「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

更地てふ朦朧体の日傘かな 石母田星人 「滝」8月号<渓流集>

2012-07-31 04:59:24 | 日記
 更地は東日本大震災の跡形だろう。「更地」と「日傘」だ
けでも佇むひとの心境を伝えるに余り有るが、朦朧体は描か
れたものの輪郭がはっきりしない絵のことで、日本の洋画の
基礎的となり、印象派の影響を受けているそうだ。「日傘を
差す女」が思い出される。「光の画家」との別称もあるモネ
は、時間や季節とともに移りゆく光と色彩の変化を生涯にわ
たり追求した画家であった。掲句にも同じような目を感じる。
眼前に広がる果ての見えないほどの更地に、関わろうとして
いるのだろうか。季節が巡り、遮るもののない夏の日差しの
中に見える日傘は、「負」からの一つの回避の象徴として据
えられたようにも思えるのである。(H)