燃え上がる手紙の束の涼しさよ 阿部風々子 (9月号渓流集) 2010-09-30 05:17:37 | 日記 燃焼の中に涼しさを詠んで特異。身辺整理の一つとして手 紙の束を燃やした。暑さの中の手紙の炎、心中を安堵させ、 涼しくなったのだ。「涼しさよ」の「よ」は心境を象徴して 巧み。(K)
八月や叔父はアッツの石の骨 外崎光秋 (9月号滝集) 2010-09-29 05:16:02 | 日記 アッツ島又は熱田島とも、アリューシャン列島の中の小島。 1943年5月守備隊は米軍の攻撃により全滅。この句はこ の島で無残な最期を遂げた叔父さんの遺骨が骨でなく島の石 塊であったという、無惨さ。「八月」が動かない、平和な現 在に深い思いがこもる。(K)
大通り灼け白昼の人さらひ 鈴木要一 (9月号滝集) 2010-09-28 05:36:41 | 日記 いつもは多くの人々で賑わっている真夏の大通り。今日は 人影がまったくない。時間のとまったような景。それは炎暑 のしわざである。そのしわざを「人さらひ」と見た機知。上 句で読手に考えさせておいて意外な事柄に一句を着地させた、 今年はまさにそのような異様な暑さだった。(K)
草笛をふいてやさしくなりにけり 服部きみ子(9月号滝集) 2010-09-27 04:54:27 | 日記 草笛はおおかた一人で吹いて感傷にひたったりするものだ が、この句は吹いて、心がおだやかになったという、吹く以 前の心の在り様が想像できる。喜びを素直に表現、詩情あふ れる句。(K)
パンゲアの動きだしたる雲の峰 矢田 涼 (9月号滝集) 2010-09-26 05:44:21 | 日記 「パンゲア」とは約3億年前に地球上に存在したと考えら れる巨大な大陸。これが分裂、移動して現在の諸大陸になっ たとされる。 揚句は雲の峰から3億年前の大陸の移動を連想してゆく壮 大さ。迫力ある積乱雲のなせるわざ、ダイナミックに描いて 異色。(K)