時間と空間が同列に扱われている不思議な句。消えてしま
ったというのに、鶏頭の力強く群れて咲いている様が見えて
くる。「をり」は、多くは今そのことが、そこで行われている
か、状態が続いていることを表す時に用いるが、「忽然」と切
り取って、この「をり」には?と!が付いている。それゆえ
に作者の困惑の中に連れて行かれてしまう。はかなげな花の
多い秋に、鶏頭の存在感を思えば、それに相当する何かに鶏
頭を置き換えたのかもしれない。鶏頭が鶏冠花と呼ばれるこ
とに関わる「鶏化して花となる」という民話が中国にある。
主人を守らんと死闘の末に命を失った雄鶏の話である。心を
通わせてきた何かを突然失ったと読める気がした。
「鶏頭花抜きたる穴の熱からむ 菅原鬨也」
鶏頭にある燃えるイメージ。何もない地面に、確かにあっ
た百の鶏頭の熱だけが残っている。まだ、思い出という静か
なものになり得ない心の有り様でもあろうか。(H)
ったというのに、鶏頭の力強く群れて咲いている様が見えて
くる。「をり」は、多くは今そのことが、そこで行われている
か、状態が続いていることを表す時に用いるが、「忽然」と切
り取って、この「をり」には?と!が付いている。それゆえ
に作者の困惑の中に連れて行かれてしまう。はかなげな花の
多い秋に、鶏頭の存在感を思えば、それに相当する何かに鶏
頭を置き換えたのかもしれない。鶏頭が鶏冠花と呼ばれるこ
とに関わる「鶏化して花となる」という民話が中国にある。
主人を守らんと死闘の末に命を失った雄鶏の話である。心を
通わせてきた何かを突然失ったと読める気がした。
「鶏頭花抜きたる穴の熱からむ 菅原鬨也」
鶏頭にある燃えるイメージ。何もない地面に、確かにあっ
た百の鶏頭の熱だけが残っている。まだ、思い出という静か
なものになり得ない心の有り様でもあろうか。(H)