「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

鰰を買ひ生臭き釣もらふ 小林俊一 「滝」2月号<滝集>

2013-02-28 04:26:21 | 日記
 「生臭き釣もらふ」から、大きな箱からむんずと鰰を掴ん
で袋に入れて、「はい、一匹おまけの千五百円!」なんて声が
聞こえてきそうな、リアリティーを感じる句。鰰は秋田県の
県魚。作者の故郷でしょうか、冬になると食べずにはいられ
ないのかもしれませんね。(H)

畳替潮の香まとひ男来る 服部きみ子 「滝」2月号〈滝集〉

2013-02-26 03:57:18 | 日記
 気になっていた畳替えをやっと済ませた。幸い冬にしては
暖かい日で仕事もはかどり、日没前には終わりほっとしてお
茶を、と思ったところに顔見知りの男が来た。いつもの笑顔
といつもの潮の香りをただよわせて。きっと良い知らせを持
ってきたに違いない。話が弾む。(小林邦子)

オオカミの眼に星の巡りけり 中井由美子 「滝」2月号<滝集>

2013-02-25 04:45:05 | 日記
 絶滅したとされていた田沢湖の固有種「クニマス」が富士
五湖の西湖で発見され、NHKの「ダーウィンが来た」で放
送されることを知った時「ニホンオオカミ」が頭を過った。
『生きていたら素敵だなあ』と・・・。そんなこともあって、
何処かで、人知れず、夜空を見上げる狼の存在が思われた。
「ニホンオオカミ馳せよ果てなき芒原 菅原鬨也」
精悍な姿の絶滅を詠まれた句に、不意に狼の走る疾風が起きな
いとは限らないと。しかし、やっぱり、詠まれたのは資料とし
てしか見られない狼の、獲物を睨む眼ではなく、幾年も動かな
いガラスの眼。その眼に焦点を絞り、たくさんの省略をへて得
た詩情と思います。(H)