枯といっても二号ですから、
茶目っ気たっぷりの小悪魔ぐらいのものでしょう。ちょっと
控えめな木枯二号という表現が気に入りました。(木下あきら)

三島忌や背中にまはるペンダント 平川みどり 「滝」1月号<滝集>

2015-01-27 04:05:46 | 日記
 三島忌というと思い出す。中三の家庭教師中、追い込みに
はいっていたので朝八時から教えていた時、夕方のテレビに
あの楯の会の軍服姿で市ヶ谷自衛隊官舎バルコニーで憲法改
正のため自衛隊の決起(クーデター)を呼びかけた後に落胆
して、割腹自殺をした事件を知らせるニューズである。横光、
川端、太宰、亀井に被れていた私は、剣、金閣寺、仮面の告
発、サド侯爵夫人等でも感性を磨いていたので、そこで中七
下五の「背中にまはるペンダント」との取合せとなると戸惑
う。私流に言わせて頂くと三島は善悪でなく、ただ自分の美
学の純粋さに殉死しただけなのだから。どの角度だとこの取
合せの妙が解けるのか少し推敲をしてみようと思う。(赤間学)